「ミライスピーカー・ホームHome」が17万台を超える大ヒット

発売当初は空港や駅などの公共施設、銀行や役所のロビーの音声案内など、BtoB市場での導入が中心であった「ミライスピーカー®」だが、テレビ番組での放送をきっかけに、個人向けに販売してほしいという反響が1000件以上寄せられた。

さらに、ほぼ同時期に振動板の改良で小型・軽量化と省コストへの道筋が立ったことから、家庭向けモデルの開発がスタートすることになった。

「法人向けのモデルでは振動板にカーボンを使うなど高品質なものでしたが、課題を感じている企業様でないと導入していただけませんでした。そこで、振動板の素材を加工しやすい樹脂シートに変更するなどの改良を行なった結果、小型軽量化できるだけでなく、人間の声の周波数帯域とも共振しやすくなる効果が得られました。これが家庭向けモデルの開発へとつながったのです」(田中さん)

家庭の「テレビの音がうるさい!」問題を解決。“音のバリアフリー”実現で大ヒットを記録する「ミライスピーカー」とは? 「聞こえやすさ」への飽くなき追求_3
歴代の「ミライスピーカー®」

数々の改良を施した家庭向けの「ミライスピーカー・ホーム」は、2020年5月に発売を開始。テレビ・ネット通販を中心に展開することで、現在までに17万台以上の販売を記録するヒット商品となった。

さらに、2022年12月からは家電量販店のビックカメラとコジマで展示製品を実際に試してから購入できるようになり、より身近に「ミライスピーカー®」のユニークさを体験できるようになっている。

同社マーケティング本部・本部長の金子一貴さんは、「音の聞こえやすさは見た目ではわかりにくいため、税込3万円弱という価格が受け入れられるかどうかも大きな課題だった」という。そのため、同社のオンラインストア限定で、効果を実感できなかった場合、60日間以内であれば返金するというサービスも実施した。

「音の聞こえは個人差が大きく、その効果を100%保証できないのです。そのため、公平性の観点からもまずは、実際にテレビの音声がハッキリと聞き取れるようになるかどうかを試していただこうと考えたのです。現在でもこの返品保証サービスはご好評いただいているので、今後も続けていきたいと思っています」(金子さん)

実際に「ミライスピーカー・ホーム」を導入した家庭では、聞こえづらさを感じていた本人だけでなく、同居するほかの家族からも好評の声が寄せられたという。また、すでに補聴器を装着していても、「ミライスピーカー・ホーム」と併用して使うことで、音がより聞きやすくなって快適になったという意見もあるとのことだ。

「『ミライスピーカー®』は音量を上げなくても聞こえやすいので、キッチンで洗い物をしながらでもテレビの音がクリアに聞こえるなどの感想をいただきました。最近は、『離れて住む高齢の家族のためにプレゼントとして購入した』というお客様も増えているようです」(金子さん)

試しに筆者も「ミライスピーカー・ホーム」を自宅に設置し、テレビのサウンドを流してみたところ、少し離れた場所にいても聞こえづらさを感じることなく、音を聞くことができた。もちろん個人差はあるだろうが、無闇に音量を上げることなく、明瞭に音が聞こえる体験は非常に新鮮だ。

高齢化が進み、音の聞こえづらさに悩む人は今後ますます増えていくことだろう。難聴は周囲の人からその深刻さが気づかれにくいうえ、本人ですら聴力レベルの低下を自覚しにくく、治療を疎かにしがちだ。

もし家族がそのような状況になったとしても、「ミライスピーカー・ホーム」は家庭における「音のバリアフリー」を実現する手助けになることは間違いないだろう。

取材・文/栗原亮(Arkhē)