水島新司ユニバースにおける夢の対決が実現!

①明訓 VS 青田(『大甲子園』秋田書店)

水島新司ユニバースにおける高校野球の祭典『大甲子園』は、高校野球版アベンジャーズである。『ドカベン』の続編で、主人公・山田太郎の高校3年の夏を描いた同作のメインイベントに当たるのが、夏の甲子園準決勝。

150キロ超の剛速球を誇る青田(千葉)の中西球道が“最強の盾”なら、高校通算打率7割5分とされる明訓の山田太郎は“最強の矛”。「水島新司はこの2人を戦わせたくて大甲子園を描いたのではないか」と言われるほどのドリームマッチは、2回表に初対決。結果は三球三振で球道に軍配が上がる。

4回表は二死一塁の場面から、二球目のストレート。山田が打ちにいくも、球道がバットをへし折りレフトフライ。またしても球道が力勝ちする。7回表は明訓が無死一、二塁の大チャンス。粘りに粘った山田は10球目を弾き返す。が、センター前へ抜けるかという当たりを球道が叩き落とし、まさかの三重殺。

ハイライトは延長10回表。普段は木のバットを使う山田が、金属バットへ持ちかえる。鬼が金棒を持ってしまったこの戦い。球道は果たして抑えられたのか⁉

野球マンガ史に輝く最高のクライマックス!!

②星 VS TL学園(『ジャストミート』小学館) 

「大甲子園」「H2」「バトルスタディーズ」…高校野球マンガ「あの甲子園の熱闘がスゴかった」10選_1
ジャストミート ©原秀則/小学館 

部員全員が1年生だった夏に続き、翌年も甲子園にやってきた星高校。地区予選からノーヒットノーランを続けてきたエースの橘二三矢は、甲子園に来ても被安打ゼロ。いくらマンガといえどもスゴすぎる、別格のピッチングを続けていた。

かたや、もうひとりの主人公である四番センターの坂本天馬は、地区予選から安打ゼロ。いくらマンガといえどもヒドすぎる、最低のバッティングを披露していた。

だが、両思いの栗原美和子から激励された彼は、準々決勝から一念発起。持ち前の超俊足を生かしてランニングホームランを狙う。それを知った決勝戦の相手・TL学園は、試合前夜に天馬をバットで襲い、足を骨折をさせる暴挙に。

これには大親友の二三矢も怒り心頭。決勝戦のマウンドへ上がると、9回まですべて(天馬の守るはずだった)センターフライに打ち取るという、奇跡的な投球を披露。いくらマンガとはいえ「打つほうも、少しは考えろよ」と誰もがつっこむ展開に。さらに10回からはすべて三振でパーフェクトを継続。これには二三矢の思い人である森村美樹との約束が絡んでいた……。

美樹との恋も胸にありつつ、天馬のために力投を続ける二三矢。彼の思いを受け取り、病院から球場へ向かう天馬。ストーリーの盛り上がり、意外な結末、胸を締めつける後日談まで含め、野球マンガ史に燦然と輝く感涙のハッピーエンドだ。

野球マンガ屈指のホームクロスプレー

③あおい坂 VS 淀宮(『最強!都立あおい坂高校野球部』小学館)

子どもの頃、自分たちに野球を教えてくれたマドンナ・菅原鈴緒(通称・鈴ねえ)を甲子園に連れていくため、彼女が監督を務める都立あおい坂高校に集まった北大路輝太郎たち5人。

入学してすぐにチームの主力となった彼らは、一気に東東京大会を制し、夏の甲子園へ出場。順調に勝ち進み、準決勝を迎えた。対決するのは大阪代表・淀宮である。大会屈指の投手戦となった試合は、あおい坂の輝太郎と、淀宮の松江による投げ合いとなった。

夏の甲子園作品で、ストーリー展開の鍵を握ることが多いのが、マウンドの暑さ。これをどう表現できるかで、時に作品の出来が決まると言っても過言ではない。延長戦にまで突入するこの戦いはまさに熱闘。輝太郎の顔に流れる大量の汗と、激しい息遣いが、見る者を物語へ引き込んでいく。

もうひとつの見どころはホームのクロスプレー。この試合のラストシーンでも、ホームへの突入が描かれているのだが、このシーンがじつに美しい。野球マンガでも屈指のホームクロスプレーだろう。