「民度の低さが一線を超えている、と感じました」
応急処置に一緒に携わっていたホストの男性は野次馬の撮影行為に対し激昂し、「動画撮るなよ」と声を荒げたが、それでも撮影行為をやめなかったという。
「場所柄、若い方が多かったのですが、彼らはカメラを向け続けていて、中にはニヤニヤしている人もいれば、人によってはパシャっと撮って立ち去る人もいました。このときはホストの男性に『人命優先で行きましょう』と声をかけました。撮影するなと言ってもするだろうし、とにかく被害者に集中しようという思いでした」
その後も野次馬の数は増え続け、被害者の男性の周囲ではピコン、ピコンと動画を回す音が至るところから鳴り響いていたという。
「驚きのほうが大きかったですね。みんなこんなにも倫理観がないのかと。みんながみんなそんな様子で日本大丈夫なのか?って思ってしまいましたね。駆けつけた救急隊や警察の邪魔になっているのにどこうとしないですし、本当に異様な光景でしたね」
そんな中、医師免許を持っている青笹氏が応急処置に当たる人たちに指示を出しながら、被害者の状況について確認したという。
「男性が心臓マッサージをしようとした際には『(意識があり出血している状態なので)それは違いますよ』など、間違いがないようにしていました。被害者は上半身の左半身が血まみれだったんですけど、私が視認した範囲では傷は左鎖骨上に一か所で、止血もわりとすぐに終わりました。
被害者はショック状態で名前を言えなかったり、手を握れるか尋ねても握れなかったり、『顔の感覚がない』と泣いていました。もちろん私も研修を行ってない身なので断定はできないんですけど、錯乱状態ではあるものの私が見ている範囲では脈もしっかりとれていましたし、出血もそこまでなかった。出血性ショックの可能性も大丈夫そうだったし、安心できる状態だとは思っていました」
青笹氏は事件後、自身のX(旧Twitter)でこう問いかけている。
〈『民度の低さが一線を超えている』と感じました。≪中略≫現場で撮った動画をTwitterやストーリーに載せて稼ぐイイネ数や、知り合いに直接見せて「お前、現場にいたの⁉」と驚かれて満たされるその承認欲求は、本当に大事なものなのでしょうか?〉
あらためて青笹氏にXの発言の真意を尋ねてみた。
「SNSの時代とはいえ、ちょっと腐りすぎなのかなと。もちろんイイネは気持ちいいですし、承認欲求というのはみんなそれぞれ持っているとは思います。ただ、人命よりそちらを優先し始めるようになっているというのは、非常にまずい状況だと思います」
ともあれ、青笹氏の迅速な行動の甲斐もあり、病院に搬送された被害者の命に別状がなかったことは、不幸中の幸いといえるだろう。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班