部屋にひきこもり、歩けなくなる
大橋さんは仕事を辞めるたびに、自分の部屋にひきこもった。ネットへの依存がひどくなり、課金し過ぎて借金をしたことも。
「ボトラー、オムツラーって聞いたことあります? ボトラーっていうのはペットボトルに用を足すこと。オムツラーはオムツをしてゲームをすること。私もそんな風に、ガチのひきこもりをして一歩も出なかったときは、部屋の中を立って歩けなくなりました。体が弱ってしまい、息をしているだけで精一杯という感じでしたね」
そのまま何年もひきこもってもおかしくない状況だったが、しばらくすると大橋さんは部屋を出て仕事を探したという。なぜ働こうと思ったのかと聞くと、大橋さんはくったくのない笑顔を浮かべてこう答える。
「嫌なことはたくさんあったけど、働く楽しさとか、おもしろさも教えてもらえたから。利用者さんが元気になって、『ありがとう』って言われる喜びとか。人と関わることで、気付けたこともたくさんあるんですよね。まあ、そういう風に美化しないと、やってこれなかったのかもしれないけど、働くのをあきらめたことはないです」
働いては辞めて、ひきこもる生活は10年以上続いた。そしてそこから抜け出すことができたのは意外なことがきっかけだった――。
〈後編へ続く〉(後編)『「俺だって、こうなりたくてなったわけではない」…それでも知的障害と発達障害を抱える43歳男性がたどりついた場所』
取材・文/萩原絹代