誰がこどもの命を救うのか
「誰も本気じゃない」
そのことに無性に腹が立った――それが、私が「こども庁」創設に取り組むことになった最大の動機です。先進国といわれる日本において、こどもは危機的な状況に置かれ続けてきました。児童・生徒の自殺者数は統計開始以来過去最多の514人、児童虐待の死亡児童は54人、いじめ重大事態は705件、不登校児童は24・5万人。
こどもの精神的幸福度は、経済協力開発機構(OECD)参加国の38カ国中37位。ひとり親家庭の相対的な貧困率は約50%――OECD中で最も高い水準です。妊産婦の死因の1位は自殺、なんとその多くは無理心中です。そのため、児童虐待で死亡したこどもの半数がゼロ歳ゼロ日となっています。先進国と言われる日本で、こんなことが起こっているとは信じられない思いです。
こどもの命が守られない日本
最も憂うべきことは、こうした問題に真っ向から取り組み結果を出した政治家が、ほとんどいなかったことです。毎日のようにいじめや虐待の事件がニュースで流れています。それでもどれだけの人が本気で動こうとしたのかは疑問です。
こどもを取り巻く状況には、教育格差、貧困、待機児童問題、育児と仕事の両立問題など多くの課題要因が、複雑かつ密接に関連し、連鎖しています。それぞれの課題はなかなか解決されることなく、むしろ悪化しているとも言えます。取り組むべき問題は山のようにあります。
そして、何をおいても守らなければならないのは、こどもの命です。その大切な命が守られていない現状がある。自殺や繰り返される不慮の事故がこどもたちの命を奪う大きな原因になっています。
予期せぬ妊娠やひとり親の生活苦、夫婦間不和などで、産前産後にうつになる母親も多く、社会や家庭内の問題のひずみが、孤独・孤立や、最悪の場合虐待となってこどもたちを追い詰めていきます。そして、妊産婦の死の原因の1位が自殺、その多くが無理心中という状況を生んでいます。