『15の夜』をいち早くオンエアしたのは甲斐よしひろ

1983年にNHK-FMで夜10時から放送していた『サウンドストリート』は、月曜日:佐野元春、火曜日:坂本龍一、水曜日:甲斐よしひろ、木曜日:山下達郎、金曜日が渋谷陽一という、今から見れば豪華なDJが日替わりで音楽を紹介していた。

尾崎豊のデビュー曲『15の夜』がオンエアされたのは、シングル盤になることが決まって間もないころだったと思う。レコードが発売になったのは1983年の12月1日だが、オンエアはそれよりも前で、試聴用のカセットテープが音源だった。

突出した新しい才能に出会って、それを伝えたくていち早くオンエアしたのは、水曜日担当の甲斐よしひろである。その第一声は「今夜は、凄い新人を見つけました」というものだった。

1983年12月1日リリース『15の夜』(CMSソニー)のジャケット写真。当時18才になったばかりの尾崎豊のデビューシングル。「盗んだバイク」「夜の帳の中へ」「自由になれた気がした」……尾崎と同世代のごく一部の中高生の間ではすぐさま伝説的な曲となり、次第にクチコミで全国のティーンエイジャーたちに広まっていった
1983年12月1日リリース『15の夜』(CMSソニー)のジャケット写真。当時18才になったばかりの尾崎豊のデビューシングル。「盗んだバイク」「夜の帳の中へ」「自由になれた気がした」……尾崎と同世代のごく一部の中高生の間ではすぐさま伝説的な曲となり、次第にクチコミで全国のティーンエイジャーたちに広まっていった
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僕は番組の収録現場だったNHK放送センターのスタジオで、担当ディレクターだった湊剛氏、DJの甲斐よしひろと一緒に、関係者が持ち込んだカセット・テープで初めて『15の夜』を聴いた。

3人とも一聴しただけで、「凄い新人」だと意見が一致した。

その時に知ったのはまだ17歳の高校生で、東京出身だということだけだ。どんな顔でどんなタイプの少年なのかも分からなかった。だが、新しい時代のヒーローになるかもしれないとの予感がした。