WBCで大谷選手が経験した「ゾーン」の正体

2023年3月22日、この日WBC の決勝戦の対アメリカ戦、大谷選手が最終回に投じた15球は圧巻でした。
3-2と1点リードで迎えた9回、先頭バッターのマクニール選手を四球で一塁に歩かせます。次の1番バッター、ベッツ選手を併殺打に討ち取り、2死走者なし。
そして、迎えるバッターはエンゼルスの同僚で、MLB を代表するスーパースター、マイク・トラウト選手。
初球に投じた大きく横に曲がるスイーパーはボール。2球目以降は空振りとボールを交互に繰り返し、3ボール2ストライク。そして運命の6球目、87.2マイルのスイーパーはトラウト選手のバットをすり抜けていきました。
この瞬間、大谷選手は雄叫びをあげながら、グラブと帽子を放り投げて歓喜の輪の中に入っていったのです。この大会で、大谷選手は見事MVPに輝きました。

WBCの決勝の対米国戦で大谷翔平に「ゾーン」が降りてきたことは間違いない…スポーツ心理学が解明する先入観を覆して不可能を可能にする大谷の頭の中_3

大谷選手をずっとサポートしてきた水原一平通訳は、試合後「翔平があんなに楽しく野球しているのを初めて見た」と語りました。まるで少年に戻ったような大谷選手がそこにいたのです。試合後、大谷選手はこう語っています。

「(優勝は)間違いなく今までの中でベストの瞬間だと思う。(投手として)ある程度プランは立てていったが、あとはバッターとピッチャーの間合いの中で、勘で球種を選択して投げた。第1回大会からいろいろな(日本の)先輩たちが素晴らしいゲームをして、実際に僕らがそれを見て、『ここ(WBC)でやりたい』『自分もこういうふうになりたい』という気持ちにさせてもらったのが一番大きい。今回の優勝で、そういう子どもが増えたら素晴らしいこと」(『侍ジャパンWBC優勝記念号』ベースボール・マガジン社)