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成長し続けることでしか得られない「将来の安泰」
――昨今は「安い日本」といわれますが、それでも日本が貧しくなっている現実にあまり実感がない国民も少なくないと思います。
熊野(以下同)今の日本人のなかには、日本はもう成長しなくていい、いまのままでいいんだ。物価が高いのを我慢すればいいじゃないか。そんな割り切り方をしている人がけっこういるようです。でも、それは絶対にまずいです。日本人の多くが「もうそこそこでいいや」という心持ちになっていけば、さらに成長力は削がれて、どんどんマイナス成長の泥沼に落ちていきます。
日本の人口減少と高齢化が避けて通れないものであることは以前からわかっていたので、
1970年代ごろから福祉を手厚くしようと計画していたのだけれど、それはあくまでも成長が前提だったわけです。成長が止まろうとしている今、我々は将来、年金だけでは暮らしていけなくなるでしょう。
――少し前までは厚生年金は60歳からもらえたのに、いまは65歳からに変わっています。さらに今後は70歳、75歳からの支給開始になる可能性もあるわけですよね。
はい。私は現在55歳ですが、おそらく75歳、80歳まで働くのではないかと懸念しています。最後の数年だけ社会保障が面倒をみてくれるのではないか…いや、それも叶わないかもしれません。
やはり社会システム全体としては国家が経済成長していないと、システムは壊れてしまう。たぶん中国や韓国など高齢化している国はみな同じですが、現在は安泰でも将来は安泰ではなくなる。成長し続けることによって、将来の安泰は得られるのですね。