あなたが銀行の資金運用の担当者だったら、日本国債を買うか?
財政不安のメカニズムを、銀行の立場から考えてみよう。日銀が黒田前総裁の下で長期国債の大幅買い入れを始める前は、民間銀行が長期国債の主な買い手であった。では彼らは、政府から行政指導を受けているから大量の長期国債を買っていたのだろうか。
それは違う。あくまで自主的に買っていたのだ。そこにはたとえ低利回りであっても、元利返済が確実だという信用があったから、自主的に買っていたのである。仮に、そうした信用が失われたとき、国債は売られることになる。
思考実験として、読者が銀行の資金運用の担当者だったならば、日本国債を買うかどうかを考えてほしい。読者は、多くの預金者から資金を集めて運用する代理人でもある。代理人の責任として、日本国債は安全かどうかを考えたい。
安全性の根拠となるのは、財政再建をいつか将来は必ず完遂するという政府の約束だ。最終的にその約束が、信用を辛うじてつなぎ止めている。反対に、マクロ的に国内貯蓄だけで資金が回っているから国債の元利支払いは絶対に安全などという理屈で、国債を買っている人はいないだろう。
これは、自分が資金の貸し手かどうかという立場の違いでもある。貸し手は常に相手の信用力を評価している。判断基準は、元利払いの約束を履行するかどうかだ。
銀行自身も、帳簿上の健全性を重視する。例えば、融資先の貸借対照表を参照して、資産と負債のバランスを見比べる。資産評価を厳しく見て、資産−負債=マイナスにならないかをチェックする。負債>資産になれば、負債の裏付けがなくなり、それは債務超過となる。負債の裏付けにも穴が空く。銀行に損失が生じるということだ。