必要なのは宿泊がない状況での観光支援
では、どうすればよいのだろう?
観光は大きな「生態系」で成り立つ。経済的な循環という観点から分析すると、いわゆるアゴ・アシ・マクラ(飲食・交通・宿泊)と物販、そして観光施設やイベントの収益などから構成されている。
ところが、近隣で巨大災害が起こると、このマクラ(宿泊)が復旧・支援のために使われるため、宿泊がない状況での観光支援が必要となってくる。しかも、観光に関係する経済は現地でしか消費ができないという特殊性もあり、こうした状況下で観光産業を支援するためには、宿泊の必要のない地元民が近場の観光地に足を運ぶなどして支えなければならない。
このとき、役に立つのがコロナ禍で経験したマイクロツーリズム(近場の観光)のノウハウだ。1月23日現在、金沢の代表的観光地である金沢21世紀美術館は当面の閉館を決めており、兼六園も一部(と呼ぶには結構広いと思うが)立ち入り禁止区域がある。遠方からの観光客がこうした状況を事前に把握し、旅程を組むのはかなり難儀と言える。
しかし、地元民ならこのあたりの調整はお手の物である。どこが閉まっていて、いつ再開するかという情報は日常の地元ニュースで手軽に仕入れることができるし、土地勘もあるので移動時間なども読みやすい。
そもそも、人は地元の観光地には実はあまり行かない。金閣寺に行ったことのない京都市民は相当数いるし、私も自宅近所にある観光地の忍者寺(妙立寺)を訪れたことがない。そこで観光客が少ない今だからこそ、地元、あるいは日帰り可能なエリアから金沢の観光地を訪れ、北陸の文化への理解を深めるという観光支援を考えてみてはどうだろう。
また、ホテルにとって宿泊と並ぶ収益の柱であるバンケット(宴会)を安易に「自粛」することは地元観光産業を苦しめることになる。被災者を思えば一定の節度は必要だろうが、地元民だからこそ宴会をキャンセルせずに、社交を続けてほしい。