文化人、ミュージシャン、
芸能界屈指の縄文ファンが集う場所
1万年以上という途方もない時間にわたって広がっていた「縄文時代」。三内丸山遺跡などを擁する「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界遺産に登録され、各地の博物館で行われる縄文展はこれまで以上の観客を動員。また遮光器土偶やハート型土偶、縄文土器はガチャガチャでは定番グッズとなり、学術だけではなく、造形やアート面でも大きな注目を集め、様々な面で「縄文ブーム」といった活況を呈している。
その「縄文」をテーマに発行されているフリーペーパー「縄文ZINE」は、片桐仁のようなタレントから、坂本慎太郎やStill ichimiyaなどのミュージシャン、しまおまほや藤岡みなみ、みうらじゅんといった文化人、そして漫画『ゴールデンカムイ』の作者である野田サトルなどがインタビューやコラムに登場。史学系のフリーペーパーの中でもひときわ異彩を放っている。中でも芸能界屈指の縄文ファン、考古学ファンとして知られる井浦新が表紙を飾った号は大きな話題となった。
「井浦さん側からご興味があると先方からコンタクトをいただいたのが、ご登場のキッカケですね。井浦さんがフリーペーパーの表紙になって、さらにインタビューが載るなんて、前代未聞だったと思います。みうらじゅんさんとは江戸東京博物館の縄文展という、オフィシャルな形で対談をさせて頂いたり。みなさんビジネスというよりは−−まあ、そんなにギャランティもお支払いできないので(笑)−−単純に面白がって出ていただけているのは嬉しいですね」
誰も話を聞いてくれなかったので、話し相手が欲しかった
そう話すのは「縄文ZINE」の編集からデザイン、発送まで制作に関わるほぼすべてを手掛けている望月昭秀氏。本誌の他にも単行本「土偶を読むを読む」の編纂など、縄文にまつわるプロダクトに関わっている。
「創刊当時はまだ縄文ブームみたいな流れもなく、誰も僕の縄文の話を聞いてくれなかったんですよね。それで『話し相手が欲しいな』と思って作り始めたのが『縄文ZINE』でした。僕自身、デザイナーとしてデザイン会社を運営しているので、自分で書いたテキストを、自分でデザインを組んで、自分で発行すればよかったので、気軽に始められたのも大きかったです」
2010年より発行され、これまでに通算で40万部近くが全国の博物館や歴史系の公共施設、またカフェや古書店などに置かれ、好評を博している「縄文ZINE」。
「創刊当初から“こういう冊子が読みたかった”という声もたくさんいただきました。おかげで、初号は置いてくれる場所を自分で探しましたが、2号目からは先方からご連絡をいただくことが増えましたね。特におしゃれなカフェや、カルチャーに強い雑貨店などに置いてもらったことで、新しい縄文ファンが開拓できたんじゃないかなと」