不安をどうマネジメントするか
「不満」をマネジメントするのは実は簡単だった。会社や上司に対する不満を晴らすためには、同僚や同期と飲みに行って愚痴を言い合えばたちまちその何割かは解決していたかもしれない。
はたまた、上司や先輩が不満を抱えていそうな部下を察して「一杯いくか」と1対1で飲みに行き、腹を割って話せば、若手の悶々としていた悩みもどこかへ行ってしまっていたかもしれない。
上司の指示や叱責が理不尽で納得がいかなくて、それでも飲み込んで働いている若手にはこうした機会こそが解決手段となりえた。
深夜土日まで自分だけが残業して不満を溜めていても、上司から「見てるぞ」「頑張ってるな」と言われればその一言で震えるほど嬉しかった、という経験がある読者も多いのではないか。
しかし、「不安」、特にキャリアの不安は別だ。
この職場で仕事をしていたら転職できなくなっていくのではないか、同世代と比べて差をつけられているのではないか。こうした不安を抱えている若手がいるとしよう。
上司が一緒に飲みに行く、というこれまでの不満解消手段は何の役にも立たないと想像できる。
同僚と愚痴りあって飲み明かしても、今日もまた3時間もいつもと同じ話をしてしまった、と非生産的に感じるだけであろう。
また、上司から「見てるぞ」と言われたところで、その瞬間は嬉しいだろうが、上司が少し見て評価してくれたところで、労働市場における自分の価値が上がるわけではない。
不満解消型のマネジメント・コミュニケーションは、このキャリア不安の問題に対して何の有効性もない。
企業や上司には、若手のキャリア不安をいかにして解消するのか、というこれまでに日本企業が直面したことのない新たな課題が発生しているのだ。