開幕からひと月が経ちましたが、4月26日現在、阪神タイガースはここまで26試合を5勝20敗1分けと、僕が現役の時には経験したことのないような苦しいスタートになりました。昨シーズンはセ・リーグ2位で、勝利数だけなら優勝したヤクルトをも上回っていたチームがなぜ、ここまで勝てないのか――。
多くのメディアは矢野監督がシリーズ戦前から「今シーズンで辞任する」と発表したことが原因であるかのように報じていますが、僕はそうは思いません。何せ前例がないことですから、これがプラスに働くのかマイナス要因になるのかは、シーズンが終わるまでわからないと思うのです。
それよりも気になるのは、昨季と比べてタイガースの戦力がダウンしているにも関わらず、その穴埋めや準備が不十分なまま、漫然と開幕を迎えてしまったように見えること。
投手では2年連続セーブ王の守護神・スアレス投手が抜けたことは大きな戦力ダウンです。しかも昨年はコロナの影響でゲームは9回打ち切りでしたが、今シーズンは12回まであるのでなおさらです。
そんな中、抑え候補のケラー投手、先発のウィルカーソン投手を新たに獲得したものの、ふたりとも来日がコロナの影響で遅れ、ケラー投手に関しては、調整が不十分なまま開幕戦に登板し、打ち込まれる結果となりました。
なぜ、こんなギャンブル的な起用をしなければならなかったのか。キャンプ、オープン戦を通じて、もっと準備やシミュレーションをすべきではなかったのでしょうか。
また野手では、昨シーズン、大山選手や佐藤輝選手の前後で活躍していたサンズ選手もオフに退団してしまいました。じゃあ今季、サンズ選手の長打がなくなった分、積極的に足を使うなどして、その穴埋めができているかというと、そんなに簡単にはいきません。野球はうまくいかないことのほうが多いので、難しいのはよく分かります。
それでも他球団は補強をしたり、選手にも分かりやすく方針を示したりしています。チームも選手も常に変化していくことを恐れずにやって、ようやく現状維持です。その点、ここまでのタイガースは昨季と比べて戦力がダウンしているのに、選手の意識や作戦にあまり変化が見えないというのが正直な印象です。

佐藤輝は「4番・サード」での起用を。阪神OB・鳥谷敬がそう提言する理由
開幕から9カードを終えたところで5勝20敗1分けと、まさかの“逆ロケットスタート”を切った阪神タイガース。なぜ勝てないのか? そして反撃に向けて今、すべきこととは? OBで野球解説者の鳥谷敬氏が解説する。
チームに慢心はなかったか
ポジションが固定されないやりづらさ
勝てない時は、色々と動きたくなるものですが、一方で、ポジションや打順が固定されないのは、選手にとってやりづらさもあるものです。
例えばサードのスタメン。ここまでの26試合で糸原選手が10試合、大山選手が7試合、佐藤輝選手が8試合と試行錯誤が続いていますが、いくらプロとはいえ、これでは細かい連携に影響も出かねません。
僕の経験上、デーゲーム時などは、光の加減でセカンドの位置にいると、サードからの送球が見えづらいんです。この時、サードを守るのが糸原選手なのか、大山選手なのか、佐藤選手なのかで球質がシュート回転したり、スライダー気味だったりと変わってきます。そこに気を遣うだけでも、1年を通したらかなりの疲労が溜まることになります。
また、打順も何番を打つかによって考えることが変わってきますし、敏感な選手だと「打順が下がったということは、今日打てなかったら次は試合に出られないんじゃないか」とひどくプレッシャーを感じることもあります。
こうした目に見えない疲れが積み重なることで、“ここからが勝負”という夏場に成績を落とす選手が出てくる可能性があるのです。
さて、少しネガティブな話題が多くなりましたが、タイガースもまだまだ戦いはこれからです。青柳投手が戻ってきたり、ウィルカーソン投手が戦力になったりと明るい材料もありますし、マルテ選手が戻ってくるとさらに戦力は上がるでしょう。
今後、タイガースが浮上するためには、早く「自分たちの形」を確立することが大事になってくると思います。去年までのタイガースには「足を使ってどんどんかき回し、先に点を取って、ピッチャーで逃げ切る」という勝利の形がありましたが、今年は戦力も違いますから、まったく同じ野球はできないでしょう。だからこそ、「自分たちの形」を、また一から作り直さなければいけないと思います。
個人的には佐藤輝選手に注目していて、僕は彼がプロ野球界の一線で長く活躍するには、「4番・サード」が一番いいと思っています。
今季は打順が4番→2番→3番と変わっていますが、彼には打球を遠くに飛ばす天性の才能があるし、その将来性やポテンシャルを考えるとやはり4番が適役なのかなと。
守備も開幕時はライトで、最近ではサードを守ることが多いですが、毎試合毎回、外野からベンチに帰ってくるよりも、内野からのほうが近いので息が崩れません。このことは年間を通して考えると小さなことではないんです。また、早くベンチに戻れたほうが打席に向かうまでの時間が増えるので、頭の中を整理することもできます。
佐藤選手には「4番サード」として、今後の野球界を引っ張っていく存在になってほしいですね。
構成/能見美緒子 撮影/宮脇進
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