――今回、開催地カタールの暑さが考慮され、11月という異例の開催時期になっていますが、実際の気候はいかがですか?
意外と暑いです。外を歩いていると、日中は日本の夏と同じくらいに感じます。日本のような湿気はありませんが、サングラスが欲しくなる日差しの強さで、日焼けもしますね。夜は肌寒くなるのですが、半袖でも気合いで乗り切れます。
スタジアムは冷房の効き過ぎで寒い場合もあるので、上着を羽織っている人もいます。ただ、天井が吹き抜けになっているので、直射日光が当たる場所はかなり暑そうです。たとえば「日本対コスタリカ戦」は13時キックオフだったので、日差しと暑さによって“よりスローテンポの試合”になった気はしますね。
――ホテルの宿泊代がかなり高いそうですが、お部屋の値段はどのくらいですか?
ドーハの一番安いホテルを探しても1泊5~6万円くらいが相場で、10万円のところもあるので、かなり高めですね。ドバイ(アラブ首長国連邦)に泊まって、カタールと行ったり来たりしている人もいるみたいです。
――ホテル以外の物価、例えば食事はどうですか?
どこで食事をするかにもよりますが、地元の人が利用する飲食店に行くと安いです。ナンとスープが付いたカレーのセットで500円くらい。
ホテルのレストランは高いですね。昨日、ある出版社の方達と「ビールが飲みたいね」と、アルコール提供がある高級ホテルで食事をしたのですが、1kgのTボーンステーキが2万円、ビールも1杯1600円くらいしました。
――高級ホテル以外では、お酒は完全に飲めないのですか?
ホテル以外だと、メディアセンターに“オアシス”というバーのような場所があって、そこではお酒が提供されているので、「一杯やっている」取材陣もいるみたいです。
ノンアルコールビールであれば売店にも置いてあるので、部屋の冷蔵庫で冷やして飲んでいます。昨日が2週間ぶりのアルコールだったんですが、そのせいか今朝の寝起きが悪かったので、「むしろノンアルコールの方がいいかな」と今は感じています。
――地元の方向けの飲食店のお味はいかがですか?
周辺国からの出稼ぎの方が沢山いらっしゃるので、本格的なインド料理やバングラディッシュ、パキスタン料理など、色々な国の食文化があり、味も美味しいですよ。カレーの味がお店によってかなり異なるのも面白いです。

【日本代表の躍進にカタール人も日本ファンに!】ノンアルコール、冷房スタジアム、番狂わせ。初のアラブ開催W杯の魅力とは
日本代表の躍進もあって盛り上がっている“FIFAワールドカップカタール2022”。初の「アラブ国家開催」となった今大会は、人権問題やアルコール問題など、スポーツ以外の話題にも事欠かないが、実際の現地の雰囲気はどうなのだろうか。現地カタールにて日本代表に密着取材していたスポーツライター・木崎伸也氏に、“サッカー以外の諸々”について聞いた。(サムネイル・トップ画/7044sueishi/アフロ)
11月でも暑いカタールの日差しが
コスタリカ戦敗因の一つ?
ヨーロッパや日本でも珍しいレベルのスタジアム
――スタジアムまでのインフラは快適ですか?
今回、新たに地下鉄が作られて、スタジアムまでアクセス出来るようなっているので、非常に快適です。ただ、試合後はかなり混みますね。将棋倒しが起きたりしないように、人の流れを運営側が厳しめにコントロールしていて、駅に入るまでに1時間待たされたり。スタジアムの周りで時間を潰して帰る人も多いと思います。
Uber Taxiがかなり安くて、10分の距離で500円程度なので、地下鉄よりもメインで使っている人もいます。
――時間を潰せるような場所はあるのですか?
おそらく主催者側が雇っていると思うのですが、今大会は“催し物”が多い印象です。ダンスや歌、中東の楽器を演奏していたり。そういうブースがスタジアム周辺に点々と続いていて、アラブっぽいカルチャーを味わえますね。
ある試合の後には、カタールの“ガールズバンド”と思しきグループが、黒いスカーフを巻いてライブ演奏しているのも見ました。おそらく、ヨーロッパから指摘されている“ジェンダー問題”に対するアピールの部分もあるのではないでしょうか。
――今回7つのスタジアムが新設されましたが、実際に訪れてみた感想はいかがですか?
今回のスタジアムは「本当に観やすい」です。どのスタジアムもすり鉢型で、劇場のように観客席が“急勾配”になっていて、ピッチが近く感じるんですね。ヨーロッパのサッカー先進国でもなかなか見られないクオリティのサッカー専用スタジアムだと思います。
そういう“急勾配のスタジアム”を作ろうとすると、建設予算が跳ね上がるそうで、空調システムも含めて、「かなりお金が掛けられているな」と。通常のスタジアムだと、1階席がなだらかな角度で、その分だけ2階席がピッチから遠くなります。カタールのスタジアムは1階席も2階席も急勾配で作られていて、1階席は臨場感があって、2階席はピッチを見下ろす感じで、それぞれの良さを味わえますね。
日本がドイツとスペインに勝利を収めた「ハリーファ国際スタジアム」は、“唯一”陸上トラックがあり、ピッチと観客席が少し離れていますが、それでもかなりの急勾配なので、日本のスタジアムに比べるとピッチが近く感じます。日本対コスタリカ戦が行われた「アフメド・ビン=アリー・スタジアム」はサッカー専用スタジアムで、非常に観やすかったですね。

日本対コスタリカ戦が行われた「アフメド・ビン=アリー・スタジアム」 写真:ロイター/アフロ
「初のアラブ開催」が数々のドラマを演出
――各国サポーターの盛り上がりはいかがですか?
やっぱり「アラブの大会だな」というのはすごく感じています。カタールから陸続きのサウジアラビアや、比較的近いモロッコ・チュニジアのサポーターが非常に多く、アラブ圏の国の試合では、スタジアムも「アラブ側のホームゲーム」という雰囲気になっていますね。
反対に、ヨーロッパの国のサポーターはかなり少ない印象です。人権問題から「観戦をボイコットしよう」という動きもありますし、いつものW杯は6月開催でバカンスの時期ですが、今回は11月なので、それも要因の一つかもしれないですね。
あとは、「日本代表のユニフォームを着ている現地の人」がけっこう多かったです。ドイツ戦とスペイン戦で日本が勝ったことによって、「日本を応援しよう」という人がかなり増えた印象ですね。日本国旗を体に巻いて応援しに来ている現地の方もいました。

木崎伸也氏
――大会前から様々な問題も指摘されていた今大会ですが、現地の雰囲気はいかがですか?
人権問題やジェンダー問題で、ヨーロッパからは厳しく批判されていますが、その問題が今後どうなるかですね。もしかすると、批判的な論調がより激しくなる可能性もあるかもしれません。
ただ、そういう人権問題の部分を抜きにして考えると、取材して観戦する身としては、過去のW杯に比べてもかなり満足度が高い大会です。移動もものすごく楽ですし、食事も安くて美味しいですし。まだ大会の途中なので言い切るのは難しいですが、現段階では成功と言ってよいと思います。
サウジアラビアがアルゼンチン相手に大金星をあげたり、モロッコがベルギー、チュニジアがフランスを破るという“番狂わせ”が起きているのも、「アラブ開催のW杯」という側面が影響していると思うので、そのあたりも面白いな、と感じますね。
取材・文/佐藤麻水
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