1. リオネル・メッシ
まず紹介しなければならないのはこの男。“史上最高のサッカー選手”との呼び声高い、リオネル・メッシ(アルゼンチン)だ。
1987年6月24日生まれの35歳で、今回のカタールW杯は自身5度目のW杯出場。世界年間最優秀選手に贈られる「バロンドール」を史上最多の7度受賞し、米経済雑誌フォーブスによる2022年の「世界のアスリートの年収ランキング」では1位に選出された。
10歳の頃、成長ホルモンの病気が発覚。その治療費の高さでアルゼンチンのサッカークラブでの活動が続けられなくなるという困難に見舞われるも、それが後の栄光に繋がることとなる。
スペインの名門バルセロナに才能を見出され、「治療費の全額負担、家族全員で移住」という破格の条件で迎え入れられたのである。その後、わずか17歳でデビューを果たしてから、その魔法の左足で、ありとあらゆるタイトルを獲得し、“サッカー界の神”として崇められてきた。
ただ、そんなメッシでも未だ手にしていない唯一のタイトルが、W杯だ。一方で、「神の手ゴールと5人抜きゴール」で有名な故ディエゴ・マラドーナは、アルゼンチンをW杯優勝に導いているため、今でも「マラドーナ>メッシ」と考えるアルゼンチン人は多いとされる。
母国、そして世界中のファンの期待に応え、おそらく自身最後の出場となるW杯で、自身初の優勝を果たし、英雄マラドーナを名実ともに超えられるか。今大会の注目ポイントの一つだ。

【カタールW杯】メッシ、ロナウド…今大会でW杯が最後になりそうな名手5人のすごすぎるエピソード
11/20日に開幕し、世界中を熱狂させている「FIFAワールドカップカタール2022」。このカタールW杯が“現役最後のW杯”になるであろう、各国のレジェンドたちを紹介する。(トップ画像 リオネル・メッシ/写真:アフロ)
2010年代のサッカー界を引っ張ってきた5人のレジェンド
サッカー界で一番有名なこの2人!

クリスティアーノ・ロナウド/写真:新華社/アフロ
2. クリスティアーノ・ロナウド
“史上最高”の評価をメッシと長年争ってきたのが、“ポルトガルの英雄”クリスティアーノ・ロナウドである。
1985年2月5日生まれの37歳で、現在の“サッカー史上最多得点記録保持者”であり、インスタのフォロワー数も5億人と、堂々の世界1位だ。
長年トップを走り続けられる理由は、彼の“ストイックすぎる”姿勢にある。独自の健康法として、低脂肪高たんぱくの食事を1日6回摂取し、夜の睡眠とは別に5回の睡眠を取り、アルコールは一日一杯のワインのみ。
また、チームメイトの誰よりも早く練習場に来て、誰よりも遅くまで練習して最後に帰るという、“練習の鬼”としても有名だ。
その徹底したプロフェッショナリズムで数多の栄光を勝ち取ってきた彼もまた、W杯トロフィーを心から欲しているはずだ。W杯最高成績が3位のポルトガル代表は、カタールW杯での初優勝を狙っている。第1節のガーナ戦で前人未到の「5大会連続ゴール記録」を達成した勢いそのままに、優勝まで突き進めるか。
ちなみに、ロナウドとメッシの生年月日は869日違いで、2人の長男同士もまた869日違い。ロナウドの息子はメッシのファンで、メッシの息子はロナウドのファンであると、サッカーファンの間では噂されている。
サッカー王国のスター&いぶし銀の前大会MVP

ネイマール/写真:ロイター/アフロ
3. ネイマール
3人目はサッカー王国ブラジルの10番、ネイマール。
1992年2月5日生まれの30歳で、W杯出場は今大会で3度目となる。フォーブスのスポーツ選手長者番付では、メッシ、ロナウドに次ぐ3位(2019年)にランクインしたスター選手だ。
年齢的には4年後にも出場できそうだが、大会前のインタビューでは「W杯に出るのはおそらく最後」と語っている。ドリブル、シュート、パス、創造性、そのどれもが一級品で、メッシとロナウドを超えて“現在世界最高の選手”と評価する声も多い。
ただ、審判を欺くダイブ(接触プレーでわざと転び、FKやPKを獲得する行為)の多さや、私生活での奔放さから、実力に見合った正当な評価を受けているとは言えず、実際にバロンドールもまだ受賞したことがない。
カタールW杯で優勝することができれば、彼の名前はサッカー界に永遠に刻まれ、今後50年語られるべき名選手として記憶されるだろう。

ルカ・モドリッチ/写真:ロイター/アフロ
4. ルカ・モドリッチ
今大会必見のベテランといえば、“クロアチアの魔法使い”ルカ・モドリッチも忘れてはいけない。
1985年9月9日生まれの37歳は、スペインのビッククラブであるレアル・マドリードで10年間もレギュラーを張り続ける超人で、2018年にはクロアチア人初のバロンドール受賞者となった。
幼少期、旧ユーゴスラビア内紛の戦禍で祖父を亡くし、一家は難民用のホテルで仮暮らしを始め、モドリッチ少年はホテルの駐車場でサッカーに熱中していたという。
人口410万人という小国ではあるものの、優勝も狙えるほどの強豪国であるクロアチア。その困難な歴史も影響しているのか、決して諦めない“不屈の精神”がクロアチア代表のトレードマークだ。
前回のロシア大会では、大会MVPを獲得したモドリッチの獅子奮迅の働きによって、準優勝という快挙を成し遂げた。はたして今大会ではどこまで勝ち進むだろうか。
南米の吸血鬼&戦術オタクな頑固ジイさん

2014年ブラジルW杯で噛み付いた直後のルイス・スアレス/写真:ロイター/アフロ
5. ルイス・スアレス
最後はこの男。W杯初代王者ウルグアイのレジェンド、ルイス・スアレスだ。
1987年1月24日生まれの35歳で、ウルグアイ代表の最多得点記録保持者であり、オランダ、イングランド、スペインのリーグで得点王を獲得してきた。
ヘディング、ミドルシュート、FKなど、どこからでも得点を狙える生粋の点取り屋。仲間を活かすアシスト能力にも優れ、バルセロナ時代はメッシと黄金のコンビを形成した。“ストライカーとしてのエゴ”と“チームプレイヤーとしての献身性”を絶妙なバランスで併せ持った、類まれなる選手だといえる。
卓越したプレーだけではなく、後に語り草になる“珍プレー”もスアレスの魅力の一つだ。最も有名なのは、2014年のブラジルW杯でイタリア代表DFのキエッリーニの肩に“噛み付ついた”事件だろう。ちなみこれは彼にとってキャリア3度目となる噛み付きで、とある英ブックメーカーでは「W杯期間中にスアレスが誰かに噛み付く」という条件のオッズが175倍で設けられていた。(実際にこのベッティングで勝利した人もいたようだ。)
今季から活躍の場をスペインから母国ウルグアイに移すなど、キャリアが終盤に差し掛かっていることは間違いない。全盛期の“キレッキレ”なプレーは難しいだろうが、一瞬の閃きでゴールを奪う姿に期待したい。
6. ルイ・ファン・ハール

ルイ・ファン・ハール/写真:ロイター/アフロ
番外編として、オランダ代表の監督を務めるルイ・ファン・ハールを紹介したい。
1951年8月8日生まれの71歳で、カタールW杯に出場している32カ国の監督の中で最年長となる。アヤックス(オランダ)を指揮した1994-95シーズンには、リーグ戦とチャンピオンズリーグの両方で無敗優勝を成し遂げるなど黄金時代を築き上げた。その後、バルセロナやバイエルン・ミュンヘンなど、各国のビッグクラブを渡り歩いた名将だ。
サッカー界屈指の戦術家だが、それゆえに選手個々よりも戦術や組織を優先しすぎる傾向があり、多くのスター選手との軋轢が噂されてきた過去を持つ。ただ、アンドレス・イニエスタやトーマス・ミュラーを下部組織からトップチームに引き上げて重用するなど、若手の才能をいち早く見抜く慧眼の持ち主でもある。
2016年にマンチェスターユナイテッドの監督を退いた後、サッカー界から引退していたものの、2021年にオランダ代表監督として電撃復帰。過去にもオランダ代表を指揮したファン・ハールにとって、今回は第3次政権の集大成となる。
今年4月に前立腺がんを患っていることを明かした71歳の御大は、おそらく自身にとって最後のW杯となる今回、母国を“悲願の初優勝”に導くことができるだろうか。
取材・文/佐藤麻水
写真/アフロ
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