日本チームには世界に誇れる強みがある

朝7時、神奈川県・片瀬西浜海岸。地元のサーファーはチラホラいるものの、海水浴客の姿はまだない。昼間の陽気な雰囲気とは違う、少し堅い表情を見せる海で、屈強な男たちがトレーニングに励んでいた。

夏の間は海の安全を守るライフセーバーとして活動しているが、同時に、ライフセービング競技のアスリートとしても活動する彼ら。9月27日〜10月2日にイタリアで開催される「ライフセービング世界選手権大会(LWC 2022)」に、日本代表として出場することが決まっている。

選手人口はわずか1200人。それでも世界に挑む、ライフセービング日本代表の夢_1
左からキャプテンの上野凌選手、園田俊選手、西山俊選手、繁田龍之介選手。この日、参加していなかった嶋津俊也選手、高須快晴選手を含め、男子日本代表は6名

約50か国・のべ4000人のライフセーバーが集う2年に1度の大舞台では、各国男女6人ずつで編成したチームで、オーシャン競技・ビーチ競技・プール競技のすべてを戦い、その総合得点を競う。

「ここ数年の日本の順位は8位。オーストラリアとニュージランドが世界の2強です。体格の違いもありますが、選手層の差は大きいですね。日本のライフセービング選手人口は1200人前後。一方、全豪選手権には約9000人が集うので、そもそも競技人口の母数が違います。彼らは子供の頃から競技に親しんでいるし、そこからふるいにかけられた精鋭たちが集まってきていますから」(西山)

選手人口はわずか1200人。それでも世界に挑む、ライフセービング日本代表の夢_2

競技人口の違いは、同時に、大会を支える仕組みや練習環境などのインフラの違いにも現れる。「メジャースポーツとマイナースポーツの違いを見つけるのと近しいものがある」というが、日本チームにも世界に誇れる強みはある。

選手人口はわずか1200人。それでも世界に挑む、ライフセービング日本代表の夢_3
8月下旬に行われた、日本代表合宿

「海外選手よりも体格は小さいけれど、ビーチフラッグスは小回りが効くので、日本はかなり強い種目です。ライフセービングは泳ぎ以外の技術も必要とされる競技。溺者に見立てたマネキンをプールの底から引き上げ、レスキューチューブを装着して引っ張る種目もあるのですが、そういった細かい技術の精度は日本チームの強みです。プールの水深70センチに張られたネットをくぐる障害物リレーでは、2017年の『ワールドゲームズ』で世界記録を樹立し、優勝したこともあります」(上野)