「(松田元オーナーから)ボロボロになっても2000本を打ってくれと言われた。ありがたかった」
広島で3年ぶりに日本球界に復帰する秋山翔吾外野手(34)=前パドレス傘下3Aエルパソ=が6月30日、マツダスタジアムで入団会見を行った。24年までの3年契約で、年俸は出来高込みの総額5億円(推定)。
NPBシーズン最多安打記録(2015年)、首位打者(2017年)などの記録を持つ日本屈指のバットマンの電撃的な日本球界復帰。その争奪戦では古巣の西武、資金潤沢なソフトバンクが有利とみられていたが、秋山が選んだのはまさかの「大穴・広島」だった。
「秋山の悲願である日米通算2000本安打までは残り524安打。西武は2年契約を提示したが、これでは記録達成に不安が残る上、秋山としては古巣で順調に育っている若手の出場機会を奪いたくなかった。
また、ソフトバンクに入団してかつてのチームメイトと戦うことも避けたい。そんな思いから広島入りを選んだと言われています。広島は外野の人材が手薄で、3年契約だったことも決断を後押ししたはずです」(スポーツ紙デスク)
だが、もうひとつ、ほとんど報道されていない決定的な理由があるという。
「カープが中途入団選手、とくに実績のあるベテラン選手を獲得する場合は、プレイヤーとしての能力はもちろん、引退後に指導者を務められる人材かどうかを見極めて、スカウトに動く。
つまり、カープは2年、3年という短期間でなく、引退後の野球人生も含めて10年、場合によっては20年の長期契約のつもりで秋山との契約交渉に臨んでいたんです。カープの将来を任せたいという球団側の熱い思いが秋山にも伝わったんだと思います」(地元紙記者)

実質20年契約⁉ “大穴”広島が秋山翔吾を獲得できた「決定的な理由」
3年ぶりに日本球界に復帰する秋山翔吾外野手の広島入りが決まった。下馬評では古巣の西武、資金潤沢なソフトバンクが有利とみられる中、“大穴”的な存在だった広島はいかにこの争奪戦を制したのか。背景にはふたりのキーマンの存在があった。
カープの「将来」を任せたい
プレイヤーだけではない秋山の「資質」
実際、広島が将来の指導者含みで獲得した選手は数多い。横浜の主力として選手会長も務めた石井琢朗や、西武、巨人で抑えとして活躍した豊田清などはその好例だろう。
「石井琢朗は引退後直後の2013年シーズンからコーチに抜擢されています。それも彼の実績を考えれば、いきなりバッティングコーチを任せてもよかったんですが、球団側はあえて守備走塁コーチにした。将来の監督就任を見すえて、さまざまなコーチポジションを石井選手に体験させようという球団側の配慮でした」(前同)
最近では巨人から移籍してきた長野久義、阪神からFA出戻り組の新井貴浩などもこのケースに該当するという。
「長野は後輩の面倒見もよく、気遣いもできるとチーム内での評判は抜群です。球団幹部らも『長野には引退後もチームに残ってもらい、コーチを任せたい』と明言しています。
新井も人柄がよく、復帰後は明るい性格でチームをまとめ、25年ぶりのリーグ優勝(2016年)に大きく貢献したことはだれもが認めるところです」(前同)
これらの選手に共通するのは豊かな人間性と高いコミュニケーション能力。カープはこうした「資質」こそが、指導者として選手を育成し、チームを切り盛りするために欠かせないと考えているのだろう。
それではカープはどうやって秋山の「資質」に気づいたのか? そこにはふたりのキーマンがいたとされる。
「カープの大きな財産になる」
「ひとつは松田元オーナー。たまたま、NHKの『球辞苑』という番組で秋山が取り上げられている回を見て、その言動にいたく感心したと聞いています。『この選手(秋山)は野球を深く考えている。しっかりした選手だ』と、周囲に激賞していたそうです。
もうひとりは人事の全権を握る鈴木清明本部長。プロ野球機構側の人間として、選手会との折衝に出席した際、選手会代表のひとりとして参加していた秋山の交渉ぶりや人間性に惹かれたといいます。この2人の評価がそろったことで、カープは全力で秋山獲得に乗り出したというわけです」(前同)
実際、秋山は広島入りを決めた理由として、「鈴木本部長からの『来てもらえれば、カープの大きな財産になる』という言葉は響きました」と答えている。
入団会見に臨んだ6月30日、マツダスタジアムでは背番号9のTシャツを着こみ、さっそく練習に汗を流す秋山の姿があった。カープファンが日米通算2000本安打の達成、コーチ、監督として采配をふるう秋山の雄姿を目撃する日はそう遠くないのかもしれない。
写真/共同通信社
新着記事
自衛隊が抱える病いをえぐり出した…防衛大現役教授による実名告発を軍事史研究者・大木毅が読む。「防大と諸幹部学校の現状改善は急務だが、自衛隊の存在意義と規範の確定がなければ、問題の根絶は期待できない」
防衛大論考――私はこう読んだ#2
世界一リッチな女性警察官・麗子の誕生の秘密
「わかってる! 今だけだから! フィリピンにお金送るのも!」毎月20万以上を祖国に送金するフィリピンパブ嬢と結婚して痛感する「出稼ぎに頼る国家体質」
『フィリピンパブ嬢の経済学』#1
「働かなくても暮らせるくらいで稼いだのに、全部家族が使ってしまった」祖国への送金を誇りに思っていたフィリピンパブ嬢が直面した家族崩壊
『フィリピンパブ嬢の経済学』#2