18年ぶりのリーグ優勝を果たした阪神タイガースは10月4日に全日程を終えましたが、今後はクライマックスシリーズ突破、さらには日本シリーズへと戦いは続きます。当然、めざすのは日本一ですが、選手たちが最も重視していたものは間違いなくリーグ優勝でしょう。
短期決戦は、得手不得手もあり、やってみないとわからない部分もありますが、長期間戦った上でつかみ取るリーグ優勝は、確かな実力がないと成し遂げることができません。
短期決戦での勝敗がどうなろうと、選手たちが「アレ」でつけた自信は、今後の阪神タイガースにとって、非常に大きなものだと思います。
〈鳥谷敬が選ぶ阪神MVP〉四球、出塁率ともリーグ1位。“強い阪神”を象徴する四番・大山悠輔の貢献度
阪神タイガースが2023年のペナント全日程を終了した。中野拓夢(最多安打)、村上頌樹(防御率)、岩崎優(最多セーブ)など数多くのタイトルホルダーが出た中、鳥谷敬氏が「あえて”MVP”を選ぶなら…」と名前をあげた選手とは?
#10 あえて“MVP”を選ぶなら
チームを救ったセーブ王・岩崎の存在感

鳥谷敬氏
さて、以前、自分は「阪神優勝の大きな要因は、岡田監督の采配」だと話しましたが、通常どおりに選手の中からMVPを選ぶとすれば、自分は最多セーブのタイトルを獲得した岩崎優投手の名前をあげます。
シーズンの初めは、湯浅京己投手がクローザー、岩崎投手がセットアッパーという役割でしたが、湯浅投手が負傷のため離脱。岩崎投手がクローザーをつとめることになりました。これは、かなり過酷なことです。
もし、チームのクローザーが決まらないという状況になっていれば、今シーズンの結果は違ったものになっていた可能性が高いでしょう。先発投手陣の活躍も、絶対的なクローザーがいてこそだと思うので、岩崎投手の存在は、本当にチームを救ったといえるのではないでしょうか。
本塁打数以上に大きかった4番・大山の貢献度
また、野手で最も高い評価をすべきだと思うのは、大山悠輔選手です。1年間通して、調子がいい時も悪い時も、4番という打順にずっと座り続けました。
チームの打線の「軸」となったという点での貢献度は計り知れません。四球(99個)出塁率(.403)ともリーグ最多でした。今季はホームランが19本で、もしかすると本人は、もっと打ちたかったのではとも思いますが、チームのために1年間、出塁し続けたことは、必ず今後につながるはずです。

大山悠輔(写真/共同通信社)
春季キャンプの時から感じていたことですが、大山選手は、技術向上のために、ただ打つ、走る、トレーニングをするのではなく、食事などの違った方面からもアプローチをしようとする意識を持っていました。プロ野球選手として、年々レベルが上がっている証しでしょうし、まだまだ上を目指してほしいと思います。
一方、開幕前に大山選手との「4番争い」が注目されていた、佐藤輝明選手は、持っているポテンシャルから考えると、決していい成績だったとは思いません。
本来は、チームが優勝して打率が2割6分、ホームランが24本ならば、素晴らしいシーズンだったと言っていいのかもしれません。しかし、ホームランを40本打てる力がある選手だと期待しているので、もっと活躍できたのでは…と感じてしまうのです。
そんな中でも、8月以降の打撃は「もっと爆発するシーズンがくる」という印象を受けました。思いきり振って、思いきり飛ばすだけではなく、少しスタイルが変化して、力の抜け具合も変わってきたように見えます。
シーズン中、選手と話をしない理由
余談になりますが、実は自分は、今シーズン中、選手たちとは挨拶をするだけで、話はほぼしていません。なぜなら、自分は試合前にインタビューを受けることが本当に嫌だったからです。

甲子園球場(写真/shutterstock)
たった15分のインタビューでも、選手からすると試合前の15分間は、すごく大切な時間なのです。それに、その15分間を作り出すためには、準備を30分前倒ししないといけません。
立場が変わり、自分がインタビューさせてもらう側になったからといって、自分が奪われたくなかった試合前の時間を、選手から奪うことはしたくないのです。
シーズン中は、些細なことが気になるものです。調子がよかったのに、インタビューをうけた試合でヒットが打てなかったりすると、インタビューを受けたから調子が悪くなったのかな…というようなことを思ったりもします。
でも、シーズンオフになって、時間ができたら、話を聞いてみたいと思うのは、梅ちゃん。梅野隆太郎選手ですかね。彼は残念ながら、チームにとって大切な時期に離脱してしまいました。これは自分が経験したことのない状況なので、どういう気持ちで過ごしていたのかを聞いてみたいと思います。
構成/飯田隆之
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