バスケが文化として根付く沖縄

「追いかけっこをするときに、『追いかけっこが下手だから』という理由で参加させてもらえないことなんてないですよね? それと同じようなことなんです」

以前そう語っていたのが、岸本隆一である。沖縄県名護市出身で、沖縄市に本拠地を置く琉球ゴールデンキングス(以下、琉球)で長年キャプテンを務めてきたレジェンドだ。

身長は176cm。日本のプロバスケットボールのBリーグには、国内出身選手でも身長が2m前後ある選手がゴロゴロいるため、岸本はプロバスケ界ではかなり小さい部類に入る。マンガ『SLAM DUNK』で描かれた宮城リョータのように。

大東文化大学在学中の4年間だけ沖縄県外で暮らした経験のある岸本は、以前、「追いかけっこ」を例に沖縄の事情をこんな風に説明していた。

「沖縄県外では、バスケが上手な人しかコートを使うことを許されないような“空気”があるんです。誰もが利用できるバスケットコートの数が(沖縄と比べて)少ないことも関係しているとは思うのですが…。

でも、沖縄の場合は違います。

僕から見ても『上手だな』と思うような子から、お世辞にも上手ではない子まで、さまざまで。追いかけっこと同じ(構図)ですよね。沖縄は、リングにボールを通すことを純粋に楽しむ人であふれている。そんなところから『沖縄ではバスケが文化として根付いているんだ』と感じますね」

そんな地で、「沖縄をもっと元気に!」をスローガンとして活動してきたのが琉球だ。

ただ、彼らは沖縄だけではなく、日本全体を元気にするかもしれない。沖縄に風が吹いている最高のタイミングで悲願の初優勝を成し遂げたからだ。