大谷の打球が「ミサイルのような弾道」を描く理由

【WBC】「決勝トーナメントのキーマンは岡本、牧、山田」。名コーチが語る侍打線が1次ラウンドで見せた唯一の「死角」。_1
1次ラウンドでは12打数6安打でチームトップの打率をあげた大谷翔平
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1次ラウンドの侍打線の爆発は、もちろん大谷翔平の好調さもあるが、私は1番を打つヌートバーが打線の持ち味を最大限に引き出したと感じている。彼があれほど活躍すると、誰が予想しただろう。

相手投手の左右も苦にすることなく、いたずらに引っ張るわけでもなく、凡ゴロでも全力疾走する。明るい性格のようでチームに早く溶け込めたことも成功の秘訣だろうが、あの積極性がはまり、2番の近藤健介、3番の大谷とうまく繋がったことが、いずれのゲームでも大量得点につながった要因だろう。

それにしても大谷は地球人じゃない、宇宙人だ(笑)。パワーとテクニックの次元が違う。具体的に言えば、高めゾーンの打ち方だ。

見送ればボールかも知れないギリギリの高め。日本だったら「上から叩け」と指導されるような高さのボールでも、大谷は低めを打つのと同じ軌道でバットを振っている。一見すると、しゃくり上げるような独特のスイングがそれだ。

普通、あれだとラインドライブがかかってしまい、打球は上がらない。ところが大谷は手首の使い方がうまいので、当たってもドライブはかからず飛んでいくというわけだ。 

昔から日本のホームラン打者の打球は大きな弧を描き、そのアーチの美しさから〝ホームランアーチスト〟などと呼ばれたものだが、大谷の打球はミサイルのように飛ぶ。それもパワーがあるからスタンド上段まで飛んで行く。

これまでの日本人ホームラン打者との違いはそこにある。あれはなかなか真似できないもので、強いて探せば、ソフトバンクの柳田悠岐が近いスイングをしているが、パワーは大谷には及ばない。

あのようなスイングは今、メジャーで流行しているようだが、思えば大谷は日本ハム時代から同様のスイングをしていた。ただメジャーに渡り、打球の違いを痛感したのだろう。ムキムキの筋肉を付けてパワーアップしたのは、そうした理由からだと推察される。