前編はこちら

満員の日産スタジアムを求め続けた兵藤慎剛。その願いが叶った2013年ホーム最終戦への消えない想い_1
2013年11月30日、ホーム最終戦の先発メンバー。シーズン通してほぼ不動のこのベストメンバーで優勝に臨んだ。前列左端、背番号7が兵藤さん。(写真/©J.LEAGUE)
すべての画像を見る

何も言わなくても流動的にやれていた2013年のF・マリノス

ずっとコミュニケーションを取っていると、言葉が要らなくても分かり合えるようになる。兵藤慎剛は、そんな感覚を抱いていた。

2013シーズン、横浜F・マリノスは開幕から6連勝とロケットスタートを切る。主に右のサイドハーフに入る兵藤は第2節アウェイの清水エスパルス戦(3月9日/5-0)、第3節ホームのジュビロ磐田戦(3月16日/2-1)で2試合連続ゴールを挙げるなど好調のチームをけん引する存在であった。

「何も言わなくてもトップ下のシュンさん(中村俊輔)を中心に、2012シーズンの最後のほうから全員がリンクしはじめた感じがあったんです。ダブルボランチにはカンペーさん(富澤清太郎)とマチ(中町公祐)がいて、みんなそれぞれに周りをうまく活かすことができていました。(裏に抜け出した)エスパルス戦のゴールも、『カンペーさんからここにボールが来るよな』って感じがなんとなくありましたね」

兵藤が28歳になる2013シーズンのF・マリノスはスタメンの平均年齢が30歳を超え〝オッサン集団〟とも揶揄された。だが経験値の高い選手を揃えたチームは、勝負のツボをよく押さえていた。

「シュンさんが動くと、相手もつられて動く。そうやって空いたスペースを使うのは僕も得意だったし、逆に自分が動いたところをシュンさんに使ってもらうというのもありました。シュンさんのサッカー観にちょっと近づけた感じもしていて、〝ヒョウ、ちょっとそこ空けといてよ〟と一言もらうだけで、どういうことがしたいのかって分かったりして。そこは常に考えていたし、今振り返っても、やりやすかったですね(笑)。  

僕の後ろの右サイドバックにはパンゾー(小林祐三)がいて、ボールをこう出してほしい、こう動いてほしいということはお互いに理解できていました。誰が何を言わなくても勝手に流動的にやれていたのが、あの2013シーズンだったと思います」