〈茅ヶ崎刺殺事件〉「家賃4万円の部屋で230万円以上を滞納」「以前より住居を不法占有」…外資系IT社員を殺害した50歳無職男の裁判官も呆れ果てた不動産トラブル「別の部屋の住人が私を泥棒にしようとした!」
神奈川県茅ヶ崎市に住む外資系I T会社社員、四方洋行さん(55)が今月20日、自宅で刺殺された事件で、県警が殺人容疑で逮捕した大阪府出身の住所不定、職業不詳、高井靖弘容疑者(50)の無軌道な暮らしぶりと身勝手な動機が裁判記録から明らかになった。
四方さんに所有権が移る以前から不法占有
不動産賃貸を副業にしていた四方さんが所有する大阪市内のマンションに入居していた高井容疑者は、月額4万円の家賃を一度も払わず230万円以上も滞納。明け渡し訴訟で敗訴後も居座っていたが、強制執行で立ち退かされていた。

逮捕された高井容疑者(共同通信より)
この訴訟でも意味不明の主張を繰り返していた高井容疑者は、判決を不服として控訴しながら、控訴審が始まるのを待たずに今回の凶行にはしった。
四方さんは2015年に自宅に不動産会社を設立、東京都内のマンションの一室を購入したのを皮切りに、札幌市内や京都市内で小ぶりな中古マンションを購入。続いて2016年に購入した大阪市城東区のマンション(1988年建築、4階建て)に、以前より入居していたのが高井容疑者だった。
四方さんは兵庫県加古川市の管理会社を通じて、2017年6月3日付けで高井容疑者と不動産賃貸契約書を交わした。高井容疑者が入居していた部屋(約15平方メートル)の家賃は月額4万円で、2年毎に自動更新される契約だった。しかし高井容疑者は難癖をつけては家賃を滞納、自動更新後も一切支払わなかったようだ。
ついに堪忍袋の尾が切れた四方さんは今年1月17日、高井容疑者が不法占有しているとして、大阪簡裁に部屋の明け渡しを求めて訴えた。
訴状によれば高井容疑者は、四方さんに所有権が移る以前から不法占有している状況で、京都市の管理会社(当初の管理会社とは異なる)が速やかに退去するよう求めたが応じなかった。
やむを得ず提訴に至った四方さんに対し、高井容疑者は5月16日に答弁書で「不法占有などしていません。四方が契約していた加古川市の管理会社の下請けのKの元、正規の賃貸契約で入居しました」「京都市の管理会社の担当者と退去について話し合いをした事実は一切なく、全く関係ない会社の人とは話し合いをしました」としたうえで「言い分」としてこう書いていた。

大阪簡易裁判所
「この訴状事体が嘘に基づいたものであり、それ自体が四方一味の犯罪行為を隠すためであり、家賃の請求をしたいなら根本の原因であるKに請求すべき事案だと思います」
大阪簡裁は「被告の主張は失当である」と原告の主張を全て認めた
7月28日に提出した準備書面では、さらに妄想がかった主張を繰り返した。
こんな具合だ。
「前住居の管理会社の人物(Kの後輩)の案内でいざ住み始めると、シンクや洗濯機の蛇口がジャジャ漏れ、トイレの水はちょろちょろ流れっぱなし、ベランダの排水溝は大量のゴミが固まって詰まって流れない」「2週間で届くと言っていた賃貸契約書も2カ月待ってもこないので、城東警察署に呼び出して話し合いをしたときやっと持ってきた。そのときに通信費として1万円を受領する。その後引っ越し代を払うと約束したのに連絡を無視して逃げている状態」「〇〇〇号室の住人が私を泥棒にさせようとした件で、×××号室の鍵を交換しに来ていた京都市の管理会社の社員には蛇口のことを伝えて部屋の中に入ってきたが、その後一切連絡なし」等々……。

高井容疑者が住み続けた四方さん所有のマンション
少なくとも妥当性は一切ないと判断しただろう大阪簡裁は10月4日、「被告の主張は失当である」として原告の主張を全て認め、滞納分の家賃232万円を期限内に払わない場合、賃貸契約を解除する意思表示をしたとみなす判決を言い渡した。
高井容疑者はこれを不服として大阪地裁に控訴したが、簡裁の一審判決には明け渡しの仮執行ができることが付帯しており、12月16日に明け渡しの強制執行が完了した。

「宿なし」になった高井容疑者は年明けに期日が決まっていた控訴審に臨むことなく、筋違いの逆恨みを極大化させ、レンタカーで大阪から遠路、茅ケ崎まで遠征、身勝手な「本懐」を遂げた。被害者の四方さんが浮かばれない。
取材・文/集英社オンラインニュース班