玄関を開けたとたん、刃物で胸や頭を刺され…海沿いの一軒家に住み、誰もが羨む外資系IT社員(55)はなぜ殺害されたのか〈茅ヶ崎IT社員刺殺事件〉
神奈川県の湘南地域中部に位置する茅ケ崎市。海辺の街の白い家のインターフォンが鳴らされたのは12月20日、午後1時ごろの事だった。この家に住む四方洋行(しかた・ひろゆき)さん(55)が応対しようと玄関のドアを開けたところ、訪ねてきた男に突然、刃物のようなもので刺された。胸や頭などの上半身を複数箇所刺され、玄関先で血まみれで倒れているところを妻が発見。その後、病院に搬送されたが約3時間後、帰らぬ人となった。
現場はサザンオールスターズゆかりの地であるサザンビーチや、サザン通り商店街からほど近い茅ケ崎市中海岸の住宅街。夏には海水浴やマリンスポーツを楽しむ観光客が多く訪れるエリアだ。

現場はサザンビーチ付近だった
被害者の自宅は、人通りの少ない入り組んだ路地にある一軒家で、すぐ裏手には茅ケ崎公園野球場もある。犯人は白昼堂々と犯行を行い、走って国道134号線を海岸の方向に逃げたと見られている。近隣住民が不安を漏らす。

四方さん(本人フェイスブックより)
「人を殺して逃げている男が近くにいるかも、と思うと怖いですよね。それに警察の方が聞き込みに来た時、男の写真を見てしまったので余計に怖いです。それは四方さんの自宅のインターフォンに映っていた男の顔写真でしたが、タオルを頭にかぶって、薄い黒っぽいレンズの眼鏡をかけてマスク姿でした。ベージュの作業着を着て、30代~40代くらいの中肉中背、日本人にも外国人にも見えました。でも、どちらかというと日本人ぽかったです。
僕だったら、インターフォンを鳴らされても正直玄関は開けなかったと思います。なにやら怪しい雰囲気でしたから」

四方さんの自宅を出入りする捜査員
通報した四方洋行さんの妻は逃げた男について「夫が包丁で刺された、知らない人だった」と話しているという。亡くなった四方さんは近隣からの評判もよく、なぜ事件に巻き込まれてしまったのかと親しくしていた知人は首を傾げる。
「最後にお会いしたのは一週間前です。ちょうどゴミ捨てをしに来た時に挨拶をしました。普段通りでしたし、変わった様子はありませんでした。もともと四方さんが引っ越してきたのは6年以上前とかそのくらいだったと思います。その時は息子さんもまだ家にいましたが、今は大きくなってもう家を出ていると思います。
四方さんはサーフィンが好きで優しい方でした。親しくさせていただいていたので私もショックを受けています」
四方さんのフェイスブックには、8年前、サーフボードを抱える姿が掲載されている近隣住民によると「四方さんは妻と仲睦ましく生活していた」という。
別の近隣住民が語る。
娘が四方さんの家の前でローラーブレードで遊んでいたところ、四方さんから『スケボー、よかったらあげるよ」っと声をかけてもらったそうです。それ以来、見かけたら声をかけてくれていたみたいで、娘は「優しいおじさん」と話していました。
私が最後に見かけたのが12月17日の土曜日。その日、四方さんの家の前は道路工事をしていて、四方さんは邪魔にならないよう車を移動させていました」
SNSや登記簿情報によると四方さんは京都府出身。茅ヶ崎市内の賃貸マンションに移り住み、現在の自宅を2004年に購入している。外資系のIT企業での職歴が長く、エンジニア向けのニュースメディアの取材も受けている。会社は都心のレンタルオフィスにあった。
「今日、会社の電話会議で亡くなったのが四方さんだと初めて知りました。私は名義上、社長ですが業務にかかわることもなく、四方さんとは会ったこともないのでどんな方だったのかも知りません。東京ではサービスオフィスを使っていると聞いてますが、現状、どのような形態で働いていたのかもわかりません。事件については非常に残念だと思います」(四方さんが勤めていた外資系会社社長)
どうやら四方さんは、社内の人間関係は希薄だったようだ。
捜査関係者が語る。
「被害者が複数箇所刺されていた事からも容疑者は強い殺意を持っていたとみています。犯行直前には『男性同士がトラブルになっている』という通報もあり、四方さんが何らかのトラブルに巻き込まれた可能性が高い。現在、周辺の防犯カメラを分析するなどして逃げた男の行方を追うとともに交友関係も含め捜査中です」
(追記)
22日、神奈川県警は現場逃走したとみられる男の身柄を確保した。男を殺人容疑で逮捕する方針だ。
確保された男については後日詳報する。
凶行はなぜ起きたのか。一刻も早い事件解決が望まれる―
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班