事件は10月7日、午前4時55分ごろ、JR神田駅近くのかき小屋「飛梅」で起きた。店前に配達されたおよそ30匹のサンマ、5600円相当が盗まれたのだ。
三陸直送の新鮮な牡蠣が売りの「飛梅」では深夜帯に店の前に食材が置き配され、翌日の午前10時に仕込みに来る従業員が店内に運び込む。その置き配が狙われたのだ。
「いつもは午前10時なのですが、その時はたまたまいつもより早く従業員が午前9時に出社していました。置き配される予定だったのは牡蠣が6箱、ハタが2箱、サンマが1箱でした。発泡スチロールに入れられて店前に置かれるのですが、これまで8年間、置き配を盗まれたことなんて一度もありませんでした」(「飛梅」首都圏事業部本部長・高橋忠昌さん)
〈神田・置き配窃盗〉30匹のサンマだけが消えた!! 店主は「美味しい女川産を食べてほしかったのに…」と怒り心頭。65歳無職男はなぜサンマを盗んだのか? あの“偉人”との関係は…
「その日、女川(おながわ)産のサンマを使う予定だった秋の会食コースは17名の予約が入っていました。盗まれたことがわかって、大慌てでスーパーに買いに走って代用品を購入しましたが、スーパーのサンマは身が痩せ細っているうえに、焼くとさらに細くなってしまって‥‥‥。お客様には新鮮なサンマを味わって欲しかったです」
忽然と消えた発砲スチロール入りのサンマ30匹

被害にあった「飛梅」と取材に応じる高橋さん
なぜかカキやハタは盗まれず、サンマだけが盗まれたことから当初は遅配だと思われていた。しかし、一向に届かないため配達業者に問い合わせたところ、確実に配達したとの返答を受け、「もしかして盗まれたのでは?」と思い至ったという。
「今思えばサンマの発泡スチロールにだけはラベルで『サンマ』と明記されていたので、食材だとすぐにわかったのかもしれません。それか一番上に積まれていて持っていきやすかったのかもしれません」(同前)

予定されていたコース料理のメニュー画像
決め手は付近の防犯カメラの映像
かつては庶民の味方と慣れ親しまれてきたサンマだが、近年は海水温の上昇で日本近海に近寄らなくなったことや、中国や台湾の漁船の影響により、不漁が続いている。
全国さんま棒受網漁業協同組合によると、今年8~10月の全国のサンマ水揚げ量は約1万1千トン、水揚げ量は10年前の一割に満たず、決して安価とは呼べない魚となった。

高級魚となった?
高橋さんは、その日のうちに神田警察署に被害届を出すと、およそ2週間後には犯人と思しき人物が特定された。
「逮捕の決め手は店の付近のビルに設置された防犯カメラの映像です。自転車の荷台に発泡スチロールのケースを載せて走り去る容疑者の姿が映っていました」(捜査関係者)

30匹のサンマは発砲スチロールにいれられていた
事件から約二カ月後の11月29日、窃盗の疑いで東京都文京区の無職、伊能忠弘容疑者(65)が逮捕された。伊能容疑者が暮らしていたのはJR駒込駅からほど近い閑静な住宅街にあるアパートの一室だ。近所では伊能容疑者と思われる男性がたびたび目撃されている。

伊能容疑者が暮らしていたアパート
「半年くらい前に引っ越してきて挨拶に来ました。大事そうによくギアつきの自転車の手入れをしていていた。少し前、アパートの自転車置き場で会ったときは、『過去に脳出血をやって、今はそのリハビリに通っている』と話していました。仕事をしている様子はなかったですね」(近隣住人)
アパートの一室で独り暮らしていた伊能容疑者、周囲とはトラブルもなく、近隣住人は物静かな印象を受けたという。
まさかの伊能忠敬との関係
「苗字が変わった苗字だし名前も似ているから、『ひょっとしたら日本地図をつくった伊能忠敬さんの縁者の方なの?』と聞くと、否定はせず照れた感じで苦笑いしていました。彼は伊能忠敬さんの生まれや育ちなども詳しく知っていたから、ひょっとしたら関係があるのかもしれません。仕事は水産業の仕事をしていたようです」(前出)

伊能忠敬/アフロより
伊能容疑者は調べに対し「自分が食べるためにやった」「ほかにも80件くらいやった」と供述しているという。
事件が起こった近隣店舗の店主が語る。
「ウチは6ヶ月ほど前に深夜から朝方にかけて3回ほどビールの空樽を持っていかれたことがあります。知人の店ではまだ入っているビール樽を持っていかれたこともあったとか」
2022年6月以降、神田、神保町付近の居酒屋では、店先から野菜や牛肉、果物などが盗まれる被害が少なくとも5件発生しており、警視庁は現在、関連を調べている。
取材・文・撮影/集英社オンライン編集部ニュース班
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