批判を集めていた首相・閣僚の給与引き上げ法案は、一般公務員の給与改定に準じて、首相の月給を6000円増の201万6000円、閣僚の月給を4000円増の147万円とするもの。ボーナスを含め、首相は年46万円、閣僚は年32万円の「賃上げ」となる。
物価高で国民の生活が厳しく、1人あたり4万円の減税も来年夏のボーナスの時期まで待たなければならないという状況で、「自分たちだけお先に」と言わんばかりの首相らの賃上げには批判が殺到した。
当初、松野博一官房長官は「賃上げの流れを止めないためにも、民間に準拠した改定を続けていくことが適切」と述べ、首相3割、大臣2割の給与返納を続けることも強調して理解を求めてきた。
〈岸田批判の野党に大ブーメラン?〉「首相・閣僚の賃上げ」に批判殺到で自主返納も、立憲・共産の参院議員は280万円の自主返納に応じず? 永田町で聞こえる「あいつら、口だけや」の冷笑
物価高で国民の生活が苦しいなか、首相や閣僚がいち早く自分たちの「賃上げ」を進めることに批判が殺到している。しかし、これ以上の内閣支持率の下落を防ぐため、首相・閣僚は引き上げ分の給与の自主返納を決めた。一方、首相の「賃上げ」を批判してきた立憲民主党や共産党に対して、永田町からは「自分たちは自主返納に応じなかったくせに」と冷ややかな「ブーメラン」が……。
首相は年46万円、閣僚は年32万円の「賃上げ」

賃上げ分の自主返納を決めた岸田首相(本人Facebookより)
こうした政府の姿勢を厳しく糾弾してきたのが、立憲などの野党各党だ。
立憲の安住淳国対委員長は「物価高もあり、首相や閣僚の給与が上がることは、国民の理解は得られない」と批判。11月10日には、否決されたものの、首相や閣僚の給与を据え置く修正案を衆院に提出した。共産の穀田恵二国対委員長も「特別職(首相や閣僚など)については、給与の引き上げ法案を廃案にすることがけじめとして必要」と指摘した。
さらに、野党だけでなく、与党からも「首相や閣僚も(給与増額を)凍結するという考え方があってもいい」(公明・高木陽介政調会長)などと苦言が出たこともあり、政府は首相や閣僚の給与増額分を自主返納する方針に転換。松野官房長官は「万が一にも国民のみなさまの不信を招くことがあってはならない」と述べ、問題の収束を図った。
「内閣支持率が低下し続けている状況で、首相としてはこれ以上の逆風は避けたかったはず。野党も、国民の反発が強まっているのを見て、ここぞとばかりに批判を強めていました」(全国紙政治部記者)
立憲・共産の参院議員は280万円を自主返納せず?
だが、こうした立憲や共産の批判に対して、永田町からは冷ややかな「ブーメラン」も飛んでいる。
維新の中堅議員は、こうあきれる。
「ほとんどの立憲や共産の参院議員は、ほんまは月7万7000円を3年間自主返納するはずやったのに、返さずに3年間やり過ごしとるで。あいつら、口だけや」
これは、どういうことか。
参院では、議員定数を6増やしたことに伴う経費を削減する目的で、2019年夏から2022年夏までの3年間、1人月額7万7000円を目安に自主返納できるよう、国会議員歳費法が改正された。その結果、3年間で計4億4300万円の歳費が自主返納されたが、これは全員が月7万7000円ほどを3年間返納した場合の3分の2にとどまる。
全国紙政治部記者はこう語る。

横浜で演説する共産党、志位和夫氏(本人Xより)
「参院議員の歳費を自主返納することを盛り込んだ歳費法改正案は、自民・公明などの賛成多数で可決しました。返納した議員名や金額は公表されていませんが、自民や公明の参院議員は『当然、法案に賛成した与党議員はみな、自主返納している』と言います。『身を切る改革』を掲げる維新の議員も『俺たちも全員、返納している』と断言します。自民・公明・維新の議員をすべて合計すると、およそ全議員の3分の2となり、返納された割合とほぼ一致します。
一方、立憲や共産など他の野党の議員は『あれはあくまで自主返納だから』『そもそも定数の6増や自主返納の法案に反対したから』と、歳費法に書き込まれた、3年間で約280万円の自主返納に応じていないことを、悪びれる様子もなくにおわせるのです」
実際に、共産の志位和夫委員長も2019年当時の会見で自主返納に応じるか問われ、「(参院の定数6増と、それに伴う自主返納は)めちゃくちゃな法律ですから、考えていません」と断言していた。
蓮舫氏は自公案に「形だけ」と批判、歳費引き下げ法案まで出していたが……
3年間、ほとんどの参院議員が歳費を返納しなかったと指摘される立憲は、自主返納を盛り込んだ歳費法改正が議論されていた2019年には、3年間の自主返納では不十分だとして、より長期で確実に歳費を削減できる法案を国会に提出していた。

立憲の蓮舫氏(本人事務所Facebookより)
「蓮舫氏は当時、『参院議員の歳費を自主返納する期間がたった3年間で、あまりにも形だけで、ばかにしている』と自公の法案を批判。立憲は参院議員だけでなく衆院議員の歳費や首相の給与も引き下げる法案まで出しました。
それなのに、実際に自公案にもとづく自主返納が始まったら応じないという姿勢では、支離滅裂です。立憲はパフォーマンスや口だけだと批判されても仕方ありません」(全国紙政治部記者)
立憲の泉代表は首相の賃上げ法案についてX(旧Twitter)で「感覚がおかしい」と批判していたが、すでに法律に書き込まれた自主返納に応じなかった議員の「感覚」も問われている。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班