〈静岡ホスト集団暴行・揺れる証言〉「彼は熱い風呂を自分で張った」「いじめではなくケンカ」…逮捕されたホストの友人が詳細を証言「あれは何かの事故だと」

A氏は６人の容疑者のうち、中心的な役割を果たしたとされている海野智哉（30）＝源氏名・八神雅斗＝と和哉（28）＝同・一条恋＝兄弟と特に仲がよく、同店についても詳しいという。

「僕自身も『RE:MAKE』に飲みに行ったこともあるし、オーナーや今回捕まった海野兄弟、ほかの従業員とも仲がいいです。オーナーは静岡県にはいませんし、今回のことで心を痛めているので取材も難しいと思います。そもそもオーナーはTくんと会ったこともないし、雅斗に店を任せていて利益が出れば受け取ってるだけだと思います。また、『RE:MAKE』の中で従業員がケンカで怪我をしたことはあっても、誰かを標的にしたイジメのようなことはなかったと思っています。でもTくんが実際に亡くなったのは本当に残念なことですし、できることなら早く手を合わせに行きたい。それは『RE:MAKE』のみんなもそう思っているはず。悪ふざけはあったかもしれないけど、絶対に殺すようなことはしてないと思っています」

同店では、酔い潰れて床で寝ているようなホストを、別の従業員が協力して寮まで運び、入浴させるようなことが頻繁にあったという。事件当日の9月6日、Tさんはどういう経緯をたどって命を落としたのだろうか。

「酔ってない人が泥酔しているホストをお風呂に入れてあげる習慣が前提にありました。当日のことは、僕は事件直後に雅斗から電話をもらって様子も聞いています。その日はTくんが酔い潰れたのでいつものように寮に連れて帰り、一護崎優真（神谷勇輝容疑者）がお風呂に入れてあげる係だったそうです。Tくんはシャワーを浴びた後に浴槽に浸かり、理由ははっきりしないんですが、自分で熱いお湯を張ったみたいで、優真は熱くなりすぎないように調節してあげたりしていたそうです。最終的に確認したときは酔ってぐったりしているものの、湯舟に浸かっていたそうです」

Tさんを浴室に残し、ホストたちは食事をしようとウーバーイーツにオーダー、リビングでそれが届くのを待っていたという。A氏が続ける。

「Tくんから目を離していたのは１時間ほどだったそうです。まだお湯に浸かっているのかと様子を見に行ったらもう全身水ぶくれみたいになって意識がない状態だったので、すぐにお風呂から出して救急車を呼んだと僕は聞いています。雅斗からすると何もしてないのに傷害致死で捕まったのが不思議だったはずだし、弟の恋も、お風呂場に見に行くまで何も状況をわかってないのに逮捕されましたからね」

事件が起きた9月に海野智哉容疑者と神谷容疑者を逮捕した静岡県警は、押収したスマホを分析した。

「みんなで酔っぱらってふざけて脱がしてるとか、従業員同士が酔っぱらってケンカしてるとか、そういう動画がたくさん残っていたんです。その一部にTくんを脱がしてお尻にマドラーでツンツンしてる動画があったので、強制わいせつ容疑で雅斗は捕まって起訴されました。もちろんTくん本人もその場では嫌だったでしょうが」

A氏によると、9月6日、「Tさんは勝手に熱い湯をだして風呂に浸かり死亡した」ということになる。強制わいせつや傷害も「悪ふざけだった」とAさんは主張する。

「雅斗から事件当日に電話で『今救急車を呼んでこういう状況』と聞きましたが、もちろん事故だという言い方でした。その後は指示に従って蘇生措置を行っていたのだと思います。電話中には警察も来ていて、Tくんが亡くなってしまったことで慌ててはいましたが、何かやらかしたという話ではなく、事故として経緯を説明していました。電話の最後、雅斗は『これからみんなで警察に行ってくる』と言っていて、不審な様子もまったくしなかったので、まさか逮捕されるとも思っていませんでした」

A氏が言うことが事実なら、Tさんの死を巡っては、検証しなければならないことがある。

A氏はTさんともたびたび話をしたことがあったという。

「Tくんも人気があるときはあったし、本人も『就職しないでホストをやりたい』と言っていたので、ホストという仕事は好きだったと思います。この10月には韓国にみんなで整形旅行に行く計画を進めていて、パスポートの申請でTくんの地元の大阪に雅斗も付き合って一緒に行っていました。だから仲はよかったんですよ。イジメが行き過ぎて殺すなんてことないし、僕は何かの事故だと思うのですが……。何かのペナルティとかで熱湯につけるなんてことも聞いたことないですし、そんなことあれば普通辞めますよね」

♯２、♯３で報じた常連客らの証言では「雅斗」は酒癖が極端に悪く、ホストを殴ったり、ターゲットにしたホストを他のホストに暴行させるといった行動が日常茶飯事だったはずだが……。

「僕も従業員の子の顔が腫れているのは何度か見たことありますけど、理由を聞くと『従業員同士でケンカしたんです』ということでした。だから僕は雅斗が誰かを殴ったというのは把握してないんですよ。そもそもみんな仲がよくて、雅斗はTくんが大学を留年しそうなときに、卒業させるために送り迎えとかしてあげてたくらいなんで。悪ふざけをすることはあったと思うんですけど。
ただ、本当に仲いい子たちだったんですけどね。店で飲んでいるときも、雅斗が誰かを殴っているところは僕は見たことないです。ホスト同士がケンカしてポットを投げてそのポットのお湯を浴びてヤケドしたというのは聞いたことがありますけど」

実はA氏はもともと雅斗と同じホストクラブで働いていたという。

「雅斗は『RE:MAKE』の前にもいくつかのホストクラブで仕事をしていました。窃盗事件の後、自動車の整備の仕事をしながら掛け持ちでホストをやって、そしたら人気が出たのでホスト一本にしていったって感じです。今後はホストではなくバーのようなお店を自分でやりたいという話はしていました。雅斗自身はホストが女の子とやったりしないように目を光らせていたと思うし、酔って何かあったら嫌だからみんなで帰るというのは徹底していたという印象しかないんです。
彼らはホストだから、今まで通ってきてくれたお客さんの中にはお金を使わされて恨んでる子だっていますし、女の子に誘われた際に断る口実で『寮から出られない』などと言ったこともあるでしょう。だから街で話を聞けば彼らの悪い噂話なんていくらでもでる。この事件で『RE:MAKE』が潰れたあと、お客さんたちには一斉にいろいろなホストから営業の電話がかかってきているそうです。そういう世界なんです」

従業員、常連客、友人、家族……立場によって目線や主観が異なるのは当然だが、ここまで食い違うとなると、事件の捜査や審理はかなり混迷しそうである。
事実、真実が明らかにされることを願うばかりだ。

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取材・文／集英社オンライン編集部ニュース班