手紙はA4用紙4枚、約3000文字にわたり、文末はジュリー前社長のサインで締めくくられていた。
〈ジャニーズ会見〉「あなたの会社も名前も大嫌い!」…ジュリー氏が自ら“ライオンとシマウマ”とたとえた母・藤島メリー元副社長の怖さ
故・ジャニー喜多川氏の一連の性加害問題に揺れるジャニーズ事務所は10月2日、都内ホテルで会見を行い、同事務所を廃業することを発表した。同事務所前社長の藤島ジュリー景子氏は会見を欠席、ジャニーズアイランド社長の井ノ原快彦がジュリー氏の手紙を代読した。
「アナタ、そんなことも知らないでここにいるの?」

ジュリー氏からの手紙
〈この度、叔父ジャニー喜多川により性被害にあわれた方々に、あらためて心からお詫び申し上げます。5月2日に被害にあわれた方とはじめてお会いしました。その後も色々と実際にお話を伺う中で、この方々にどのように補償をしていくのが良いのか、加害者の親族としてやれることが何なのか考え続けております。そしてジャニーズ事務所は、名称を変えるだけではなく、廃業をする方針を決めました(略)叔父ジャニー、母メリーが作ったものを閉じていくことが、加害者の親族として私ができる償いなのだと思っております〉 ※会見当日、配布された手紙より引用
ジュリー氏不在で進む会見に当初はざわつきもあったが、手紙を代読する井ノ原氏から「廃業」の言葉が出ると会場の空気が変わった。あのジャニーズ事務所が廃業する…少し前まで、いったい誰が想像しただろうか…。

ジャニーズ事務所は廃業するという
筆者は、2022年まで約13年間、週刊誌記者として、何度もジャニーズ事務所と対峙してきた。言わずもがな事務所は揺るぎない帝国だった。スクープ記事を執筆しても、大手メディアは忖度し、後追い取材がないのは当たり前。
仮にジャニーズ所属タレントの熱愛スクープを書こうものなら、相手女性が所属する事務所の広報が「ジャニーズさんに迷惑をかけた」と肩を落とすのが通例だった。
また、ジャニーズ事務所元副社長の故・藤島メリー氏に呼び出され、執筆したスクープ記事について叱責を受けたこともあった。メリー氏は、少しでもこちらが異を唱えると烈火のごとく怒りだした。認識不足な箇所があれば「アナタ失礼ね」と叱られ、思いついたように突然クイズを出され、答えられずにいると「アナタそんなことも知らないでここにいるの?」と再び激高した。これまで自分が対峙してきた政治家、大御所タレント、拘置所で面会した凶悪犯よりも、正直、怖かった。

故・藤島メリー副社長
ジュリー氏も手紙で、母親でジャニーズ事務所の元副社長だった藤島メリー氏について「私が従順な時はとても優しいのですが、私が少しでも彼女と違う意見を言うと気が狂ったように怒り、叩き潰すようなことを平気でする人でした」と母との確執について触れ、メリー氏をライオン、自身をシマウマに例えた。
政治家や大手企業の役員でも「メリー氏の前ではタジタジだった」
ジュリー氏のこの例え話で筆者の脳裏に浮かんだのは、2017年のSMAP解散騒動での出来事だ。当時筆者はジャニーズ取材班の一員として主にハリコミ、直撃取材を担当した。
その際のジュリー氏とメリー氏の対応は真逆だった。
ジュリー氏は自宅のマンション前で筆者が声をかけると一言も発することなく自宅マンションへと走り去っていった。翌日、再び声をかけると一目散に送迎車へ飛び込み、筆者を大いに警戒していた。これは後に聞かされたことだが、これまで直撃取材など受けたことがなかったジュリー氏は、あまりのショックに外出を控え、送迎車も変更。追跡を逃れるために一時期はダミー車も用意していたという。

9月の会見で涙を流したジュリー氏
いっぽうのメリー氏の迫力は凄まじかった。偶然、渋谷のデパートで見かけて、そこから出た際に声をかけると、態度が豹変し烈火のごとく怒りだした。名刺を見るなり「アナタの会社も名前も大嫌い」と払いのけ、早口でまくしたて、10分ほど激高すると、スッキリとした顔で愛車のマイバッハに乗り込んでいった。もちろん、こちらの質問などまったく聞いてくれなかった。
その後も手練れの記者とともに取材を試みるも、間髪いれずにメリー氏の怒号が飛び、結局何も質問できなかった。
筆者の実力不足といえばそれまでだが、マスコミ関係者や芸能事務所幹部はもちろん、政治家や大手企業の役員でも「メリー氏の前ではタジタジだった」とジャニーズ関係者も話す。
9月8日におこなわれた会見で、筆者はジュリー氏に「母、メリーさんをどう思うか?」と質問した。ジュリー氏の回答はこうだった。
「メリーは私の母であると同時に、副社長として事務所をずっとけん引して、ジャニーがプロデュースしたタレントを、経営面で支えてきた。2人で本当に一心同体となって会社を運営してきたという長い歴史の中で、ジャニーのことをメリーが守りすぎた。それが今回、調査報告によって私も知らなかったことを知ることになり、本当にお恥ずかしい話ですが、すごくショックを受けております。そういう会話をしてこなかったので、本当に情けない話です」

10月2日の会見
生前、メリー氏に何も言えない体制をつくってきたのは、ジュリー氏のせいだけではないだろう。実際に彼女と対峙して打ち負かされてきた筆者も、偉そうなことは何一つ言える立場ではない。
この日の会見では、新たにタレントのマネジメントなどを行う会社を近く設立し、東山氏が社長、井ノ原氏が副社長に就くことも発表された。
東山氏は「会社に縛られることなく、タレント自身が方向性に応じて活躍の場を求めていくことになる」と話した。
今度こそ“ライオン”も“シマウマ”もいない、過去のしがらみに捉われない新体制を期待する。

取材・文/鈴木ひろあき
会見撮影/村上庄吾
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