「適材適所に尽きる。タイミングはまだ決まっていない」
岸田首相は9月5日、記者団からの内閣改造・党役員人事をめぐる質問にこう答え、木原誠二官房副長官とともにインドネシアに旅立った。
〈どうなる? 内閣改造〉岸田首相の“ライバル”茂木幹事長は留任へ。松川るい、森まさこら候補が続々炎上の「女性枠」は? 会長不在の安倍派議員は「ポストが回ってくるか心配だ」
9月13日にも内閣改造が想定されるなか、日程を明言せずに、インドネシア・インドへの外遊に出発した岸田文雄首相。来秋の総裁選出馬に意欲がある茂木幹事長や会長不在の安倍派の処遇、波乱含みの女性枠、はたまた国民民主党との連立はあるのか…。「何をしてくるかわからない」と言われる岸田首相の判断に注目が集まっている。
『安倍氏の次の次の総理でいい』と言っていた茂木氏の処遇は…

ASEAN首脳会合、G20首脳会合等に出席するため、ジャカルタとニューデリーへと出発する岸田首相(本人Facebookより)
木原氏は、妻の元夫の不審死をめぐり、妻が警察に重要参考人として事情聴取されていたとする「週刊文春」の報道を受け、交代も噂されていた。しかし、全国紙政治部記者はこう話す。
「首相は木原氏を副長官として残す方針です。長男も首相秘書官から更迭し、ほかに心を許せる味方もいないのでしょう」
一方、党役員・内閣の“骨格”で去就が注目されたのが茂木敏充幹事長だ。
河野太郎デジタル相はマイナ問題で失速し、世論調査の「次の首相」で1位になった石破茂氏は総裁選を勝ち抜けるだけの党内基盤がない。来年秋の総裁選でライバルとなりうる茂木氏を、総裁選に立候補しづらい立場の幹事長に置き続けるかどうかが焦点とされていた。

茂木敏充幹事長(本人Facebookより)
「茂木氏は安倍晋三元首相が首相時代、安倍氏に対し、『私は次の次の総理でいいです』と言っていました。安倍氏の長期政権の後は、短命で終わるだろうから、『次の次』で自身の長期政権を狙いたいという魂胆です。奇しくも茂木氏が想定していた通り、菅内閣は短命で終わり、『次の次』の岸田首相の長期政権が視野に入るなか、今年68歳になる茂木氏にも焦りはあるはず。
岸田首相は、総裁選出馬への意欲を隠さず、スタンドプレーが目立つ茂木氏の交代も検討しましたが、結局は続投させる方針のようで、自らの総裁選再選のためにも、幹事長にとどめおくことにしたかたちです」(自民党関係者)
「エッフェル松川」「ブライダルまさこ」「ドリル優子」…女性枠の行方は?
ほかにも、内閣改造をめぐっては読売新聞が国民民主党との連立政権の検討を報じ、動向が注目された。
ただ、他社の政治部記者は冷ややかにこう語る。
「国民民主との連立を画策する自民党幹部の意向を受けるかたちで、読売新聞の与党担当記者が記事を書いたそうです。ただ、今の時点で連立政権に参加しても、自民と国民民主の議員同士が争っている選挙区の調整など難題が多いことは、国民民主の玉木雄一郎代表もわかっています。さすがに自公国の連立政権は、現実的ではありません」

岩手県議会議員選挙の応援にかけつけた玉木雄一郎代表(本人Facebookより)
また、現在2人の「女性枠」が誰になるのかも注目だ。
「現在、経済安保相を務める高市早苗氏は、後ろ盾の安倍氏亡き後、閣外に出しても首相が恐れる存在ではなくなりました。総裁候補としての道はほぼ閉ざされたといっていい。
外務官僚出身で、経歴は申し分ない松川るい氏は、“エッフェル騒動”で失脚。弁護士資格をもつ森まさこ氏も、ブライダル補助金をめぐるツイートが物議をかもしたのに加え、娘やその友人を官邸に招いていたことも発覚し、炎上中。

松川るい参院議員がX(旧Twitter)に投稿した画像
知名度のある小渕優子氏は、9月10日号の『サンデー毎日』のインタビューで首相待望論について水を向けられ『腹をくくる瞬間がまた来るだろうな』と発言していますが、『ドリル』のイメージがいまだ付いて回っているのが悩みの種です」(全国紙政治部記者)
となると、女性閣僚の有資格者は誰か。
「大臣待機組の女性の中では、参院で当選3回の三原じゅん子氏。彼女は無派閥ですが、菅義偉前首相に近く、菅グループへの配慮にもなるとみられています。ほかに、鈴木宗男氏を父にもつ鈴木貴子氏らの名前もあがっています」(同)
失言・スキャンダル予備軍の入閣も?
一方、内閣改造でリスクとなるのが、大臣としての資質や能力に欠けるものの、期数を重ねたため派閥の推薦で入閣する新閣僚の失言やスキャンダルだ。閣僚経験のある人材を登用すれば、安定感は増すものの、大臣待機組を処遇しなければ、党内で不満がたまる。
そのため、内閣改造のたびに期数を重ねた待機組が入閣してきたが、彼らの失言やスキャンダルが政権の足を引っ張ることも珍しくない。
「“汚染水発言”で炎上した野村哲郎農水相は、参院4回生で大臣ポストが回ってきましたが、本人は農協出身で農水一筋で来たため、『農水相以外やらない!』と強く主張。当初はほかのポストが検討されていましたが、所属する茂木派が官邸に頼み込んで交渉し、何とか農水相ポストに就くことができました。それなのに、処理水問題で不用意な発言をし、官邸は大激怒。交代が既定路線です」(全国紙政治部記者)

第90回日本ダービーの表彰式に出席する野村哲郎農水相(写真右、本人Facebookより)
派閥への配慮をめぐっては、安倍派の処遇も焦点だ。
安倍派の議員からは
「前回の改造では、安倍氏の死去直後で動揺する安倍派に配慮した総理が、官房長官や経産相、政調会長など重要ポストをあてがったが、今回は安倍派の『集団指導体制』が決まって初の改造。松野博一氏や萩生田光一氏は重要ポストで引き続き起用されるだろうが、会長不在の派閥の大臣待機組にまで、ポストが十分に回ってくるか心配だ」との声も上がる。
かつて、首相になってやりたいことを聞かれ「人事」と答えていたという岸田首相。「味方」をつくり、最も重要視している来年秋の総裁選再選を実現できるか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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