〈トー横キッズの夏休み〉一斉補導も効果なし?「酒の回し飲みで“喉クラミジアクラスター”が発生」若者の間で広がる性病と“貢ぎ体質”の少女たち
歌舞伎町、新宿東宝ビル(TOHOシネマズ新宿)横のシネシティ広場にたむろする若者たち、通称「トー横キッズ」。今年4月、キッズの集まる一角にアミューズメント施設、東急歌舞伎町タワーがオープン。訪日外国人を含めて多くの観光客が集まるエリアとなったが、彼らが“駆逐”されることはなかった。世間の学生は夏休みに突入。トー横キッズたちはどのような夏を送っているのか。現地で取材した。
警視庁による一斉補導も効果なし
メディアを通して一般にも広く知られるようになった「トー横キッズ」。ただ、たむろしているだけならここまでの騒ぎにはならない。売春、性犯罪、オーバードーズ(薬の過剰摂取)、未成年の飲酒や喫煙など、そこには犯罪・違法行為が横行しており、社会問題化して久しい。
学生の夏休み前の7月15日午後11時から翌未明にかけて、警視庁はトー横エリアに警官約120人を動員。そこにいた少年少女たちの一斉補導を行った。
「裏モノJAPAN」の編集者で歌舞伎町ウォッチャーでもある仙頭正教氏は言う。
「たくさんの警察官が一斉にトー横に現れて、路上にいる若い子たちに声をかけていました。そして、東京や関東近郊を中心に、遠いところでは宮城から来ていた13歳から18歳の男女26人を“深夜徘徊”で補導しました。
補導された子どもたちの中には行方不明届を出されていたり、市販薬を酒で飲んでしまったと思われる状態で救急搬送された少女もいたようです」

シネシティ広場。現在はトー横という呼称のほうが認知度は高い
この一斉補導から約2週間後、記者が現地に向かってみると、相変わらずたむろする少年少女の姿は多く、そこには今までと何も変わらないトー横の日常が広がっていた。
ガードレールにもたれる少年に声をかけると、自らを「今のトー横の王」と名乗る18歳の少年は、日々の生活をこう説明してくれた。
「埼玉出身ですが、高校卒業後に家出してきました。
寝るとこは歌舞伎町のネカフェやラブホなど毎日違います。そのお金ですか? 僕のことを推してくれる女の子が連れてってくれるんです。なんならお小遣いをくれる子もいますよ。
これは“顔面”、“性格”、“色恋”の3つが揃ってなきゃできません(笑)」
トー横キッズの間で広がる性病
「トー横の王」を名乗る者は、これまでも複数名が存在した。特に世間を騒がせたのが、2022年1月に女子中学生に淫らな行為をして警視庁に東京都青少年健全育成条例違反容疑で逮捕された当時24歳、住所不定無職の男だ。
どうやら“現在の王”であるらしい彼も、似たような行為に及んでいるようだ。
「いやー、僕は女の子が嫌がることは無理強いしてませんよ。でも一緒にネカフェやホテルに行ったら、することしますよね」

「トー横で知人が公開フェラをしているところを撮った」と記者に自慢げに見せるトー横キッズ
王と関係を持つことは少女たちにとってステータスなのか。それにしても、ここに集まる少女たちの貞操観念の低さには改めて驚かされる。
数名の男女でたむろしていた18歳の専門学生のミカ(仮名)は言う。
「トー横“界隈”の男の子との“既セク(きせく。関係を持った男性の数)は2人です。
トー横で飲んでるとその既セクの男の子がまたがってきて、『カスタマ(カフェ。トー横近くにある個室ネットカフェ)行こ~』って誘ってくるんです。いわゆる“セクアポ”ですね。
トー横の男って基本おごられ体質だから代金は私が払うんですが」

避妊はもちろんしていないという。
「だって相手が『つけ方わからない』とか『ゴム持ってない』って言うから。だから結局“生外”(膣外射精)になっちゃうんです。
まだ性病にかかったことはありません。気づいてないだけなのかもしれないけど(笑)。
でも、トー横界隈ではかかってる子も多いです。『あそこカユい』とか、よく聞きますし」
酒の回し飲みで喉クラミジアクラスター
同じグループにいた15歳のアイカ(仮名)は性病にかかった経験がある。
「地元が神奈川なんで、もともとは“ビブ横”(横浜ビブレの横の通路)にいたんですが、今年2月にトー横に来て、春くらいにリアコ(リアルに恋してる人)に処女を奪われて性病もうつされました!
ヤった3日後に発熱と、喉まで痛くなって、特にヤバかったのはアソコの痛み。最初はちょっとかゆかっただけなのが、だんだん熱くて痛くて歩けなくなり……。
母親と病院に行ったら淋病と性器ヘルペスと診断されました」
そんな思いをしてもまだ、トー横に通うことはやめないらしい。

「そのリアコとの関係はまだ続いてますから。
でも、あいかわらずゴムなし。今も性器ヘルペスにかかっては治しての繰り返し。
リアコには貢いでるので、出会い系サイトから客を引いたり、そこ(大久保公園)に立つこともあります。もちろん客相手のときはゴムつきですよ」
なぜかトー横の少女たちは貢ぎ体質にあるようだ。高校3年生のユウコ(仮名)もこう話す。
「私は去年の9月ごろからトー横に来てますけど、いつの間にかトー横にいる数名の男の子たちの宿メン(一緒に泊まるメンバー)になってて、彼らはいつも“生外”です。
でも性病にかかったことはありませんよ。宿泊代は私が払ってます」

金銭を負担させられるうえに妊娠や性病のリスクも負わなくてはいけない。それなのに、彼女たちには自分の身を守る意識が皆無のように見える。
19歳のアイコ(仮名)の言葉から特にそれを感じた。
「厄介なのは喉クラミジアです。トー横界隈で鏡月やブラックニッカを回し飲みしてるとみんな感染しちゃうんですよ。マジで“喉クラミジアクラスター”(笑)。
性病はまあ、かかったら治せばいーし。あんま深く考えてないです」

7月21日に行われた記者会見で小池百合子都知事は「トー横に集まってくる若い人たちをどう守るか。速やかに具体的な対策を講じていきたい。これまでにない対応も考えていかなければならないのではないか」と述べた。
彼らがトー横を離れ、家路につく日はいつかくるのだろうか。
中編では、トー横キッズの名古屋版“ドン横”に集まっていた若者たちを取材。再開発で閉鎖されたドン横、居場所を失った彼らの今をお届けする。
撮影・取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班
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