「まだ会えませんか」「次は必ず幸せにします」別れる度に紗菜さんの名前にまつわるアカウントを作成しインスタで復縁迫る…容疑者の元彼女は「イタイというかキャラかわったな、と」〈横浜・女子大生刺殺〉
横浜市鶴見区の大学1年生、冨永紗菜さん(18)が刺殺された事件で、殺人容疑で逮捕された伊藤龍稀容疑者(22)。小学生時代から子役女優として活躍するなど華やかな世界で育った「彼女」と出会い、独占欲を暴力でコントロールしようとして捨てられた「元彼」は、最愛の「元カノ」を取り戻そうともがいた末に、最悪の結末を選択した。そのいきさつが、取材で明らかになった。
チャラかった中学時代、彼女がいても他の女の子を口説いていた
伊藤容疑者が複雑な家庭環境で育ち、高校中退を機に夜の街の「住人」となり紗菜さんと出会ったことなどは、親友らの話として、♯2で報じた。
そこでは中学時代に付き合っていた女性と別れることになり、精神的に凹んで大変だったことや、母親から捨てられるかのごとく家族と別れた後、アルバイトを転々としたことなどを「傍証」として伝えたが、取材を進めるうちに当事者たちの生の声を聞くことができた。

殺害された紗菜さん(本人SNSより)
伊藤容疑者が横浜市の中学校に通っていたころ、3カ月ほど交際していたという女性は、当時をこう振り返った。
「中学校時代の龍稀くんは全然暴力的な面もなくて、むしろとても優しかったです。『水族館に遊びに行ってきた』とお土産を買ってきてくれたり、デートの誘いも頻繁で、気を遣ってくれてた感じです。すごいイケメンでモテてたわけではないのですが、宇都宮からの転校生ということで目立ってモテてた時期がありました。交際するきっかけは、龍稀くんに『好きだ』と告白されたことでしたけど、付き合うといっても中学生だったので、川崎とかに遊びに行ってカラオケをしたとかそれぐらいでした」
当時から独占欲が強かったのだろうか。
「そんなに一緒に過ごした時期があるわけじゃなかったけど、ほかの男と話さないでとか言われたこともなかったし、独占欲が特別強いわけでもなく、普通の感じだったと思います。ただ、龍稀くんは私と付き合っていた当時も、学校の他の子を口説いたりするLINEを送っていました。友達から教えてもらって発覚し、私から別れを切り出すと『そうなんだ』という感じであっさり終わりました。別れるときはこちらに執着していたわけではなかったのに、その後も『遊びたい』と連絡がきたこともあったし、私のほかにも何人か付き合っていた人もいました」
当時はまだ、少し調子にのっていたチャラい中学生、という感じで「ヤンキー」でもないし、暴力を振るうこともなかった。女性が続ける。

チャライ中学生だった?伊藤容疑者(知人提供)
「中学時代の龍稀くんは友達とケンカをすることもなかったし、覚えているのはサッカー部だったということくらいですね。中学卒業後は何をしてるかも知らなかったけど、一時期SNSで繋がったことがあって、そこではちょっとメンヘラな感じがしたので『変わったんだな』とは思っていました。龍稀くんのインスタのストーリーでは、どこかの部屋で紗菜ちゃんと一緒にいて、ノロケ話をしたりツーショット写真を載せたりしていました。普通にお互いに好きなんだと思っていました」
「一生守っていく」みたいなセリフもよくインスタにあげてた
伊藤容疑者は紗菜さんに相当入れ込んでいたようだ。インスタグラムのアカウント名にもそれは表れていた。
「龍稀くんはだいぶ好きだったんじゃないですかね。インスタのアカウント名も数字で3737だったかな、『サナサナ』みたいになってましたし。『一生守っていく』みたいなセリフもよくあげてたので、イタいというか、キャラ変わったなって思ってました。その後はインスタのフォローを外しちゃいましたけど、私が繋がってたときはもっと投稿数があって、なんか別れたりくっついたりを繰り返している印象を受けましたよ」(前同)

伊藤容疑者(本人SNSより)
SNSでメンヘラチックなやりとりをさらすようになった伊藤容疑者と紗菜さんの2人がリアルで出会ったのは、東京・蒲田の飲食店だった。系列店で働く2人の知人女性はこう証言した。
「2年前の夏くらいに龍稀さんと紗菜ちゃんは同じ店で働いていました。時期にすると数カ月くらいのもので、私が知る限りは2人が付き合い出したのはそのころだと思います。従業員同士の交際は禁じられていたので、2人ともお店を辞めました。私はもともと龍稀さんの友人たちと繋がりがあったので、彼に誘われて横浜のキャバクラで一緒に働いたこともありました。龍稀さんはすごいモテてましたよ。可愛いというか、アイドルっぽいところもありながらワイルドさもあり、すごくイケメンでしたから」
同じ店で働く紗菜さんの知人女性は、伊藤容疑者の「危ない」一面を垣間見たことがあったと言う。
「紗菜さんは可愛くていい子でしたね。龍稀さんとはインスタグラムでは繋がっていて、紗菜ちゃんと揉めた時によく『あの女はヤバい』と彼女を貶めるようなインスタライブをやっていました。2人がどういう付き合いをしてたか詳しくは知りませんが、DVをする人とか独占欲が強い人って自分は浮気してもいいけど相手はダメ、みたいな人も多いし、そんな感じだったのかもしれないですね。私も紗菜ちゃんが別れたがってたという話は聞いていたので、こんなことになって残念です」

伊藤容疑者が作成していたインスタ
そのインスタグラムについて、伊藤容疑者の中学時代の友人はこう指摘する。
「龍稀はインスタのアカウントを持っていて、この3737って数字のやつは、一番最近のやつかひとつ前のやつですね。これってもう紗菜さんに対してDMを送るためだったりアピールするためのアカウントで、それがいくつもあるんですよ。自分も全部フォローしてるわけじゃないですけど、『ソーリーサナ』ってアカウント名もありましたから。何とかしてよりを戻すために、そうやって紗菜さんにいろいろ伝えようとしてたんだと思います』
母親のことが大好きだったのだが…
友人は慮り、こう続けた。
「1年ほど前に龍稀と話したときは、紗菜さんと横浜で同棲していると言っていました。昔から龍稀のことは知ってます。龍稀の家は複雑で、あいつ自身はマザコンかって思うくらい母親が好きでした。ただ、その一方で母親が再婚することに関して弟や妹のことを考えると、母親のことを許せないという気持ちもあったようでした。そういう背景もあって家出を繰り返しながら友達の家を泊まり歩いてました。ただ、中学時代から誰かに暴力を振るっているのは見たことありません。周りで友人たちがケンカをしていても、龍稀は『殴るのも殴られるのも嫌だから』と加勢することも一切ありませんでした。それだけ暴力を嫌がってたのに何やってんだ馬鹿野郎って思います」

中学時代の伊藤容疑者(知人提供)
高校を中退後に伊藤容疑者がアルバイトを始めた立ち飲み屋の店長は、取材を始めたときはまだ事情をよく飲み込めていなかった。だが、話すほどに感情がたかぶったのか、涙をこらえるのに必死だった。
「え? ハルキ? 嘘だろ。殺人事件のニュースってあのハルキなのかよ……。もちろん知ってるよ。あいつが高校中退してからウチにバイトに来ていたから。当時は携帯代が払いたいってことで働きにきていて、週3〜4のシフトで出ていた。まだ、未成年だからってバイトが終わった後にはオーナーが家まで送りに行っててさ。接客も明るくて愛嬌があってさ、当時まだ高校生の歳なわけだから客にも可愛がられていた。笑顔が可愛らしいやつだったんだよ。ほんと仲間思いでいいやつだったんだ。
ウチでは1年くらい働いてたけど母親が再婚して山形に行くとかで、ハルキもそれについて行くということでバイトはやめたんだ。家庭環境が複雑だという話は聞いていたよ。なんていうか、妹と弟をいつも守ろうとしてる感じがあってね。人の家庭の話を詳しくは言いたくないけど、再婚とかあったし妹と弟のことを思って母親とぶつかっていた部分もある。でもあいつ自身は母親のことがすごい好きだったから悩んでたように見えた」
しかし3年ほど前、「ハルキ」は山形から横浜に舞い戻ってきた。
「3年前くらいだったかな。山形から戻ってきたあいつに『飲み行きましょう』って誘われて、一緒に飲んだんだよ。そのときは『店長やってます』って頑張ってる感じだった。そうか……。ハルキがあの事件を……。仕事が終わったら今日は飲みに行こうと思ってたけどショックでそんな気になれないわ。すごく慕ってくれて俺も可愛がってたやつだから」
インスタを通して、紗菜さんとの関係を修復したいという必死の気持ちを伝えようとした「ハルキ」。だが、「ハルキ」は彼女を自らの手で消し去ってしまった。赦しは二度と、もらえることはない。

子役時代の紗菜さん
※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班