2014年、自身の関連政治団体の収支報告書に虚偽の記載があった事件で、事務所関係者がハードディスクをドリルで破壊していたことが発覚し、「ドリル優子」のあだ名が定着した小渕氏。しかし、ここにきて政界における流れが変わり始めている。
「若い力が日本を守る時期にきている。その先頭に立つのが小渕さんだ。後ろからしっかり支えたい」
6月25日、前橋市で開かれた小渕氏のパーティーで、そう小渕氏を持ち上げてみせたのは、首相の最側近として知られる木原誠二官房副長官だ。
「日本を守る先頭に立つのが小渕さんだ」“ドリル優子”が夏の人事で完全復活!? 森元首相も「華やかな舞台にもう一度」。行く手を阻むのは「自分が一番」の茂木幹事長か
夏にもあるとささやかれる内閣改造・自民党役員人事でその処遇が注目されているのが、小渕優子組織運動本部長だ。ハードディスク破壊騒動で国民からの信を失った“ドリル優子”が完全復活!? しかし、もちろん一筋縄ではいかないようだ。
首相最側近や森元首相が期待も、「ドリル」事件の影響は消えず

木原誠二官房副長官(本人facebookより)
夏にも内閣改造・党役員人事があるとみられているなかで、首相の最側近が小渕氏にエールをおくった意味について、全国紙政治部記者はこう解説する。
「小渕氏が所属する茂木派を率いる茂木敏充幹事長への牽制でしょう。
茂木氏は首相の座を狙い、児童手当の所得制限撤廃を国会で提案するなど、スタンドプレーが目立ちます。『茂木氏を幹事長から降ろし、代わりに同派閥の小渕氏を重用することもできる』という官邸からのメッセージではないでしょうか」
小渕氏をめぐっては、最大派閥・安倍派に絶大な影響力をもつ森喜朗元首相も14日に「小渕氏を華やかな舞台にもう一度登場させたい」と発言し、重要ポストでの処遇に期待を示した。
「まるでマリーアントワネット」との呆れの声も
そんな小渕氏にとって、飛躍の足かせとなっているのが、2014年に起こった「ドリル」事件だ。
「小渕氏の関連政治団体である後援会の収支報告書で、観劇会を開催した際の収入を支出が大きく上回るなど、虚偽の記載が多数発覚。結局、元秘書2人が政治資金規正法違反で有罪判決を受けました。
問題が明るみになった直後、事務所関係者が証拠となるハードディスクをドリルで破壊していたことで、世間に大きな衝撃を与えました。
いまだに“小渕氏=ドリル”のイメージは根強く残っています。それだけに、小渕氏を重要ポストで起用するならば、国会で野党の追及を受ける閣僚ではなく、幹事長や政調会長、総務会長といった党幹部が規定路線です」(前出の政治部記者)

※写真はイメージです
イメージの払拭に苦しみつつも、着々と、復権に向けた足場を固めつつある小渕氏。地元・群馬県ではドリル事件の後も「姫」と呼ばれ続けているという。
「元首相の娘という家系ゆえの呼び名です。ただ、ドリル事件の際には『後援会の幹部が次々に検察に呼ばれ、長時間の聴取を受けているというのに、後援会にお詫びの電話一本もしてこない』というぼやきも聞こえており、『まるでマリーアントワネットみたいに図太い』という皮肉も込められています」(地元記者)
そんな呆れ声が上がっても、いまだに地元でも永田町でも首相候補とされるのは、「姫」の「ジジ殺し」の才覚ゆえのようだ。
「元首相の娘ですが、気さくで明るい。お酒にも強く、宴席では下ネタにも『ウケる~!』と大笑いするなど、おじさんたちの心をつかむのがうまいのです。先日亡くなった青木元官房長官や森元首相など、大物にもかわいがられてきました」(自民党関係者)
総裁選へのハードルがひとつなくなるも
いまだ人望のない茂木幹事長
一方、女性初の首相への道を進む「ドリル優子」をおもしろく思わないのが、小渕氏も所属する茂木派の長、茂木敏充幹事長だ。
全国紙政治部記者が語る。
「茂木幹事長は虎視眈々と『ポスト岸田』を狙っています。茂木氏をよく思っていなかった青木元官房長官が6月11日にこの世を去り、茂木氏が総裁選に出るためのハードルはひとつなくなったかにも思えます。
しかし、夏の人事で小渕氏が幹事長など党四役に就くことがあれば、同じ派閥の茂木氏が幹事長に留まれる可能性は低い。茂木氏が幹事長を外されたら、露出が減り、存在感も低下するのは必至です」

茂木敏充幹事長(本人facebookより)
ただでさえ、茂木氏は派閥内外を問わず、人望がないと指摘されてきた。
「とにかく上から目線で、パワハラ気質。マスコミ幹部と会食した後には『知識の差を見せつけてやったよ』と若手の番記者に満面の笑みを見せるなど、“自分が一番”の人です」(前出の全国紙政治部記者)
茂木派関係者も「茂木派の中で、本気で茂木幹事長を首相にしたいと思っている人はほとんどいません。青木さんの影響力が強い参院の茂木派も、茂木幹事長とは距離があります。
それでも、参院の茂木派は、青木さんという重しがあったからこそ、青木氏の影響力が残る茂木派にいました。今後は、茂木派の参院側の一部が、茂木派から離脱することもあるかもしれません」と危惧する。

小渕優子氏(共同通信社)
「日本の先頭」に立つのは、“自分が一番”の茂木氏か、“ドリル優子”か?
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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