調べによると金子容疑者は20日午後7時45分ごろ、男性と娘を殺害しようとして自宅に火をつけて全焼させ、男性を殺害するなどした疑い。1階部分に灯油をまいてライターで火をつけたとみられる。
出火後は火の勢いが強く、消防が現場に到着するまでに近くの住人が複数で協力、ハシゴを使うなどして娘と金子容疑者を2階のベランダから救助する一幕もあったという。現場は真岡鉄道真岡駅の東約5キロの、田園と住宅の混在地域。
火災当日、救助にあたった近所の男性はこう振り返った。
〈真岡・89歳老人狂気の炎〉「娘の内縁夫が気にくわなかった」「生きてるうちは結婚は認めない」老父が灯油をまき自宅を放火…内縁夫は「うわー」という声とともに煙に巻かれ見えなくなった…
栃木県真岡市島で6月20日夜、住宅が全焼して男性1人が遺体で見つかる火事があり、栃木県警捜査1課と真岡署は23日までにこの家に住む金子誠容疑者(89)を現住建造物等放火と殺人などの容疑で逮捕した。同住宅には金子容疑者の娘(61)と60代の内縁の夫の男性の3人で住んでおり、遺体はこの内縁の夫とみられる。娘も顔やのどに重傷のやけどを負った。金子容疑者は「自分も死ぬつもりで火をつけた。(娘の内縁の夫が)気に入らなかった」などと容疑を認めている。
内縁夫が「まず女性を助けてあげてくれ」と…

全焼した金子容疑者の自宅(撮影/集英社オンライン)
「火の手が上がっているのに気づいて近づくと、2階のベランダに60代の夫婦がいて、火事だというのに妙に冷静で、逃げようとしていなかったんです。どなたかが持ってきてくれたハシゴをかけてベランダまで登ると、男性(内縁夫)が『まず女性を助けてあげてくれ』と言うのですが、女性(娘)の方はその場でうずくまって逃げようとしないんです。
そうこうしているうちに、煙がすごい勢いで充満してきたので一度下に降り、煙が収まったところで再度助けに向かうと女性がベランダから少し身を乗り出していたので、引きずり下ろしました。男性の方は『うわー』という声とともに煙に巻かれて姿が見えなくなりました」
それからしばらく後、1階から金子容疑者がぼうぜんとして出てきたという。男性が続ける。
「おじいちゃんは足腰が弱くて普段は歩行器を押しながら歩いていたほどです。おとなしくて近所付き合いもないし、とてもあのおじいちゃんがこんな事件を起こすとは思えないのですが、 現場に来ていたレスキュー隊員の方に聞いたら、おじいちゃんは灯油臭かったそうです」
近所の人の話では、火事の1週間ほど前に娘夫婦がケンカをして内縁の夫が出ていき、その夫が帰ってきた当日に火災があったという。
「火災が起こる直前に、金子さんの娘夫婦と思われる男女の言い争う声が聞こえ、なにごとかと思って外に出たらもう2階から火の手が上がっていました」(隣家の男性)

全焼した金子容疑者の自宅(撮影/集英社オンライン)
金子容疑者は近くに本家があり、50年ほど前にこの住宅を建てて引っ越してきたという。近くに住む女性が語る。
「金子のおじいさんは元は左官職人で、娘も前に結婚していたんだけど、25年ぐらい前にその夫が亡くなったらしくてね。娘はこっちに戻ってきて、地元のゴルフカントリークラブの職員をしていて、そこで知り合ったのが今の内縁の夫。じいさんもそうだけど、去年亡くなった母親 が『私が生きてる間は、2人の結婚は認めない』と毛嫌いしていたみたい。母親 は名前で呼ばずに近所の人にも『居候』としか言わなかったね」
親族は記者の問いかけに…
また、金子容疑者は滑舌が悪く、地域でもコミュニケーションを取ることが難しい人物だったそうで、ごみ拾いや草むしりなどの行事には一切参加しなかったという。
「左官の仕事も『不真面目』と評判が悪く、左官組合から除名されたらしいよ。うちが壁をやってもらったときも、しょっちゅう自分の家と行ったり来たりして、サボってばかりだったから、さもありなんだけどね」(前出の隣人)

自宅には左官道具が残されていた(撮影/集英社オンライン)
「金子さんがうちで仕事をしていたのは、俺のオヤジの代のころだね。昭和50年から10年間ぐらいだったと思う。当時の金子さんはぽっこりお腹が出た肥満体型で、動きも遅くて仕事もあんまりしないというイメージ。だから、現場の家主さんからもよく思われていないことが多々あった。人柄はよくて周りからは『せいちゃん』と呼ばれてたけど、体型的にも左官には向いていなかったのと、仕事も好きじゃなかったんだろうね。不評が高じて、左官組合からも除名されちゃったんだよね」
金子容疑者の本家は姪夫婦が跡を継いでいた。取材に訪れたが、容疑者一家とは付き合いがまったくなく、いとこである娘と内縁の夫とのトラブルなどについても一切知らなかった。火事が起きてから現場にも足を運んでいないと言い、言葉少なにこう語るだけだった。
「事件のことはネットで見て知りました。とにかく驚いている。それしか言葉が出ない…。すみません…」
事件後、火災現場の自宅には離れて暮らす娘の子どもや親族が何度も訪れ、近隣住民に「迷惑をかけました」と謝罪にまわっていたという。
89歳の老人が暴走した引き金は何だったのだろうかー

栃木県警本部(撮影/共同通信社)
※「集英社オンライン」では、今回の事件や家族間にまつわる事件、トラブルについて取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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