「超ドSなんですよ。(メンバーに対して)死ね、ブス、おまえひとりいなくてもいいとか」
「らじらー!サンデー」(NHKラジオ第1)に出演したアイドルグループ乃木坂46のメンバー、早川聖来(22)の口から、こんな爆弾発言が飛び出したのは5月21日のこと。
告発の相手は長年、AKB48やHKT48などの演出・振り付けを担当してきたSEIGO氏。坂道シリーズとその関連グループ内で総合プロデューサーを務める秋元康氏の右腕とまで目されてきた人物だ。
さらに、容姿、人格否定の発言に留まらず、2022年8月に乃木坂46の掛橋沙耶香がライブ中に転落(現在も療養中)した事故にからめて「SEIGOさんは『沙耶香が事故ったのはおまえらのせいだ』『自業自得』などと発言した」と明かしたのだ。
世はコンプラ全盛の時代。この衝撃の告発にファンが騒然となったのは言うまでもない。ラジオ番組終了直後から、SNS上ではメンバーへの心配やSEIGO氏のパワハラを非難する声とともに、グループ運営側に詳細な調査を求める書き込みが相次いだ。
「アイドルグループ演出では稀有な存在」乃木坂46・早川聖来がパワハラ告発した演出家に惜しむ声。演出仲間は「指導熱心だからといって許されないし、今の子は繊細。自分も気をつけなければ…」
国民的アイドルグループ「乃木坂46」のメンバーが、自身が出演するラジオ番組で、グループのコンサート演出を務めるSEIGO氏の“パワハラ”を告発し、炎上。ファンから非難が殺到したこともあり、SEIGO氏は演出家を辞任した。しかし、関係者を中心に彼を惜しむ声も若干聞こえてくるのも事実だ。
告発されたSEIGO氏を擁護する声も

ラジオ番組でSEIGO氏のパワハラを告発した早川聖来(乃木坂46公式facebookより)
動きがあったのはその2日後。運営側が乃木坂46の公式サイトでSEIGO氏の辞任を以下のようなかたちで発表した。
「SEIGO氏との協議の結果、誤解を招く発言があったこと、及びSEIGO氏の意図とは異なる認識をしてしまったメンバーがいた事実等を鑑み、SEIGO氏より辞任の申し出があり、当社といたしましても7月から開催予定の真夏の全国ツアー2023より、演出家の変更を決定致しました」
騒動は乃木坂46以外にも波及。指原莉乃プロデュースのアイドルグループ、=LOVE(イコールラブ)や≠ME(ノットイコールミー)もSEIGO氏が演出を担当していたため、演出家を変更することになった。
早川の告発が事実ならば、この処遇もファンからの非難も仕方がないことだろう。
一方、グループ関係者からは「私が活動した9年間で(SEIGO氏が)そんな言葉を発しているところを見たことはない」という元乃木坂46メンバーの井上小百合がSNSで発言(本投稿は現在削除済み)したのを皮切りに、SEIGO氏を擁護する声も聞こえてきた。
「初期のハングリー精神がないメンバーもいる」
乃木坂46が所属するソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)関係者が言う。
「SEIGOさんは厳しく演出指導する人で、ときには口が悪いこともありました。でも、それはコンサートの成功を最優先で考えているから。
メンバーも『叱るときもちゃんと筋が通っている』と口をそろえて納得しています。乃木坂46が売れたのはSEIGOさんのおかげと考えているメンバーも多く、厳しい指導にもかかわらず、SEIGOさんは慕われている印象です。
グループ内では辞任を引き留める声が圧倒的です。ただ、SEIGOさんは『そう(パワハラだと)感じさせた自分が悪いので責任をとる』と身を引いてしまった。本当に残念です」
別のSME関係者もこう続ける。
「乃木坂46もデビューして12年。早川のことではありませんが、初期のハングリー精神が薄れ、人気グループであることにあぐらをかくメンバーも一部います。
それだけにSEIGOさんも演出担当として厳しい言葉を口にした面は否めません。発言内容に不満があるなら、まずは運営や代表に言ってほしかったのですが、そうできない空気をつくってしまったこちらにも非があります」

SEIGO氏が所属する振り付け演出の専門家集団USBのホームページに掲載されたSEIGO氏のコメント
かつての教え子たちはSEIGO氏についてこう擁護する。
「とにかく一生懸命な人なんです。メンバーとはギリギリまで演出をどうするか、真剣にやりあっていました。怒られることもしょっちゅうでしたが、それだけ本気だったということ。気が強いメンバーとSEIGOさんとやりあうこともありました。
ときには熱くなって『ブス!』となじられたこともありましたけど、私がいたころのAKB全盛期は体育会系な雰囲気だったこともあって、それも愛のムチととらえていました」(AKB48元メンバー)
「SEIGOさんを知る人は、彼が粗暴な人でないことをよくわかってる。たしかに怒って『死ね』とか、『殺す』とかの言葉を発することはありました。
でも、それも演出の意図を必死にメンバーに伝えようとしたなかで混じってしまった言葉。もちろん、手を出すことなんて一度もありませんでした」(HKT48元メンバー)
大人数アイドルグループの演出で
彼以上の才能を見出すのは難しい
掛橋の転落事故に関連した暴言については、SEIGO氏自身は否定しており、運営側も「調査の結果、そうした発言はなかった」と明言。前出のSME関係者もこのように擁護する。
「掛橋の事故の翌朝、ライブリハーサル前にSEIGOさんはメンバーやスタッフ全員を集め、『事故は自分のせい』と涙を流しながら謝罪していたんですよ。
そんなSEIGOさんが本当にあんな発言をしたとは思えません。私だけでなく、多くのメンバーやスタッフもそう受けとめているはずです」
ともあれ、結果的にSEIGO氏は演出家を辞任することに。
この影響について、前出のHKT48関係者がこう心配する。
「SEIGOさんは演出家として稀有な存在。アイドルグループのフォーメーション采配で、彼以上の才能を見出すのは難しい。
大人数グループにありがちな、メンバーに別仕事が入ったり、病欠などで空いた穴に臨機応変に対応できる能力もSEIGOさんが重宝されてきた理由のひとつです。
実際、HKT48の運営元がAKSからMercuryに変わったときも、空気を一新しようとSEIGOさんは一度演出から外されたんですが、やっぱり彼でないとダメということで呼び戻されています。
SEIGOさん辞任で今後のグループ活動に支障がでないか、心配しています」

ライブ中の転落事故で現在も療養中の掛橋沙耶香(乃木坂46公式facebookより)
そんな擁護の声があるとはいえ、SEIGO氏に反省すべき点がなかったとは言えない。演出家仲間は「告発した彼女のことを責めるべきではない」と前置きしたうえで、自戒も込めてこう話す。
「メンバーを指導する立場からすると、今回の一件はとても難しい問題です。
何度言い聞かせても成長しないメンバーにはついつい強く怒ってしまいがちですが、指導熱心だからといって、メンバーを傷つけかねない言動はすべきじゃない。
学生スポーツ界でも強豪の野球部やバレー部などの指導者が“度を超えた”指導で処分を受けていますが、SEIGOさんのケースもそれに近い気がします。
今の子は繊細なんです。自分も今後は十分に気をつけたいと思います」
SEIGO氏自身もそのあたりを自覚しているからこそ、自ら辞任を申し出たのだろう。
いずれにしてもアイドル界に激震が走った今回の騒動、今後の乃木坂46のパフォーマンスやグループの雰囲気に悪い影響が出なければいいが。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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