この事件は4月22日午前11時ごろ、買い物から店に戻った女性従業員が厨房で倒れている余嶋さんを発見して119番通報、搬送先の病院で死亡確認した。
〈防犯カメラ映像を入手〉ラーメン店主の組長銃殺動画。 店内に侵入する「黒ずくめの男」と「49秒の動画」…あまりに手際がよすぎる犯行の一部始終
神戸市長田区のラーメン店「龍の髭」店主で山口組系暴力団組長、余嶋学さん(57)=渡世名、湊学=が射殺された事件で、集英社オンラインニュース班は6月2日までに、犯行時刻前後に帽子を被った男が同店を出入りする様子をとらえた防犯カメラ映像を入手した。兵庫県警長田署捜査本部もこの映像に注目しており、犯行に関与した疑いがあるとみて行方を追っている。
襲撃時の防犯カメラ映像が出回る

殺害された余嶋学さん(本人SNSより)
目立った外傷もなく、当初は脳梗塞などの病死も疑われたが、銃弾が頭蓋骨を貫通せずに頭部に残っていることがわかり、県警は銃殺事件と断定。口径の小さな銃を口の中に突っ込んで発砲した可能性が高いとみて調べを進めている。
取材班が入手したのは、同日の午前10時50分21秒から始まる49秒間にわたる映像で、上下黒色の服に黒いニット帽子と黒い運動靴を履いた男が店に向かって歩いてくるところから始まる。

犯行時刻とおぼしき時間帯に店内に入る謎の男
男が黒縁メガネに白いマスク、両手に白色手袋を装着して手ぶらで店内に入る様子とともに、男の足音やドアを開閉する音、「よいしょ」といった掛け声までクリアに録音されている。映像は途中しばらく人の出入りも確認できないが、44秒ごろから同じ男が静かに出ていく様子が映っていた。
取材班はこれとは別に、通報後に駆けつけた神戸市消防局の救急隊が、余嶋さんを担架に乗せて運び出す様子を映した29秒間の映像も入手した。こちらには通行人や近所の飲食店従業員ら心配する人たちが映り込み、緊迫感が伝わってくる。
社会部記者は、このふたつの映像についてこう分析する。
とある事件に関わったヒットマンに似ているとの情報も
「映像はこの2、3日でヤクザの間ですごい勢いで出回っています。出どころも、出回らせる明確な意図もわかりませんが、顔の特徴も確認できるほど精緻な映像なので、犯人への何らかの警告とともに捜査当局に発破をかける意味合いも含んでいるとみられます。
映像に映る男の顔を見て、とある事件で指名手配がかかったヒットマンに似ていると話す者もいる。ただ、被害者の口に拳銃を突っ込んで射殺したにしては、手際がよすぎるのが気になりますが、この男が事件に関与している可能性は高いでしょう」

通報を受けて駆けつけた救急隊によって病院へと搬送される余嶋さん
余嶋さんは指定暴力団山口組弘道会傘下の「湊興業」組長。弘道会は山口組の当代、六代目の司忍組長を輩出している名古屋市内に本拠を置く組織だが、神戸市内は五代目組長の出身組織「山健組」の本拠だったこともあり、傘下は湊興業だけだった。
山口組は2016年に弘道会と山健組を中心にした内部抗争が激化、「神戸山口組」や「絆会」などに分裂し、抗争事件も頻発した。湊興業は組員のいない余嶋さんの「一人親方」でヤクザ組織としての実態はなかったが、同年に事務所の窓ガラスが割られるなど、余波に巻き込まれた経緯もあったという。
昨年6月には神戸山口組組長の自宅門扉に17発もの銃弾が打ち込まれる事件があったところだ。
社会部記者が続ける。

余嶋さんのお店で提供されていたラーメン(本人SNSより)
「湊興業に組としてのシノギは事実上なく、余嶋さんは上納金にも困って滞納していたという情報もあり、暴力団同士の抗争だけでなく借金など金銭トラブルが原因だった可能性もある。しかし、一連の山口組分裂騒動絡みでは実行犯が特定できない事件も多く、捜査は難航しているのかもしれませんね」
一歩間違えば、客や通行人らも巻き込んだ惨事になっていただけに、早期解決には兵庫県警の底力が問われる。
※「集英社オンライン」では、あなたの周りで起きたトラブル・事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com
Twitter
@shuon_news
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班