〈青森5人死亡火災〉「男の子が『ママ! ママ!』って必死に叫んでいた…」放火の疑い・92歳暴走老人の逆恨みか?「妻は病死、孫が自殺、一家離散、自宅は火事…なんで俺だけ…」80年にわたる遺恨とは
青森県六戸町犬落瀬五人役で13日未明、8人が住む木造2階建て住宅が全焼し、焼け跡から5人の遺体が見つかった。世帯主の左官業、十文字利美さん(68)ら4人は逃げ出すなどして無事だったが、義母を含む4人とは連絡が取れておらず、近くに住む親戚の男(92)が行方不明となっている。青森県警は亡くなったのは逃げ遅れた4人とこの男とみて身元の確認を急ぐとともに、現場近くに乗り捨てられていたこの男所有の軽乗用車に可燃性の液体入りのポリタンクがあったことなどから、放火の疑いがあるとみて調べている。
「助けられなかった…助けられなかったよ…」
調べでは、十文字さん宅は利美さんと妻(67)、妻の実母(88)、次女(39)とその夫(38)とその子供3人(16歳と13歳の男子、9歳の女児)の計8人家族。このうち連絡が取れないのは義母の和子さん(88)、妻・弘子さん(67)、次女・抄知さん(39)、孫の弥羽さん(9)の4人。行方不明の親戚は実母の兄のA(92)で、県警は放火の疑いがあるとみて14日、Aの車や自宅を家宅捜索した。

火災があった十文字家(写真/共同通信社)
現場は町役場や総合体育館などにほど近い六戸町の中心部で、田畑と住宅の混在する地域。13日午前1時ごろに出火し、同8分に逃げ出した孫(13)が「家が燃えている」と119番通報した。その後、家屋に隣接する車庫や物置など計3棟を全焼し、同5時51分に鎮火した。火勢の強さから、灯油やガソリンなど可燃性の液体を使った放火の可能性が高いとみられる。
「13日、深夜1時過ぎに変な物音がするっていって娘が外を見に行ったら、騒がしく帰ってきて『火事だ!』って叫ぶから飛び起きて自分も外に出たんです。玄関を出た瞬間から熱くて、道まで出たらもう肌がひりつくくらい熱かったです。火は屋根の高さまであって黒い煙がモクモクと上がってました。
すぐ近くにお孫さんがいて『ママ! ママ!』って苦悶の表情で必死に叫んでました。男の子だから泣いてはいなかったけど、大声でひたすら家族を呼ぶ姿は見ていられなかったです。少しして、利美さんの娘の旦那さんが帰ってきたんですけど、遠くから自分の家が燃えてるのが見えたそうで急いで帰ってきたものの、火の状態を見て慌てていました。
1時半ごろ消防車が到着したんですが、その頃、少し落ち着いたお孫さんが『助けられなかった…助けられなかったよ…』と震えながら漏らしてました」(近所の住民)
近所の人の話によれば、十文字さん方は古くからの農家で、仲の良い大所帯として知られていたという。
「利美さんは男前で、婿養子に入ってきて農業もやりながら、それだけじゃ食えないので隣町の土建屋で働いていました。畑ではお米とにんじんやニンニクを育てていて、少し畑をいじってから仕事に行くこともあった働き者です。奥さんは明るくて、会えば絶対に話す気軽な人でした。娘さんも私みたいなお婆ちゃんと嫌がらず話してくれる楽しい子でしたよ。野菜の収穫時期には採れた野菜を使って家族みんなでBBQしていました」(近所の知人)

抄知さんのフェイスブックより
十文字一家とは80年くらい前から大きな溝があった
別の知人もこう証言する。
「十文字さんご夫婦はとても良いご夫婦で有名ですよ。町内会にも参加してるんですけど、人当たりがいいからみんなと仲良かったです。2人ともお孫さんを相当可愛がっていて、利美さんなんか女の子のお孫さんが生まれたら『やっと女の子の孫ができた、ずっと女の子の孫が欲しかったから嬉しい』ってみんなに言ってましたからね。4月9日の日曜日も、足の悪い和子さんはお留守番でしたけど、十文字さん一家全員で、田んぼの苗代作りをしてました。お孫さんたち3人ともワイワイ楽しそうにしてたのに、そんな光景はもう2度と見れないんですよね…」
子どもたちの母である次女の抄知さんのSNSからは仲睦まじい大家族の様子が伺える。
プロフィール写真のトップ画像は頻繁に更新され、子どもたちと共に満面の笑みを浮かべている。家族揃っての初詣の写真は2年連続で神社の前で撮影され、地元の祭りにももちろん参加。雪が積もれば“かまくら”を作り、バイク好きだった父・利美さんとの団欒写真も掲載されていた。

抄知さんのフェイスブックに掲載された誕生日写真
一方で行方不明になっている親戚の男性Aは、5年ほど前に薪ストーブによる失火が原因で自宅が燃えたために建て替えている。十文字さん一家とは財産分与で揉めていたという情報もある。
「Aは昔、大工と農家をやっていたんですが、年取って大工を辞めて、そのうち農家も趣味で自分の分だけ作るようになってました。大根、ナス、トマト、色々作ってましたよ。ご近所さんには余った野菜を配ったりもしていた。Aと十文字さん一家は最近もよく会ってはいたと思います。彼の白い軽トラが十文字さん宅に停まってるのをよく見かけましたから。歩いてすぐの距離だけど、毎回車で来てましたよ。去年も野菜を十文字さん一家にあげてたのですが、まさかこんなことになるほど関係が拗れてたなんて思いもしなかったです…」(前述の近所の住民)
親戚で交流も深かったAだが、十文字さん一家とは80年くらい前から大きな溝が生まれていたという。親戚の一人が匿名を条件に取材に応えた。
「あそこはもともと家庭が複雑なんです。Aと和子はきょうだいですが、Aが幼少期の頃に母親は十文字の家に後妻として嫁いでます。Aからしたら幼少期に母親をとられたかたちです。さらに和子もまた十文字家の嫡男と結婚しました。
Aは若いときは日雇いをやりながら農業をやっていました。奥さんとも仲良く、息子もいて幸せそうでしたよ。それが変わっていくのは、20年前です。Aも可愛がっていた孫は高校から東京に出ていたと思いますが、大学の時に自殺しました。それからですね、いつもニコニコしていたAが周りに当たり散らすようになったのは…。孫が亡くなって息子さんがどうしてるのかはわからないけど、その後奥さんも亡くなって、家族はバラバラになってAは一人になっちまった。一人で年金暮らし、昔からのことを思い返してひがんじまったんじゃないかな。『なんで俺だけが』って…」

火災があった十文字家(近隣住民提供)
焼け跡から見つかった5人の遺体は刃物などの外傷はなく、司法解剖の結果、死因は4人とも焼死。幼い子どもとみられる女性1人は遺体の損傷が激しく焼死の疑いがあるという。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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