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“映り込みおじさん”のすさまじき嗅覚…「オールスター感謝祭」3年半ぶりの赤坂ミニマラソン映り込み大作戦に密着! 最大12時間待っても映り込みを止めない理由とは?
日本中が熱狂したワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。これを報じる各ニュース番組の中継映像に大胆に映り込み、「放送事故男」「映り込み師」として一部で話題になったのが増井孝充(たかみち)さん。前編のインタビューでは、彼が映り込みをする理由やWBCの“映り込み奮闘記”に迫ったが、今回は実際の映り込み現場に密着した。
ロッカーにはスポーツイベント用の衣装がズラリ
密着日は4月8日。この日は日曜日ということで、待ち合わせ場所の川崎駅構内には、家族連れやカップルの姿も目立つ。
その人混みの中から、侍ジャパンのユニフォームに袖を通す少し変わった風体の中年男性が、こちらに向かって笑顔で近づいてきた。

“映り込み師” 増井孝充さん
「今日はわざわざ来ていただき、ありがとうございます」
そう挨拶をした増井孝充さんは、いわゆる川崎駅周辺で”プチホームレス”化してまで映り込みに命を懸ける「映り込み師」だ。
合流してから、増井さんが向かうのは京急川崎駅近くのトランクルームにあるロッカー。決して大きくないスペースに自身の荷物や映り込み用の“衣装”が収納されている。野球、サッカー、ラグビーなど各種ユニフォームが掛けられており、ひと通りのスポーツイベントには対応できるようになっているのだとか。

ロッカーのサイズは横1メートル、縦2メートル程度。ここを拠点に映り込み活動を続ける
しかし、本日映り込みに行く現場はスポーツイベントではない。増井さんはウキウキと声を弾ませながら話す。
「TBSの『オールスター感謝祭』です。3年半ぶりにミニマラソンが赤坂で開催されるということで、路上応援が解禁されるんです。ここへ行けば絶対に映り込めます!」
映り込みのために最大12時間待ったことも
電車で30分ほど揺られて赤坂見附駅に降り立った増井さんは「赤坂5丁目ミニマラソン」のコースを入念に下見。時刻は午後3時、スタートまでまだ5時間もあるのに、だ。コースを1周したところで増井さんはある場所を映り込みポイントに定めたようだ。これはどのような根拠なのか。
「決め手は固定カメラの位置です。少しカーブするこの道なら確実にカメラに抜かれます。バイクの車載カメラにも映りやすいので、今日は絶対にイケますね」

固定カメラの位置から映り込みポイントを決定
まるで『プロフェッショナル 仕事の流儀』の取材をしているかのような錯覚に陥る。そのくらい増井さんは映り込みに対して“マジ”なのだ。
それにしても、スタートはまだまだ先なのに若い女性を中心に待機組の姿が目立つ。
「今回のミニマラソンはジャニーズタレントも参加するので、例年に比べて人は多いですね。早めに来ておいて正解でした」
ブルーシートに座る女性に増井さんは何時に到着したかを聞くと、彼女は朝10時から場所取りをしていると答える。しかし、増井さんは動じない。というか、張り合うように我々に話す。
「侍ジャパンの凱旋帰国のときは私も成田空港で10時間待ちましたし、このくらい当たり前ですよ。2019年にすしざんまいの(木村清)社長が初競りで大間のマグロを史上最高額で落札したときにも映り込んだんですが、そのときは終電で豊洲市場に行って12時間くらい待ちました」

本番に向けてエネルギー補給中、ギャラリーと談笑する。現場には様々な出会いがあるようだ
増井さんは声を掛けてきた男性と、ひとしきり会話で盛り上がる。映り込みを通して仲良くなった、いわば“同志”だという。
「あの方は『オールスター感謝祭』の常連なんですよ。ちょうど今日みたいにミニマラソンを待っていたときに仲良くなって。今回3年半ぶりの赤坂のミニマラソンということで、久々の再会を祝してました。こうした出会いも、ボクが“テレビの映り込み”を続ける理由のひとつですね(笑)」
「オールスター感謝祭」“映り込み大作戦”の結果は?
夕方5時すぎになって道路脇に続々とギャラリーが集まってくると、雨がポツポツと降り始め、風も強くなってきた。
みんなが体を震わせて待つなか、増井さんはただイスに座って一点を見つめている。静かに獲物を待つ猟師のように、その眼光は鋭い。

百戦錬磨の増井さんは雨が降っても動じない
沿道にカラーコーンが立ち、警備員らしきスタッフもズラリと並ぶ。夜8時を回った頃、いよいよミニマラソンがスタート。ミニマラソンは参加者の属性ごとに時間差で出走する。まず最初に「ハンデ0秒」でスタートするのは「一般女子」。ギャラリーたちの歓声とともに、一般女子枠のキンタローや村重杏奈といった有名タレントが続々と走ってきた。
目の前を走り抜ける瞬間、増井さんはあらかじめ作っておいた「祝マラソン」の文字が書かれたメッセージボードを取り出すと、固定カメラに向けて両腕を突き上げて大声で叫ぶ。
「マラソン開催、おめでとうございま~す!」

画面にしっかりと映り込むことに成功(右からふたり目。TBS「オールスター感謝祭」より)
以降も、福原愛、小島よしお、森脇健児といった有名人が走り過ぎていくたびに、カメラに向かってボードを見せつけていく。お笑いコンビ、モグライダーのともしげとはハイタッチを交わすことにも成功した。そうして30分足らずのミニマラソンは幕を閉じ、増井さんのこの日の現場は終了した。
そして、放送を見ていた人は気づいたかもしれないが、増井さんはガッツリ画面に映り込んでいた。さすがプロと言うべきか。今回の大成功に増井さんは今後の展望をこう語る。
「今後もどんどんテレビに映り込みたい。それで有名になって、エキストラではなく、いつか役をもらって映画に出演したい。またみなさん、テレビ画面でお会いしましょう!」
再び川崎の路上生活に戻っていく増井さんの後ろ姿は満足感に満ちていた。

川崎のお気に入り野宿スポットでアウトドアチェアに座って睡眠を取るという増井さん。ガッツリと映り込んだこの日はきっといい夢が見られたに違いない
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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