スーツにマウンテンジャケットを羽織った男性とアイドル風の若い女性が連れ立ってホテル街を歩くシーンから動画は始まる。これがショッピング街などであれば祖父と孫が買い物しているように見えたことだろう。
それほど年の差があるように見える二人が向かった先は1時間2800円~と看板が出ているレンタルスペースだった。男性が先に歩き、レンタルスペースのエントランスに入ったところで「はい!おじさん買春やめようね。買春だめだよ」と動画の撮影主が声をかける。
男性が反射的にカメラの方を振り向くと、マスク越しにも驚愕の表情を浮かべていることがわかる。一瞬、逡巡しカメラから逃れることを選択したのか、男性は一人でレンタルスペースに入り、カメラを遮るように扉を閉めた。
しかし、1分ほど間をおいて男性はレンタルスペースから出てくる。再度「だめっすよ買春は。おじさんだめっすよ。わかります? だめっすよ。買春だめっすからね。お願いしますよ」と撮影主が声をかけるも男性は無言のままその場を立ち去った。
「おじさん買春ダメっすよ」突撃動画で発覚! 少女とレンタルスペースに入館したのは杉並消防署幹部だった!「依願退職に追い込まれ、自宅ローンも残っている…」
公園で援助交際を行うことから通称“交縁(こうえん)”と呼ばれるようになったという歌舞伎町(東京都)の大久保公園。大久保公園と大久保病院の間の路地にずらっと並ぶ若い女性たちの姿を様々なメディアが取り上げ、毎日“立ちんぼ女子”を求める男性が後を絶たないという活況ぶりだ。それを見かねた迷惑系ユーチューバーたちが未成年買春撲滅運動を掲げた活動をはじめ、ついには1本の動画から杉並消防署の幹部が退職となった。

“立ちんぼ女子”があふれる大久保病院周辺(2023年2月撮影・集英社オンライン)
長年、歌舞伎町を取材してきた実話誌ライターが語る。
「10年ほど前までは大久保公園や西大久保公園、その近くの健康ランド付近などの“立ちんぼ”はヤクザが管轄していて、彼女たちが身体を売るごとに1000円~2000円ほどのみかじめ料をとっていた。当時はトラブルが起こればヤクザが出てくるので逆に揉めごとが少なかったのですが、今は個人が“立ちんぼ”をしているので管理も行き届かず、トラブルも増え、無法地帯のようになっています。さらに迷惑系ユーチューバーが『少女たちを狙う性暴力や性的搾取を許さない』をスローガンに、歌舞伎町界隈で撮影した買春撲滅動画をSNSに投稿をして自警団のようなことをやるようになりました」
消防署ではハチの巣をつついたような騒ぎになっている
こうした迷惑系ユーチューバーに呼応する形で現在は何人もの人間が未成年買春撲滅動画を撮影している状態だという。そして西大久保公園周辺で撮られたという冒頭の動画が元で男性は依願退職に追い込まれているという。動画の男性はいったい何者なのか。東京消防庁の関係者が眉をひそめて話す。
「SNSで動画が拡散されてから杉並消防署はハチの巣をつついたような騒ぎになっていました。映っていたのがよりによって署ではナンバー3以内にはいる幹部だったんです」

ハチの巣をつついたような騒ぎの杉並消防署(撮影・集英社オンライン)
周囲によれば普段は「実直な消防署幹部」の印象しかないという男性は、東京の郊外に新しく立派な一戸建てをかまえているそうだ。近隣住民が語る。
「お子さんが何人かいて年頃の娘さんもいました。みんな成人に近い年齢で実家からは出て行って、今は奥さんと二人で住まわれていると思いますよ。消防関係というのはチラッと聞いていました。旦那さんは以前は自治会の役員を務めていたこともあったと思いますよ」
東京消防庁の広報課に男性が依願退職した理由などことの経緯を問いただすと
「そういった動画があることは把握しております。ですがどのように把握したか、動画に対する見解は個人情報に当たりますので差し控えさせていただきます。問い合わせの男性が依願退職したかどうかについては担当者に確認すればすぐにわかります」
と言っていたのだが、取材依頼をした翌日「(すべての質問に)回答いたしかねる」と態度を硬化させた。
動画では金銭を渡す様子は確認できず、少女の年齢も明かされていない。消防庁としても『買春の決定的証拠ではない』と主張したいのだろう。だが、幹部が少女とレンタルスペースにはいった 代償はあまりにも大きく、この消防職員の幹部は依願退職したという。
義憤にかられた巡回ユーチューバーの危険性
買春目的の男性が後を絶たないという現在の大久保公園の状況はどうなっているのだろうか。4月某日、記者が大久保公園に立ち寄ってみると、明らかに女性を物色する男性の姿が5~7名ほど確認できた。驚くことにこれは12時~14時という真昼間の時間帯だ。その中の60代と思しきスポーツウエア姿の男性は2度、女性に声をかけたが交渉がまとまらなかったのか、そのまま大久保公園をひとりで後にした。女性はみなスマホをいじりながら立っているだけで、30分もするとその場を立ち去っていく。黒いスウェットに黒いミニスカートの若い女性に声をかけてみた。
「ひととおり今いる男性から声をかけられて値段や条件が会う人がいなければ、男性が入れ替わる時間までどこかで時間を潰してまた公園にくる子も多いですよ。迷惑系ユーチューバーが未成年買春撲滅運動と言って巡回するようになってからは前ほど簡単にお客を捕まえることができなくなりましたね。実際に『周りを警戒しながら声をかけたんだ』って怯えながら声をかけてくる男性もいました。こんなことやっていて言うのもなんですけど、女の子も動画に映りこんでしまってSNSで拡散されることには身バレの恐怖を覚えています」(19歳・女子大生)

大久保公園周辺のホテル街
その意味ではユーチューバーの活動が、ある意味で抑止力とはなってはいるようだ。
大久保公園で座っている20代・女子大生は迷惑系ユーチューバーの影響に困惑していた。
「冷やかしがすごく増えました、男性だけでなく女性の冷やかしもいるんです。少し離れたところに友達がいて、数分間女の子が立ってみたらどれくらい声かけられるのか、みたいな…それを動画で撮っているんです。あと以前、突撃されて動画を回されてパパ活に失敗した子がいましたけど、巡回しているユーチューバーたちがいなくなったのを見計らって戻ってきてましたよ。女の子によって違いますが、1回1万~2万円程度で交渉していて、お金のために自分たちからやっているのでそりゃ戻ってきますよね」(20歳・女子大生)
義憤にかられて巡回しているユーチューバーもいるのだろうが、中には面白半分という配信者もいるのだろう。だが、カメラを向けた男性が逆上し暴力を振るう危険性も考えられるし、歌舞伎町内には今もカメラに映りこむことを嫌う“ヤバイ”人種も多く存在する。
長年、歌舞伎町で商売をしてきた“事情通”が警鐘を鳴らす。
「一昔前は歌舞伎町のラブホ街でカメラをむけようものなら、それこそヤクザが飛んできてドヤされたり、場合によっては事務所に連れていかれることもあった。今じゃそこら中に防犯カメラがついているし、暴対法もあるからなかなか手出しはできない。ただ、あまりにも自分らのシマを荒らしたり、ナメた態度をするガキはそのうちイタイ目みるでしょう。それはきっとカメラのない死角で起こると思いますし、もちろんその瞬間は配信もできないでしょうね」
“立ちんぼ”の中には年端も行かないトー横キッズの女の子もいるという。ユーチューバーの暴走で新たな事件が起きないことを願うばかりだ。

大久保公園付近でたたずむ女性に声をかける男性(消防署幹部とは別人)
※「集英社オンライン」では、ユーチューバーにまつわる事件・トラブルについて取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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