男は京都市左京区の不動産賃貸業、宮本一希容疑者(37)。副業で懐石料理と舞妓座敷を組み合わせたディナーショーなどを催す企画会社を経営しており、そこでアルバイトをしていた立命館大3年生の浜野日菜子さん(当時21)に昨年10月、劇物のタリウムを投与して死亡させたとして大阪府警が3月3日、殺人容疑で逮捕していた。
同区の閑静な住宅街にある大邸宅で生まれ育った宮本容疑者は、近くのキリスト教系の私立小学校を卒業後、仏教系の中高一貫校を経て京都産業大に進学。大卒後は求人広告を柱とする東京の大手企業に就職した。
〈京都・女子大生タリウム殺人事件〉逮捕された“舞妓ビジネス”社長はバツイチ妻帯者・趣味は超高級美食巡り「何十万もする店を月イチで貸切っていた」
京都の花街で舞妓ビジネスを手がけていた男が知人の女子大生を殺害したとされる事件で、動機を含め、二人の関係性が取材で浮かび上がってきた。古都の資産家に生まれて何不自由なく育った男は、小学校の同級生と結婚したが離婚。再婚後に一児をもうけたが、趣味の美食巡りに女子大生を同伴するなどの放蕩を繰り返していた。
小学校の同級生と結婚したが…

和服姿の宮本容疑者
幼馴染が語る。
「いつも通学のバスで見かけましたが、小学校当時はおとなしいというイメージで、大きなお家に住んでいるということぐらいしか知りませんでした。ただ何かと話は聞いていて、20代の頃に再会した小学校の同級生の女性と結婚したことは知っています」
しかし、最初の結婚生活は長くは続かなかった。別の知人がこう証言する。
「一希くんは東京で就職した会社を辞めて30代で京都に戻り、『何もやる事がないなら』と親族に誘われて今の仕事を手伝い始めたと聞いています。帰郷の理由は知りませんが、その頃にデキ婚で再婚したようです。と言っても女にだらしない印象はなく、男性にも女性にも変わらず接するタイプです。舞妓ビジネスも舞妓が好きだからやっているのではなく、『古くからあるものこそ、一周回って新しくなる』という発想で積極的に仕掛けていた。親族の元で腰掛けでやっているわけではなく、舞妓をホテルに派遣して宿泊客向けに行う舞妓ショーも彼の発案でした。ホテルと契約する事でサブスク(定期)的に仕事が入るので、舞妓の稼ぎが安定すると胸を張っていました」

ピースサインをする宮本容疑者
超がつくような高級店で惜しげもなく散財
女優と見紛うような美女と再婚し、生まれた長女も可愛がっていた。仕事も順調な宮本容疑者の一番の趣味は、食べ歩きだった。しかも、超がつくような高級店で惜しげもなく散財していたようだ。知人が続ける。
「とにかく美食家で、一回に何十万円もするようなお店にも頻繁に通っていました。店のシェフやオーナーとも仲がよくて、美食仲間との交流が一番多いと思います。仲間内ではあまり目立とうとしないものの存在感はあって、ちょっと小賢しいタイプです。
雑誌にもよく取り上げられるような京都市内の高級中華料理店を月に一回貸し切って会食をしていて、そこでは一希くんの席も決まっていました。他にも来年まで予約が埋まっているような貸し切り専門の寿司や懐石料理など、とても一般人では食べにいけないようなところばかりでした。京都だけでなく金沢や福岡の超有名な寿司店にもよく足を運んでいたほどです」
宮本容疑者は自身のSNSにも美食巡りの写真を頻繁に掲載しており、被害者の浜野さんも件の高級中華料理店のオーナーシェフや、京都の隠れ家的な名店として知られる会員制バーの店員など、高級店の店舗関係者のSNSをフォローしていた。
浜野さんは自宅マンションで体調が急変する直前にも、宮本容疑者と複数の店で飲食したことがわかっており、府警は宮本容疑者が普段から浜野さんを美食巡りに同伴していたとみて調べを進めている。
浜野さんは大阪市出身で、大阪市内の中高一貫私立校を経て立命館大法学部に進学。京都市北区のマンションで一人暮らしをしていた。実家の近くに住む幼なじみはこう話す。
「小さな頃から知っていますけどとても真面目な子ですね。小学校は一緒の公立で、私立中学校に進学してからも制服のスカート丈は長くて派手なところがなかった。顔を合わせて挨拶する時も、ペコって会釈する感じでシャイな印象の子です。将来はイラストレーターになりたいと聞いていました」

小学校時代の浜野さん(浜野さん知人より提供)
謎めいた資産家の地元での評判
一方の宮本容疑者の実家は、謎めいた資産家だ。近所の人はこう話す。
「宮本さんのお宅については詳しい事はわかりませんが、一希さんの妹さんとおばあさま、親戚の方が茶道をされているのは知っていますよ。詳しい流派までは存じませんが、裏千家らしいです」
宮本容疑者の小学校の同級生の母親はこう気色ばんだ。
「宮本さんご一家は京都に根付かれた、ちゃんとした方ですよ。一希くんのお母さまもすごく品のある専業主婦で、今回のことでもご心痛だと思うと心配です。お婆ちゃんの介護も全部して、ご自分のお母さまのとこにも毎日行ってらっしゃいましたから。私が体調を崩した時にも、気にかけてお届け物をしてくださったり、お互い頂きものを届けあったりするような、ほどよい関係で付き合ってきました」

宮本容疑者が経営していたお茶屋
この「ママ友」は事件についてもこう憤慨する。
「私も息子から聞いた話ですが、宮本君から去年の11月に連絡があって『警察に携帯を持っていかれたので、ひょっとしたら警察から連絡あるかもしれないけど』と全部事情を説明してくれたそうです。自分からちゃんと女性の両親に連絡して、迎えに来てくれるまでずっと付き添って看病してあげてたんですよ。薬局で薬まで買ってあげたと聞いてます。だからなんで逮捕されたのか私たちも困惑してるし、警察には疑念しかない」
もちろん、捜査段階で府警が連絡を取ったのはこの同級生だけではない。京都市内在住の別の知人はこう証言した。
「昨年の11月ごろだったと思いますが、私にも警察から電話があり、一希くんに最近変わった様子はないかという趣旨の質問をされましたが、特になかったのでそう答えました。そのことを彼に伝えた際も『迷惑かけてごめんね。本当になんなんだろうね』と慌てている様子もありませんでした。少なくとも奥さんとうまくいってないという話も聞いたことなかったし、仕事で雇っている特定のアルバイトや舞妓に入れ上げてる様子もなかったので、事件のニュースを見た時は驚きました」
タリウムを飲まされ、21歳の若さで呼吸困難の末に苦しんで命を散らした被害者の無念はいかばかりか。「薬を買って浜野さんを介抱した」と弁明していた宮本容疑者は、警察の調べに対し「救急車を呼ぼうとしたが浜野さんに『喘息だから呼ばないで』と拒まれた」とも話しているという。
真相を明らかにすることでしか、それに報いることはできない。
※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。
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取材・文 集英社オンライン編集部ニュース班
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