〈千葉の名門高校でおきた窃盗事件の“動画”拡散〉教頭を直撃…「事件詳細」「動画消去の強要」「警察への口止め疑惑」全部聞いた! 教頭は疑惑を否定「(加害生徒には)謹慎を伝えてあります」
県内トップクラスの東大合格実績で知られる千葉県立千葉高校で、今年1月に入って校内で3件の現金盗難事案が相次いで起こった。生徒が撮影した動画によって加害生徒が特定され、事案は解決されたのだが、話はそれで終わらなかった…
教頭は疑惑を否定。
「正直、面白おかしく書かれたという印象です」
ネット掲示板やSNS上に拡散された、生徒が撮影したと思われる“決定的瞬間の動画”は、ジャージ姿でマスクをした男子生徒が誰もいない教室に入ってくるところから始まる。
男子生徒は机の脇にかかっているカバンをいくつか漁り、黒い財布のような物を取りだし物色。一通り物色し終えると、教室の後ろの引き戸から廊下の様子を窺い、人目を気にし腰を屈めながら教室から去っていく様子が収められている。
ネット上で拡散されている“情報”によると、千葉の県立高校で現金盗難事案が多発し、学校側が何も対策を取らないため生徒らが自主的にスマホを教室に設置。そこで撮影された動画には盗難事案の一部始終が記録されているという。
「ある有名インフルエンサーや一部ネットメディアによると(生徒が)撮影した動画を学校に提出したら『動画をすぐに消せ』『警察には絶対に言うな』と口止めされたといいます。
インフルエンサーのSNSには千葉高校の生徒からのDMも添付されており、学校側が盗難事案の“もみ消し”をはかったように感じました」(WEB編集者)

SNSで拡散された画像(一部モザイク加工しております)
ことの真相を取材すると、SNS上で事実とされていることとは異なる部分も浮かび上がってきた。
「正直、面白おかしく書かれたという印象です」と千葉高校の教頭は、今回の盗難事案について語る。
――動画にある盗難事案はいつ起こったのでしょうか?
「1月中旬のことです。1月に入ってから学校側としては3回の盗難があったと把握しています。いずれも財布から現金を抜かれるというもので、動画で発覚した以外の件は加害者についてはわかっていません。実は1月以前にも散発的にですが、盗難の事案は起こっていました。今回の動画の加害生徒から聞き取りを行っていますが、動画の窃盗のほか、去年にもう一件行っていたと言っていました。ただし、この件については盗られた被害者が気付いておらず、学校側としては把握していませんでした」
――被害金額はいくらだったのですか?
「金額については差し控えさせていただいています。ちょうどお年玉の時期ということもあり、被害にあった生徒にとっては大きな金額だと思います」
――動画を見ると教室には加害生徒以外誰もいませんが、これは放課後の出来事なのでしょうか?
「動画の件に関しては移動教室で生徒が他にいないタイミングでした」

――加害生徒は授業に出ていなかったということでしょうか?
「いえ。加害生徒については冬休み明けから休みがちになり、この日も学校は休んでいました。本来は学校にいないはずなのですが、学校にきて盗難を行ったということです。学校に来なかったのは病気ではなく気が向かないというか、理由については明確ではない部分もあります」
「生徒による自己防衛を指導していました」
――お金を盗ろうと思った理由については聞いてますか? 例えば加害生徒がいじめられたりしていて、その仕返しに盗ったとかそういったことは考えられますか?
「被害にあったのはクラスメイトなのですが、ふたりが揉めていたとか、加害生徒がイジメられていたということは聞いておりません。動機についてはお金が欲しかったと説明しています」
――加害生徒はどういった処分を受けていますか?
「具体的な日数については申し上げられませんが、謹慎を伝えてあります。また、加害生徒、被害生徒、保護者を交えて謝罪の場を設け、お金も返しているという状態です」
――今回の盗難動画はなぜ撮影されたのでしょうか? 学校が対策を講じなかったからだとネット上では言われています
「実は動画が撮影された前日にも同じクラスで財布からお金を抜かれるという盗難が起きました。この盗難に関しては今回の加害生徒は否定しています。以前から盗難への対策として学校側としては鍵付きのロッカーに財布を入れるか、常に財布を持ち歩くように生徒に伝えており、この時もそう伝えました。また、授業中に先生が見回り巡回するなどの対策をとりました。
警察には相談していましたが、われわれは警察のように捜査することもできませんし、学校の中に防犯カメラを設置するなんてこともできません。なので生徒が自己防衛するよう指導していました。動画を撮った生徒からは、こうした対策について不十分だというような申し入れはそれまでありませんでしたが、そう感じていたのかもしれません。動画を撮影した生徒がお金を盗られたことはありません」
――撮影された動画はどのようにして学校に提出されたのですか?
「移動教室の授業から戻って撮影した動画を確認し、すぐに担任に報告したと聞いております」

周囲を見回す少年(拡散されたSNSより)
――SNS上には「動画をすぐに消せ」や「警察には絶対に言うな」などの口止めや隠ぺいがあったと書かれていますが?
「そのような言い方はしておらず、動画を削除してくださいとお願いはしました。もし誤って外部に流出や拡散をさせてしまった場合、実際今回そうなっちゃってますが、盗った生徒の人権などを守ってあげられなくなります。
もちろん窃盗行為自体は許されないことだし、これは証拠の動画になるので学校に保管させてほしいと伝えました。申し訳ないけど端末からは消してほしいと保護者と本人にお願いし、削除してもらいました。撮った生徒は「消しました」と言っていましたので、それよりも前に誰かがシェアしたものが流出したのだと思っています。
「警察には絶対に言うな」というような高圧的な言い方は一切していません。学校はすべての生徒の人権と将来を守らなきゃいけない。そこは何に代えても守っていかなきゃいけないということで情報の拡散をしないでほしいと伝えました。学校で対応をきちんとするので警察には行かないでほしいということも伝えました。動画を撮った生徒については動画を消してもらった以外には何ら処分などはしていません」
――つまり今SNS上で展開されている口止めや隠ぺいしたという話は事実と異なるということでしょうか?
「学校側に至らなかった部分もあると思いますが、一部事実と異なると思います。生徒による盗難で慎重にならざるをえなかったために『学校の意図がきちんと伝わらなかった』という側面もあるかと思います。それ以降は盗難も起こっていませんし、現在は加害生徒の指導及び被害生徒へのケア等を行っているところです」

千葉高校のHP
「口止め事事はなかった」と異論を唱えたが生徒はどう思っているのか。
後編では、加害生徒の素顔と共に動画撮影をした当事者の声も詳報する。
取材・文/集英社オンライン編集部
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