私は行き場を失った犬や猫を、家族として一緒に暮らしてくれる引き取り手が見つかるまでの間、自分の家庭に引き取り、人と暮らすことに慣らす保護活動“一時あずかりボランティア”を個人でしています。
家族は動物好きな娘ののんちゃん、息子のけーくんと、そんなに好きではない夫、そして代わる代わるやってくる保護犬や保護猫たちです。
活動を始めたきっかけは、10年以上前、1匹の子猫を飼ったこと。その子は猫白血病で、たった2週間でこの世を去ってしまいました。ペットは亡くなったら虹の橋を渡り、飼い主が後に天国へ行くまで待っているとか。
でも、私は悲しくてたまらず、虹の橋を渡らないで、生まれ変わって私の元にまた来てほしい、と思いました。どんな姿でもいいから……。
そんな経験があったことから、公益財団法人の保護施設やブリーダー犬舎で働き動物たちと向き合ってきましたが、残酷な現状を目の当たりにしました。犬や猫は犠牲者。そう感じ、保健所から犬や猫を引き取り、 “一時あずかりボランティア”を始めました。
【漫画あり】保護犬たちとの悲喜こもごも。SNSで話題の「たまさんちのホゴ犬」ストーリー
コロナ禍で犬や猫を飼う人が増えた一方で、保護団体に手放す相談をする人も増加中だ。「たまさんちのホゴ犬」(世界文化社)は、そんな犬や猫の受け皿となる保護活動を続けるtamtam(タムタム)さんが、活動をしながら感じていることを著したコミックエッセイ。恵まれない犬たちへの愛と優しさにあふれる同作から、一部を抜粋、要約してお届けする。
“一時あずかりボランティア”を始めた理由


4年前からSNSで自分の思いをイラストと文字で発信するようになると、多くの方から励ましの言葉をいただくようになりました。暗いイメージのある活動かもしれませんが、楽しいこともたくさんあります。そうしたことを知っていただきたくて、この本を出させていただきました。
飼いやすい子なんて存在しない
たとえば、白と茶のブチ柄のボスは、骨と皮ばかりでガリガリに痩せ細り、貧血や下痢の症状がありました。その子を引き取ったときのこと。家に帰ってご飯を出すと、ボスはじーっとお座りをしてご飯を見つめていました。

もしかして「待て」をしているのかな、と思い「よし!」と言ってみるとガツガツとあっと言う間に食べてしまいました。その姿がかわいく、「全部食べてえらいね!」と、手を軽く上げてなでようとしたところ、ボスは急に身をかがめておびえ始めました。もしかしてボスは前の飼い主から叩かれていたのかもしれない、と思いました。
ボスとは少しずつ信頼関係を築いていきましたが、ある日、私が耳掃除をしようとしたところ、血が出るほどの強さで手を噛まれてしまいました。ショックで怖くなりました。

でも、噛んだボスもソワソワして不安そう。私は「大丈夫だよ」と、ボスにしっかり伝えられていなかったのではないか、と思い直しました。
そして、またゆっくりゆっくり、「お利口さん」「えらい!」と声をかけながら、ボスの嫌がる表情や仕草を確認しながら、耳の状態を確認しました。外耳炎を起こしていました。きっと痛かったのですね。我慢して私が触るのを受け入れてくれたボスに、改めて愛おしさを強く感じました。
ほかにも、おじいさんと暮らしていた盲目のチロちゃんを、おじいさんの死後に引き取ったことで、高齢でも若くても看取ることの大変さ、責任の重さを痛感した経験、野犬を引き取り人間の身勝手さに気づいて心苦しくなった経験、保健所で犬猫を保護している職員さんの思いなどを描いています。
私は幼少期から犬や猫が大好きで、人と犬の絆を描いた映画やアニメを見ては憧れていました。でも大人になり、いざ犬と暮らしてみると、映画やアニメは美化されているのだと知りました。
噛まれたり、家のあちこちでおしっこをされたり。でも、考えてみれば、犬は人間ではなく、言葉は通じないし、でも命ある生き物なのですから当たり前。犬によって個性も違います。飼いやすい子なんて存在しません。
でも、一緒に暮らしてみるとどの子の命も尊く感じられ、どうしようもなく愛しい。保護犬たちがそんな存在であることを、この本からくみ取っていただき、犬を飼いたいと思ったときに、保護犬という選択肢があることを知っていただけたら嬉しいです。
「たまさんちのホゴ犬」より「野犬が家にやってきた」の1~11話公開中(すべての画像を見るをクリック)

たまさんちのホゴ犬(世界文化社)
tamtam

2022/10/28
1320円
144ページ
978-4418225064
SNSで話題のコミックエッセイ!
涙なしには読めない、かけがえのない命の物語、待望の書籍化!
紙版には初版限定特典が付きます。
長年にわたり、犬猫の保護活動に携わってきた著者のtamtam(タムタム)さんが、自身の経験を通した保護犬たちとの触れ合いを優しい絵と言葉で綴ります。
「保護活動のイメージを変えたい!楽しいこともたくさんあるんです」と語るように、個性あふれるホゴイヌとの心温まるストーリーが満載!
尚、本書の売上の一部は、保護犬の支援活動などを行っている団体に寄付されます。
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