近隣住民同士のトラブルによる事件が後を断たない。記憶に新しいところでは、今年9月に北海道旭川市のある夫婦が男に包丁で刺されて死傷した。原因は子どもと容疑者のもめごとだったという。

「ガチャ」という当たり外れのあるカプセルトイに由来して、最近は「隣人ガチャ」というネットスラングも登場した。トラブルメーカーが住んでいる近くに引っ越してしまったときの不運、嘆きである。

トラブルは避けたいものだが、隣人を選ぶことはできない。もちろん、引っ越しする前に調べようとする人もいるだろうが、不動産屋からの情報は限られているし、自らの足で情報収集するのも一筋縄ではいかない。結果的に、引っ越してから後悔することも少なくないだろう。

そうした人たちの悩みに応えるサービスを提供するのが、「トナリスク」という会社だ。購入予定の物件について隣人や近隣住民の事前調査を行なっている。

「われわれが購入検討者を装って隣人や近隣に聞き込みしています。直接話すので、隣人のことがよくわかるし、その人が周りにどう思われているのか調査することもできます」

こう話すのは、トナリスクの松尾大史代表。もともと大手探偵会社の「MR」で取り組んでいた一事業を切り離して、2020年4月に独立した。隣人の調査やトラブル対応に特化した事業を展開する会社は珍しいという。

コロナ禍で騒音トラブル昨年比3割増。「隣人ガチャ」で外れを引かないコツと対策法を専門家に聞く_1
トナリスクの松尾大史代表(写真提供:トナリスク)
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そこで松尾代表に、隣人トラブルを未然に防止するためのヒントや、トラブルが起きてしまった場合の対処法などを聞いた。

足繁く現地に通い、聞き込みを徹底

不動産購入は人生でも大きな買い物だから、「隣人ガチャ」でトラブルメーカーを引いてしまってもおいそれと簡単に引っ越せない。

トナリスクが手がける隣人調査とは、マンションや戸建て住宅などのマイホームの購入を検討する相談者に代わって、隣人の家族構成や仕事、近隣住民からの評判といった聞き込みをするもの。加えて、地域の雰囲気を調べたり、過去に近隣トラブルがあったかどうかを役所や警察に情報収集したりもする。

住民への聞き込み方法は意外にも大胆だ。

「隣の家を買おうとしている者です、とインターホンを鳴らして実際に話を聞きます。その際に、最初は地域の買い物事情など当たり障りのないことを尋ね、そこから本題に入っていきます。
例えば、相談者が子育て家庭であれば、『うちには小さい子どもがいて、うるさくするのが心配で……』といった質問をぶつけて、その反応で相手の世帯構成などを把握します。
また、『あの家は子どもの声に敏感だから気をつけたほうがいいよ』などとアドバイスをもらうこともできます。こうした対話で情報を固めていきます」

実は、聞き込みのコツは同社のYouTube「隣人トラブル予防チャンネル」などで公開している。

「ただし、全くの素人が知らない人に聞き込みをするのは、かなりしんどいと思います。そこでわれわれが代行するわけです。当然費用はかかりますが、相談者様には負担がかかることなく、情報を得られるのがメリットです」(松尾代表)

また、聞き込み調査は、平日や休日、朝晩など相手の都合に合わせる必要があるため、足繁く現地に通う必要がある。マイホームの購入検討者がそこまで時間や労力をかけるのは難しいため、トナリスクのサービスは重宝されているという。