岐阜・高山からの移動中、ダム湖の周辺で思ったこと

DAY.3(3日目)

10月のなかば、5泊6日の予定で車中泊の旅に出た。
目指すは、本州中心部にある日本の原風景。
岐阜県に残る、古い街並みや建造物を見に行くのだ。

初日は、山梨県・山中湖村の自宅から出発した時間が遅かったので、すぐに日が暮れてしまった(山梨県・小淵沢で車中泊)。
翌日は雨に祟られ、移動だけに費やした1日となった(岐阜県・飛騨市で車中泊)。
そして3日目、僕が運転する車中泊専用車スズキエブリイ号は、高山市を目指している。

岐阜県北部、飛騨地方に位置する高山市は“飛騨の小京都”と呼ばれ、古い商家が建ち並ぶ街並みが、たくさんの観光客を惹きつけている。

男一匹・車中泊旅は、何事も早く動けるのがいい。
朝8時に、道の駅アルプ飛騨古川にとめたエブリイの車内で目覚めた僕は、すぐに身支度を整えて移動を開始。
道中のコンビニで適当な朝食を済ませ、9時前には高山の散策を開始していた。

市街中心部・上三之町の、時代劇からそのまま飛び出してきたような街並みは圧巻だった。
これこれ、こういう街が見たかったのだ。

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高山市の中心地、上三之町
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高山市の古い街並み
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アサガオが似合う街
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街じゅう、きれいな水路が張り巡らされている

ワクワクしながら、あちらの通りこちらの通りと1時間半ほど歩き回り、すっかり満足した僕は次なる目的地を目指し、国道158号に乗って高山市をあとにした。

移動の途中で見つけた、大きな水車が目印の「荘川の里 心打亭」という蕎麦屋で昼食をとる。
注文したのは、ざる蕎麦と舞茸天ぷら。
秋の味覚、満足なり。

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旅の空で食べる蕎麦は格別
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駐車場にある水車は実際に蕎麦を挽いている

国道158号から156号へと移り北上していくと、進行方向の右側に御母衣湖(みぼろこ)という静かな湖が現れた。
地形や岸の様子から、明らかに川を堰き止めて作った人造湖だということがわかる。

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誰もいない御母衣湖

スマホで調べてみると、1961年に完成した御母衣ダムによって生まれた湖で、湖底には当時1200人・174世帯が住んでいた230戸の家が沈んでいるのだそうだ。
ダム建設のため立ち退きを要求された住民を中心に、当時は激しい反対運動も起こった曰く付きの湖らしいが、偶然にここを通りがかるまで、僕はこんな湖の存在などまるで知らなかった。
沈んだ村にあった老木を湖岸に移植したという「荘川桜」が、黄色くなりかけた葉を風にそよがせていた。

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沈んだ村から移植された桜の木

せっかくだからこの先にあるダムも見学していこうと車を進ませていると、道路左側にある神社が目に止まり急停車!
「御母衣電源神社」。

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レアな神社を発見!

なんじゃこりゃ?と思ってスマホでググってみると……。
ふむふむ、なるほどなるほど。
“電源神社”というのは、全国で北海道に一つ、本州に四つだけ存在するなかなかレアな神社で、いずれもJ-POWER(電源開発株式会社)という電力会社が造ったダム近くに建てられているのだとか。
それ以上の詳しい謂れはわからなかったが、きっとダム工事の安全や電力の安定供給を祈願して建立されたのだろう。
これもまた、日本らしい風景だ。

そして岐阜県大野郡白川村の御母衣ダムに到着。
60年以上も前、一級河川・庄川本流最上流部に建設されたこの発電専用ダムは、石積みでレトロな雰囲気だった。
造られた当初は相当な違和感があったのだろうが、すでに近辺の山や谷になじみ、自然の風景の一部と化しているようにも見える。
ダムの端にたたずみながら、自分が生まれる前の日本の、社会と人々の営みに想いを馳せた。

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石積みのダム、湖側
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湖の反対側には変電施設がある