一般的な家庭の場合、大学のみ私立に進学し、高校までは公立という進路が最も多いケースだと思います。この場合、教育費の準備で必要になるのは「大学の学費」です。
高校までは所得要件はありますが、高校の学費無償化が利用できるため、多くの家庭では固定収入から学費などを支払っても十分に賄えます。しかし、大学の学費はそれまでと比較すると多額の支出が発生するため、事前の準備が欠かせません。
「文部科学省の統計」によると、令和3年度に私立大学に入学した人は、入学金として約24.5万円、年間授業料約93万円、施設利用費18万円を払っています。入学金は初年度だけですので、仮に4年同額の授業料と施設利用費を払うとすると入学金も含めて合計約468.5万円となります。
私立の大学と言っても文系と理系では必要な学費は大きく異なり、おおよその金額としては私立文系大学の場合450万円〜500万円、私立理系大学の場合、700万円が目安となります。これらに加えて、教材費や交通費、もしくは下宿費などが必要となります。
ちなみに国立の場合は、文部科学省令による標準額で計算すると入学金と授業料を合わせて4年間で242.6万円です。
もし4年間で学費450万円が必要な場合、1年あたり100万円以上が必要になりますので、よほどの高所得者でもない限り毎年の収入から支払うことは難しいため、子どもの大学費用に向けて準備をしていく必要があります。
子どもの教育費の最重要事項が「“17歳”までに“300万円”準備」である理由
【30代で知らなきゃアウトなお金の授業】子どもがいる人にとって教育費を準備することは当たり前だが、いつまでにいくら必要かを知っている人は少ない。今回は、大切な「いつまで」に「いくら」必要かについて解説する。
30代で知らなきゃアウトなお金の授業#5
大学費用は少なくとも500万円
奨学金では払えない入学前の費用
おおよそ大学に必要な学費を知ったら、次は「いつまで」に「いくら」の資金を準備するのかを考えましょう。一つの目安は高校3年生、つまり「17歳」に「学費の3分の2程度」です。
なぜ高校3年生なのかというと、大学に支払う入学金や大学1年生の前期の授業料などは入学前の高校3年生時に支払う必要があるからです。
受験方法によって学費の支払時期は異なりますが、最も早いのは総合型選抜(旧AO入試)です。実施時期が早い学校では夏頃から始まり、秋頃には結果が出ているケースもあります。そして、合格通知と一緒に学費の支払い通知が届き、おおよそ2週間以内に入学金を支払います。
学校によっては入学金と一緒に大学1年生の前期授業料を振り込むケースもありますので、早い人だと高校3年生の秋頃には80万円近い支払いが発生することになります。
ですので、大学生になるタイミングではなく高校3年生になる頃にある程度のまとまった資金を用意しておく必要があります。学資保険で17歳満期があるのもこのためですね。
また大学受験には検定料なども必要となります。日本学生生協の「2021年度保護者に聞く新入生調査」にある「入学までにかかった費用・私立」では自宅から通う学生でも合計で180万円ほど必要となっています。この金額には検定料や学校納付金だけではなく、教科書代なども含まれています。
奨学金を利用しようと考えている人も注意が必要です。奨学金は大学生になってから最後の手続きをし、その後貸し付けが始まりますので一般的には大学1年生の5月頃から利用可能となります。つまり、高校3年生時に発生する費用は全て奨学金では払えないため、事前準備が必要となるのです。
最低でも300万円は準備が必要
もし、あなたが奨学金を利用しないでおこうと考えている場合、最低でも学費の3分の2を準備しておくことが大切です。私立文系大学の場合、450万円の3分の2は300万円、私立理系大学の場合であれば、700万円の3分の2の約470万円が目安となります。
もし450万円の学費のうち、3分の2を用意しているのであれば残りは150万円です。1年換算すると37.5万円ですので、人によっては収入から払えるかもしれません。ですが、当然ながら交通費や教材費なども必要となるので、できればもう少し準備しておきたいところです。
もしくは奨学金を利用することを前提に資金計画をしても良いと思います。奨学金と聞くとマイナスなイメージがあるかもしれませんが、金利を見れば決して高金利ではないことがわかります。
奨学金の金利は大学で借りる場合、卒業時の金利が適用される仕組みになっており、在学中は無利子で借りることができます。では2022年の3月に卒業した人に適用された金利はいくらでしょうか?
いわゆる固定金利である利率固定方式は0.369%となっており、変動金利にあたる利率見直し方式では0.04%となっています。低金利と言われる住宅ローン金利と比較しても、かなり低いことがわかります。
また奨学金は金利の上限が3%に定められているので、相対的に低金利で借り入れできる制度となっています。では、2022年3月に卒業した人が利率固定方式0.369%で300万円を返す場合、どれくらいの利息を払うことになるでしょうか。
計算すると、20年間借り入れをしても総利息額は112,398円でした。このように奨学金は金利が高いわけではなく、借り入れ元本が多いことが問題だということがわかります。
もし、奨学金を利用する場合でもできる限り借入額を少なくすることが子どものためにもなりますので、しっかりと計画的に資金を準備しておくことがますます大切だと言えます。
取材・文/井上ヨウスケ