――入学やクラス替えの時期、よくある友だちづき合いの悩みなどありますか?
たいていの学校は、生活や勉強のルールをどのクラスも同じように決めていると思いますが、ときにはちょっとした違いもあります。
例えば、給食のおかわりのルール。
「一度おかわりのジャンケンに参加した人は、別のジャンケンには参加できない」というルールのクラスもあれば、「一度おかわりのジャンケンに参加した人でも、負ければ次のジャンケンに参加できる」というルールのクラスもある。新しいクラスに集まった子たちはそれぞれ、慣れ親しんだ「クラス文化」を持ち寄ってくるんです。
さらに子どもたちは、「自分の知っていることが正しい」「知らないことは間違っている」と思い込みがちです。「自分の知っているルールこそ正しい」と主張するので、意見が合わず、友だちとの関係がギクシャクすることも……。
世の中には様々な考え方や習慣を持つ人がいます。誰かが間違っているのではなく、「お互いの意見が違う」だけですが、子どもにはまだ理解できません。このすれ違いが、友だち関係の悩みにつながることがあるのです。
だから、「みんなそれぞれ違うよね。じゃあ、このクラスではどうやっていこうか」と、話し合う場を用意して、みんなが受け入れやすい文化を作り上げていくのが、タンニン(担任)としてのボクの腕の見せ所なわけです。
教えて、ぬまっち! 新学期までに知っておきたい~子どもが友だち関係で悩んだときに親ができること
春は、進学・進級の季節。新たな環境に飛び込んでいく子どもたちは、新生活に不安を感じたり、新しい友だちとのつき合い方に悩んだりすることもあるかもしれません。 そこで、『満点ゲットシリーズせいかつプラス ちびまる子ちゃんの友だちづき合い』(集英社刊)の監修者で、子どもの自主性を引き出すユニークな教育で注目を集める、東京学芸大学附属世田谷小学校教諭の通称“ぬまっち”こと沼田晶弘先生に、子どもが抱える人間関係の悩みについてお話を伺いました。
子どもが抱えがちな人間関係の悩みを上手に解決するヒントがここに

子どもは友だちの意見よりも「自分が正しい」と思い込みがち
子ども同士の小さなもめごとは「成長の糧」
――新学期はすれ違いが起こりやすい時期なんですね。新しいクラスで友だちと上手くやっていけるかどうか、心配な親御さんもいると思うのですが。
学校はいろんな人に出会って「ぶつかり稽古」をするところです。友だちと関わっていくなかで、子どもたちは狭い世界を少しずつ広げていきます。自分には当たり前なことも、友だちにとっては違うのだと気づくからです。
「目玉焼きには醤油が一番合う」という人もいれば「絶対にソースだ」という人もいますよね。人は人と交わることで、世の中にはいろんな人がいるとわかります。子どもも、友だちとの関係がなければ“家の常識”しか知らないことになってしまう。友だちとつき合い、ときにもめることは、子どもが成長している証なんです。
だから「友だちとの小さなもめごとは成長の糧だ」と理解しておくと、いざというとき親御さんも慌てないかもしれません。

『ちびまる子ちゃんの友だちづき合い』(集英社刊)より 上手な伝え方 ©さくらプロダクション
“みんな”と仲良くなろうとしなくて大丈夫
――ときにケンカをするのも一つの経験なんですね。もし、なかなか仲良くなれない相手がいたら、どうすればいいのでしょうか?
大人は子どもに、「みんなと仲良くしてね」「人にやさしくしようね」と言いがちです。でも、大人だって気の合わない人はいるもので、そういう相手とは距離をとり、当たりさわりなくつき合っているはずです。
しかし、子どもには、合わない人をうまくかわすスキルがまだありません。だから、正面からぶつかってしまいます。するとまた、「仲良くね」「やさしくね」と言われてしまう。大人にもできないことを、子どもに望むのはかわいそうです。
ボクはよく「仲良くなくていいから、仲悪くなるな」と子どもたちに言います。
誰とでも仲良くするのは難しいし、苦手な人がいるのも当たり前。気が合わない相手とは無理に仲良くなろうとせず、いい距離感を見つけることが大切です。
どうすれば「イライラコップ」をあふれさせずにすむ?
――合わない相手とうまく距離が取れないうちは、もめることもありそうです。衝突を避けるためにできることはありますか?
まずは「自分の気持ち」を大切にしてほしいと思います。自分の気持ちが安定していなければ、人と仲良くすることも、人にやさしくすることもできません。残業でいつもより遅く帰ってきて慌てて夕食の支度をしているとき、もし子どもが飲み物をこぼそうものなら、キーっとなってしまいませんか。気持ちが落ち着いていないからです。
怒りっぽい人って、相手に求めすぎなんです。「こうしてくれるだろう」と期待して、その通りにならないから怒る。親も同じで、よその子なら微笑ましく思えることも、我が子にはやたら怒ってしまうのは、自分の子どもに期待しているからです。相手に期待しすぎるあまり、相手の気持ちを大切にできなくなってしまいます。
ボクはよく子どもたちに「イライラコップ」の話をします。
友だちとケンカしたり、先生に怒られたりして心がモヤモヤするときは、自分の中にある「イライラの気持ちがたまったコップ」を思い浮かべます。コップがあふれてしまうと、友だちにやつあたりしてしまうかもしれないから、あふれる前にたまったイライラを外に出すなど手立てが必要です。
どうすればイライラコップをあふれさせずにすむか、その解決策を親子で一緒に考えてみるのもいいかもしれませんね。

『ちびまる子ちゃんの友だちづき合い』(集英社刊)より イライラコップ
我慢強く見守って、子どもの「自分で立ち上がる力」を育てる
――友だち関係の悩みについて子どもから相談されたとき、親はどうすればいいでしょうか?
もし、お子さんがプリプリ怒って、もしくは、しくしく泣きながら家に帰ってきたら、まずは心配し過ぎずにやさしく話を聞いてあげてください。
「何が嫌だったの?」「どうして悲しかったの?」と尋ね、お子さんの気持ちに耳を傾け、「そうか、こういう気持ちだったのね」と、頷きながら共感してあげてください。
親がじっくり聞いてくれることで、子どもは次第に心を落ち着かせていきます。冷静になったころ、「自分にも悪いところがあったかも」なんてポロッとこぼすこともありますよ。
何かアドバイスをしてあげたいと思っても、お子さんの心の内を全部聞いてからにしましょう。問題を早く解決してあげたいでしょうが、あまり口を出しすぎると、子ども自身の「問題を解決する力」を育てるチャンスを失うかもしれません。
赤ちゃんの頃、ようやく歩き出した子はよく転びましたよね。何度も転びながら、手をついたり、つかまったりして、うまい転び方を学びます。逆に言えば幼いうちに転び方を学んでおかないと、大きくなって転んだとき、大ケガしかねない。
友だちとの関係も同様の積み重ねです。小さなもめごとを一つひとつ乗り越えて、子どもは友だちといい関係を築く方法を学びます。
子どもはちゃんと「乗り越えていく力」を持っています
――最後に、進学・進級を迎える子の親御さんへメッセージをお願いします。
ぜひ、「○○ちゃんと別れて残念ね」ではなく、「新しい友だちと出会えてよかったね」と伝えてあげてください。お子さんが新生活を明るく前向きに楽しめるように、親御さん自身にもそういう気持ちでいてほしいと思います。
「今のままがいい」「変わりたくない」と思っていても、変わってしまえば乗り越えていくだけのたくましさを、子どもはちゃんと持っています。それに子どもは「友だちになろう!」の一言であっという間に仲良くなりますよ。親友になるのもすぐです。そのうち「〇〇ちゃんと友だちになった」と報告してくれるはずですから、楽しみにしていてください。
人間関係がうまくいくための、ぬまっち流メソッドは、『満点ゲットシリーズせいかつプラス ちびまる子ちゃんの友だちづき合い』(キャラクター原作:さくらももこ/監修:沼田晶弘)にたくさん紹介されています。
お子さんが、主人公のちびまる子ちゃんと一緒に悩み考えることで、友だちに自分の気持ちを上手に伝える方法や、困ったときの解決法を学ぶことができる一冊です。
ちびまる子ちゃんの友だちづき合い
さくら ももこ
2022年3月4日発売
935円(税込) ©さくらプロダクション
B6判/160ページ
978-4-08-314076-1
累計550万部突破の満点ゲットシリーズから、待望の新刊が登場!
「友だちできるかな…」
「上手に気持ちを伝えたい!」
「友だちとうまくいかないときは?」
そんななやみを解決!
ちびまる子ちゃんとなかまたちのまんがを楽しみながら人間関係で大切なことを、自然と学べます。
現代の子どもの必読書です!
【「監修ぬまっちからのメッセージ」より】
自分の気持ちを大切にする人は、相手の気持ちも大切にできる。
自分の気持ちと相手の気持ち、どちらも大切にできれば、きみの毎日はもっと楽しくなるはずだよ!

2022年3月25日発売
1,540円(税込)
四六判/216ページ
978-4-08-788073-1
親のマインドが変われば子どもも変わる!
親にとっては「反抗期」でも、子どもは「自己主張」しているだけ!?
子どもの自主性を引き出すカリスマ教師“ぬまっち”が教える「反抗期」の過ごし方
「反抗期」は、子どもが自分を主張し始める子育てのチャンス!
子どもが自己主張をできるようになった「成長」ととらえ、親が受け入れることで、わが子を伸ばし、一生続く親子の信頼関係を築くこともできるのです。
東京学芸大学附属世田谷小学校の教諭であり、子どもの自主性を引き出す授業で定評のある著者が、全学齢期に応用可能な「親側のマインドセット」を説き、実際に保護者から寄せられた相談など、豊富な事例とともに掲載。
親のタイプや子どものタイプによって異なるさまざまなケースを取り上げ、網羅する一冊。
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