まずはこちらの画像を見ていただきたい。このソックスがどこで売っているか、おわかりになるだろうか。

パリコレデザイナー起用で大ヒット。ファミマのラインソックスに新色登場!
“コンビニ衣料品”と聞くとどんなものを想像するだろうか。間に合わせの下着、シャツ、靴下程度のもの、と考える人も少なくないはずだ。しかし、ファミリーマートが展開するアパレルブランド「コンビニエンスウェア」はそんな常識を覆した。
パリコレデザイナーがコンビニ衣料品シーンに参画

おそらく多くの人がすぐに「ファミリーマート!」と答えることができるのではないか。それはラインにファミリーマートのコーポレートカラーをあしらっているから。
このインパクト抜群のラインソックス(コンビニホワイト)は、昨年3月から全国展開しているファミリーマートのオリジナルアパレルブランド「コンビニエンスウェア」の1アイテムだ。2020年にパリコレデビューも果たしたブランド「ファセッタズム(FACETASM)」のデザイナー落合宏理氏を迎え、その洗練されたデザイン性と品質の高さから瞬く間に話題となったので、知っている人も多いのでは。
ラインソックスに限らず、アウターTシャツ、今治タオル等いずれも高品質で、とてもコンビニの衣料品とは思えない。

記者もアウターTシャツを着てみた。シンプルなデザインながら、990円(税抜き)とは思えない着心地の良さをしっかりと感じられる
特に、冒頭のラインソックスはSNSで大バズり。一時は入手困難となるほどの反響で、現在までファミリーマートにおけるソックス全体の累計販売枚数は600万足を突破。「コンビニエンスウェア」はブランドスタートとともに大きな花火を打ち上げたかたちだ。
しかし、なぜコンビニなのに本腰を入れてアパレル商品を売り出すことになったのか。商品本部の須貝健彦さんはこう話す。
「もともとコンビニの衣料品は、雨の日の替えの靴下や、出張や急な泊まりで着替える下着といったニーズが中心でした。しかし、1.5兆円のインナー市場において、コンビニは低いシェアしか取れていない、という裏付けもあったので、緊急需要だけではない日常使いができる衣料品を開発しようと考えました」(須貝さん、以下同)
「いい素材、いい技術、いいデザイン。」のコンセプトで衣料品に新機軸
お弁当やスイーツといった食品はどこもしのぎを削ってなかなか差別化が難しいのが現在のコンビニ業界。そこでファミリーマートは衣料品にこそ新たな需要を取りに行ける、と確信していたということだろうか。
「いえ、ラインソックスのようなデザイン性のある衣料品をコンビニで売る、というのはかなりチャレンジングなことでした」

商品本部 日用品・雑誌部の須貝健彦さん。もちろんTシャツは「コンビニエンスウェア」を着用
2021年3月の第1弾ではラインソックス、アウターTシャツ、今治タオル等を展開したが、その後もカラーバリエーションを随時増やしながら、今年4月19日にはエコリュック、5月31日にはヘッドバンド、6月28日にはレインポンチョが登場し、アイテムの総数はすでに75種を超える。

6月21日に発売された新色のラインソックス(蛍光グリーン、蛍光オレンジ)。「コンビニエンスウェア」のファミマソックスは売上好調のため、今年3月から専用の販売什器を展開し、売り場を拡大
「コンビニエンスウェア」のポイントは、前述したように世界で活躍するデザイナー、落合宏理氏を起用したところ。ファミリーマートからのオファーに、落合氏は即快諾だったという。
「落合さんは2016年にリオ五輪閉会式で衣装担当をされており、その経験からファッションに新しい価値と可能性を広げたいと考えるようになったそうです。そこに弊社が声をかけさせていただいたところ、今までにない規模のお客様に、新しいライフスタイルを提案できるのでは、と考えていただけたようです」
現在でも週1、2回ほど「コンビニエンスウェア」の商品について打ち合わせを繰り返す日々。「商品開発において飽くなき探求心で一切の妥協を許さない。例えば、新色の蛍光グリーンや今治タオルでも、何度も何度も試作品を作って色やラインの幅をミリ単位で修正したりと、見え方を含めてすべてにこだわっている」と須貝さん。

ラインソックス(コンビニホワイト)の足裏には英語とカタカナでブランド名を表記したデザイン。かわいさとブランド名を強くアピールできるという落合氏のアイディア

パック売りが基本となるが、このパッケージのスタイリッシュさも含め、2021年度グッドデザイン賞を受賞した。SDGsの観点から、パックは小物入れとして再利用できるようにもなっている ※右写真はパッケージを再利用した使用例
ファミマソックス目当てで来店する女性も
「コンビニエンスウェア」にはひとつの目標がある。
「おにぎりやお弁当を購入する感覚で、『コンビニで衣料品を買う文化』を根づかせたいと思っています。実際に、カラーソックスは女性のお客様を中心にご好評いただいており、何かのついでではなく、衣料品を買うためにご来店をいただくことも増えており、徐々にその文化が浸透してきている実感はあります」
ファミリーマートは他にも、コスメブランド「sopo(ソポ)」を展開しており、こちらも女性に人気。“ついで”や“緊急時”以外で衣料品や化粧品をファミリーマートで購入する人は間違いなく増えている。
現在、業界2位。1位への糸口は、意外にもこんなところにあるかもしれない。
写真/榊智朗
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