「カサンドラ症候群」とは、パートナーや家族が、発達障害の一つであるアスペルガー症候群(ASD)であるために、コミュニケーションや情緒的な相互関係を築くことが難しいため、不安や抑うつなどの心身の不調をきたしてしまう状態のことを指す。特に、アスペルガー症候群の夫とそれを支える妻というパートナー関係性で起こるケースが多いと言われている。
現在はまだ病名としては認定されておらず、「状態」として認知されている症状だが、漫画『夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話』がSNSで話題を呼ぶなど、少しずつ世間の理解と周知が進んでいる。
夫がアスペルガー症候群で、妻がカサンドラ症候群に陥り、離婚してしまうまでの過程を描いた本作品はSNSで話題を集めた漫画がきっかけとなっている。書籍化した経緯を担当編集者に聞いた。
【漫画】アスペルガー症候群のパートナーを持つ人が発症しやすいカサンドラ症候群とは? どんどん孤立して笑えなくなる苦しみ
「カサンドラ症候群」という言葉を知っているだろうか? 発達障害特性のあるパートナーと関係を築くことの難しさを感じている人が抱える、身体的・精神的症状だ。実際に「カサンドラ」状態になった妻(アゴ山さん)が苦悩し、夫と離婚するまでを赤裸々に描いた話題のコミックエッセイ『夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話』を紹介する。
カサンドラ症候群にまつわる書籍が生まれた理由
――なぜ「カサンドラ症候群」をテーマにした漫画を書籍化しようと思ったのでしょう?
もともと漫画家の鳥頭(とりあたま)ゆばさんの作品を弊社から出版していたので、鳥頭さんの活動は追っていたのです。ある日、SNSで鳥頭さんがカサンドラ症候群にまつわる発信をされているのを見て、その症状のことを知り興味を持ちました。
――元々はSNSから生まれた作品なのですね。
鳥頭さん自身がもともと、夫婦の話や子育てのコミックエッセイを描いていたこともあり、モラハラの彼氏や夫婦間の心情の描写がすごく上手い方だったので、カサンドラ症候群になって離婚を経験したアゴ山さん(企画・原案者)のプロットとハマったのだと思います。
――初めてSNSでこの漫画を読んだとき、どう感じましたか?
物語の序盤に妻が夫に「具合が悪くて(家族の)ご飯を作れないから、今日の夜はお弁当を買ってきて」と頼むシーンがあります。なのに、夫は子供の分は買わずに自分の分だけを買ってきてしまう。
違和感は感じますが、これだけでは夫がアスペルガーであるとは気づけません。でも、同じようなことが重なっていくなかで、妻のほうがどんどん病んでいってしまうんです。その様子がうまく描かれているんです。
ブログもSNSも読者からの反響がすごい上に、とにかく読者の熱量が高くて。それを見て書籍化するべきだなと感じました。
――熱量が高いというのは、具体的にどんな反応?
カサンドラ症候群という症状は、人にわかってもらえず孤立しやすいという特性があるので、それを発信している人に対して、自分も同じ境遇であると共感するコメントが多かったですね。
「アスペルガー症候群」や「発達障害」に関する注目が集まっているので、それに付随してカサンドラ症候群にも注目が集まっているのだと思います。
次ページからは、プロローグから8話までを特別に無料で公開する

取材・文/於ありさ
企画・原案/アゴ山
漫画/鳥頭ゆば
『夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話』(KADOKAWA)
企画・原案/アゴ山
漫画/鳥頭ゆば

2023年6月7日
¥1,320
160ページ
978-4046823533
長い結婚生活の中、夫が心の底から笑ったことはあったのだろうか
<カサンドラ症候群とは…>
発達障害特性のあるパートナーと安定的な関係を築くことの困難を感じている人々が抱える重いストレスを原因とする、身体的・精神的症状のこと。
本作は実際に「カサンドラ」状態になった妻アゴ山さんが苦悩し、夫と離婚するまでを赤裸々に描いたコミックエッセイ。可愛らしい絵柄で作画を担当するのは、鳥頭ゆば(『顔で選んだダンナはモラハラの塊でした』KADOKAWA等)さん。
カサンドラ症候群専門カウンセラー真行結子先生との書籍限定特別対談「カサンドラ症候群への対処法と夫婦の幸せのあり方」を収録!
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