今回マッサージを教えてくれたのは、黄玲悧(こう・れいり)さん。日本生まれ、日本育ちの台湾人で(実家は東京の老舗台湾料理店!)、2004年に語学とマッサージの勉強のため故郷・台湾に移住。現在は台湾・台北でアロマセラピー、整体、台湾式リフレなどを提供するサロン「TeTeTherapy」のオーナーセラピストであり、プロのマッサージ師に技術を教える講師としても活躍されています。

レンゲひとつで便秘も解消! 台湾のゴッドハンド・セラピストから教わる、簡単セルフマッサージ
台湾を訪れる楽しみのひとつに「マッサージ」を挙げる人も多いだろう。ヘッドスパから足つぼまで、全身くまなくフルコースで堪能できる。そこで今回はセラピスト歴20年でプロへの講師も務める黄玲悧(こう・れいり)さんに、リモートワークで疲れた身体をいたわるセルフマッサージを教えてもらった。
台湾の達人 この人に訊いてみよう! #2
疲れが意外に溜まっている耳たぶをほぐす

黄玲悧さん。台湾式足ツボマッサージの始祖である呉若石神父の直弟子・謝武夫さんに弟子入りし、二つの有名店を経た後に、セラピストの夫と「TeTeTherapy」を開業。同店を日本からリピーター客が訪れるほどの人気店に成長させた(提供:ご本人より)
整体師に加え、台湾式足ツボのカリスマ謝武夫さん経営のサロン、そして台湾のアロマセラピーのパイオニア「カンジューンスパ」での勤務経験を持つ黄さん。自らを「健康オタク」「骨格マニア」と呼び、ご自宅には趣味で収集したという骨格見本が置かれ、お子さんから「怖いから家には置かないで」と言われるほどなのだそう。
「台湾といえば足ツボマッサージ!」というイメージも強いけれど、台湾の足ツボマッサージは、キリスト教の普及のために台湾を訪れたスイス人の宣教師・呉若石神父が広めた「反射療法」と呼ばれる民間療法。足裏などにある反射区を刺激することで、それに対応する身体の不調をケアできるという考えに基づくものだ。
足ツボは自分では押しにくいので、「素人には耳ツボがおすすめ」という。
「耳には反射区が集中していて、片耳におよそ100以上もあると言われています。東洋医学の考え方でも、耳には全身の臓器に対応するツボがたくさんあり、耳を見れば身体の状態がわかるとも言われています。耳をもむメリットは大きいんですよ」
面積も小さく、そこまで力を入れなくてもマッサージできる耳ツボは、立ったままでも簡単にできるので、確かにお手軽ですね。
「リモートワークは目と耳を酷使するので、普段の生活より負担がかかりやすいです。とくに耳は酷使している自覚をなかなかもちにくいので、いっそう注意する必要があります。疲れが溜まってくると耳が固くなったり、少し曲げただけで痛みを感じたりする方もいます。ひどくなると、耳が聞こえにくくなってしまうことも。理想的なのは、“柔らかくて、温かい耳”です」
今回は、とても簡単にできる“耳たぶほぐし”を教えてもらいました。

1.両手の人差し指と中指をV字に開き、間に耳を挟み、そのまま上下に動かします。耳の周辺を手の温度で温めてほぐすイメージです

2.耳たぶをつまみ、もみほぐす。痛かったり硬くなったりしている部分は身体の不調が反射しているので、優しく念入りにもみほぐしましょう

3.耳たぶをつまみ、耳を大きく広げるように、下・横・上へと優しく引っ張る
私もトータルで5分間程度試してみました。次第に目の疲れがすっきりしてきて、マッサージ後には視界がクリアになったような実感がありました。
中国古来の民間療法に「カッサ(刮痧)」というものがあります。専用のカッサプレートなどを使い、滞った老廃物を流し、気血(きけつ)の流れをスムーズにしたい時に行われます。台湾では、体調管理のため、日常的に家族同士がカッサでマッサージし合ったりすることも。
今回は、専用のプレートが手元になくても、家庭にある陶器のレンゲでできるマッサージを教わりました。

温めたレンゲを使えば、心地よさ倍増
【準備】
1.レンゲは、陶器製で、表面が滑らかなものを使用しましょう。欠けたものや、ざらざらしているものは適しません。
2.マッサージを行う場所に、オイルやクリームを薄く、広めに塗ります。黄さんのサロンでは有機のホホバオイルを使っています。ちなみに、台湾人の間ではなぜかメンソレータムが好んで使われているそうです。
3.可能であれば、コップに白湯を入れ、レンゲを入れて温めると良いでしょう。レンゲを取り出した後にそのまま白湯を飲めば、マッサージ前の水分補給にもなり、一挙両得です。

1.頭の後ろ側(頭と首の境目)を、カッサを使い、首から頭に向けて、下から上へとマッサージする。目の疲れのケアに

2.首から肩にかけて、下方向にマッサージ

3.最後は耳下から鎖骨にかけて、下方向にリンパを流して終了です
教えてもらって以来、我が家でもすっかり習慣化したこちらのマッサージ。夫にも子どもにも「頭がスッキリする!」と大好評です。
台湾ではリビングでテレビを見ながらカッサを行う人も多く、中には硬貨で行うような強者もいらっしゃるのだそう。それはなかなかハードルが高くても、陶器のレンゲなら気軽に生活に取り入れられそうですね。
一日中デスクワークで座りっぱなしだと、下半身がむくんだり、冷え性、便秘などに悩まされたりする人も多いのでは? そんな時におすすめのカッサマッサージを教えてもらいました。
「まずは、お腹周りに広めにオイルやクリームを塗ってから始めましょう。洋服の上からでもできるマッサージです。立ったままでもできますが、お尻を持ち上げることで、普段は下がりがちな腸を重力から解放し、お腹がゆるまった状態にしてあげるとマッサージしやすくなります」(黄さん)

1.おへそを中心に、反時計回りに円を描くようにカッサを滑らせるようにマッサージ

2.おへそより下の下腹部を、下から上にかけてマッサージ

3.おへそより上(みぞおちの下のあたりまで)は、外側から中心に向けて寄せるようにマッサージ。身体の左右の中心にはリンパが通っているので、全身のリンパの流れをスムーズにするようなイメージで行うのがポイント
あくまで個人の感想ですが、何日間か続けると、「ウエストにくびれができた!」「お通じが良くなった」といううれしい効果がありました。
セルフマッサージで身体をケアすることは、病気の予防になるとして、台湾ではとてもポピュラーな習慣です。ぜひ試してみてくださいね。
(写真撮影/近藤弥生子)
※マッサージを行う上での注意点
・傷や疾患、炎症があったり、触ると違和感があったりする箇所は避けてください。
・疾患により医師の治療を受けられている方、感染症のある方、妊娠中・食後一時間以内・発熱がある・体調が悪い時には行わないでください。
・お子様でもしていただけますが、その場合は力を入れず、できる限り優しく、なでるように行ってください。
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