昨年厚生労働省が発表した2021年度の男性の育児取得率は13.7%。前年の12.65%からわずかに増加しているが、女性の85.1%に比べてまだまだ大きな差があるのが現状だ。(※1)
2022年10月から「産後パパ育休(出生時育児休業)」がスタート。
子が1歳(最長2歳)までの育児休業制度とは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能となり、分割して2回に分けて取得できることもあり、男性の育児休業取得のハードルが下がってきている。
このように制度は改善、緩和しているが、男性の育休の実態についてどういう状況なのか、調べてみた。
コネヒト株式会社が2022年の8月に行った、自社のアプリ「ママリ」ユーザーにインターネット調査した結果、育休を取得した男性の1日の家事・育児時間を聞いたところ、「3時間以下」と回答した人が44.5%にものぼり、「とるだけ育休」であることが明らかに。
2023年4月、企業の男性の育児休業取得率の公表が義務化。パパの“とるだけ育休”を防ぐにはどうしたらいい?
昨年の10月から「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設され、男性が育休を取得しやすくなった一方で、家庭内におけるパパの育休の実態についてまではまだあまり注目されていない。男性の育休について、家庭や企業はどう向き合っていけばいいのか、コネヒト株式会社代表取締役・高橋恭文氏に伺った。
パパが育休を取得しても
1日の家事や育児時間は3時間以下が4割強!

出典:コネヒト
さらに夫の育休中の家事・育児時間が1日あたり3時間以下だった場合、3人に1人の妻がその育休を「不満」と回答しており、育休満足度自体が下がる結果に。
加えて、「今後、夫に育休を取得して欲しいですか?」という質問に対しては16.3%の妻が「育休を取得して欲しくない」と回答している。
「育児や家事に関わる時間が少なく夫婦の満足度が低い育休 を“とるだけ育休”と名付けました。
アンケートでは夫の育児や家事の時間が少ないことに妻からの不満が挙がっていますが、時間という量的な問題だけではなく夫婦間の育休について事前に話し合っていないことが大きな要因ではないかと思っています」と同社代表取締役、高橋恭文さん。
2023年4月からは、従業員が1,000人を超える企業は男性の育児休業取得率などを公表することが義務化される。これにより、今後さらに取得率が注目され、勤務先から取得を奨励される形での、“とらされ育休”も増えていくのではないかと危惧しているという。
※1参考:厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」)
育休取得前に夫婦がお互い納得する取り方を考える
「そもそも子どもの誕生というのは、人生にとって、とても喜ばしいイベントですよね。
また第一子の場合は夫婦二人から家族三人になるタイミングです。
だからこそ家族としてどうしていきたいか、お互いの価値観をすり合わせしておいたほうがいいと考えています。
出産までに、二人でどうやって育児に取り組むのか? 産後をどう乗り切るのか? じっくり話し合うことが必要だと思います。そうすることでいつ育休をとるべきか、育休中はどう過ごせばよいのかが初めて見えてくると思います。」(高橋さん)
育休取得の考え方は、それぞれの夫婦によって異なるものであり、自分たちの納得のいくベストな形で取ることが重要とのこと。
同社では「とるだけ育休」を防ぎ、産前から夫婦で育休について話し合いながら学べる「育休ガイドブック」を作成。
二人でどんな家族にしたいか、育児をどう取り組むかなど、漫画やワークシートで学べる内容になっている。
パパ1人で赤ちゃんとお留守番をして、おむつ替えやミルク・離乳食をあげるなど、どんなことを育休中にするかについて具体的にまとめられているのが特徴だ。
自治体や企業と取り組んでいるワークショップの教材として使われている。

「これまでは男性育休というと、産後の一番大変な時期だけ仕事を休んで家事育児を手伝い、サポートするという捉え方が多かったように思います。
また、企業が男性に育休を奨励することによって、家族としてどうするかより、とりあえず取らないといけない、休まないといけないみたいことが先にきてしまうと、“とるだけ育休”のような結果を招いてしまいます。
でも、子どもが誕生するということは、育休中の話だけではなく、今後子どもと向き合う 時間を夫婦で一緒に作っていかないといけません。
このタイミングこそ、家族の未来像を描いたり、家事育児分担について話し合ったりするのにはとてもいい機会です。
育休はふたりの共通の目的をスタートさせることができる絶好のタイミングだとも思うので、今後どんな家族になりたいのかを考えるきっかけにしてほしいという気持ちで作りました。
企業側にとっては、従業員に対する仕事と家庭の両立支援として捉えて活用いただいていますし、自治体にとっては住民と向き合い、さまざまな支援制度や取り組みに関する訴求する機会として評価いただいています」(高橋さん)
育休は社会の共通のテーマとして捉える
育休取得を決めたら、とにかくその期間は家族との時間を楽しんでほしいと高橋さんはいう。
「少子化の現代、子どもが誕生すること自体とても尊いことですし、育休取得は本当に貴重な経験となるでしょう。なので、ポジティブに捉えてほしいですね。急に子どもの体調が悪くなったり、家事が思うようにできなかったりしますが、それもまた家族と向き合う時間として受け止めてほしいです。」(高橋さん)
また、育休は取得する当事者以外の周りの人、企業の捉え方も変えていく必要性を高橋さんは語る。
人手が減る、他の従業員へ業務負担が増えるなど、まだまだマイナスに捉えられていることも少なくない。
「弊社では、企業向けに男性の育休を学ぶワークショップを提供しています。
300人ぐらいの規模の工場があって、年間1~3人育休を取得している企業ですが、はじめはシフトが減るから、と育休に消極的な人もいたのが、組織として育休を考える機会 を持つことで、仕事も家族を大事することを尊重しあうようになり、結果的に生産性が上がったという例があります。
なので、育休取得しないから関係ないと線引きして関心を持たないのではなく、一緒に働く人との共通のテーマであることを認識してほしいと思います。
育休の問題は社会共通の問題だと意識するために、育休を学ぶ機会や時間を作っていくべきではないかと考えています」(高橋さん)
政府は、「異次元の少子化対策」に本腰を入れようとしている。
今後、ますます男性の育休取得について注目されるが、当事者だけでなく社会全体のテーマとして取り組むことが必要になってくるだろう。

取材・文/百田なつき
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