昭和時代の被体罰経験を、誇らしげに披露したがる中年男性

2023年2月末、千葉県のある高校の60歳の教諭が逮捕された。
容疑はバレー部員に対する暴行である。
全国大会での優勝経験もある名門バレー部で起きた事件で、逮捕された教諭は30年以上も部の顧問を務める人物だった。

体育館の防犯カメラには、顧問がミスをした一人の部員の服を引きはがしたうえ、髪の毛を鷲づかみにして倒し、顔面にボールを何度も投げつけたりする様が映っていたという。
客観的に言えば、閉鎖的な人間関係における絶対的な立場の差を背景にした、許しがたい暴力行為にほかならない。

しかし続報によると、身柄を預かった千葉地検は裁判所に勾留を請求せず、顧問は処分保留のまま、逮捕翌々日には釈放されたという。
今後は、在宅で捜査が続けられることになったらしい。

体罰教師の逮捕報道を受け、「昔はこんなの普通だった」となぜか自慢げに語るおっさんと、体罰が絶滅しない深いワケ_1
バレー部顧問逮捕を報じるネットニュース
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検察が犯行の態様に悪質性がないと判断したのか、あるいは被害届が取り下げられたのか?
警察や検察の内部に、“まあ、よくある学校内での体罰にすぎないから”という考えがあるのではないかな?
もし電車内で酔っ払いのおっさんが、見ず知らずの女性に言いがかりをつけて同様の行為を働いたとしても、果たして数日の拘留で釈放されるものだろうか?

と、いろんな疑問や疑念が湧いてくるが、僕はそうした社会事件や法律に詳しいわけでもないし、そもそもこの事件自体について論じたいわけではないので、これ以上は深追いしないことにしよう。

それより気になるのは、“体罰教師が逮捕された”という報道を受けたときの、世間の反応の方なのだ。
多くの人は、「令和の時代にもまだこんな教師がいるのか」とか「時代錯誤も甚だしい」といった類の感想を口にする。
一方で、ある一定以上の年齢の男性に多いのが、「昭和時代はこんな体罰、日常茶飯事だったよ」とか、「自分はもっとひどい体罰を受けたもんだ」という趣旨の感想をいう人。
どうもその口調は、やや誇らしげだったりすることが多いように思えるのだ。

かく言う僕自身もこのニュースに接した際、自分が中学生時代に部活の顧問や先輩から受けた厳しい体罰のことを思い出し、誰かにぜひ聞いてもらいたいという気持ちが心の奥の方から湧き上がってきたことを告白しなければならない。
そして恥ずかしながら、それがちょっと“誇り”に近い気持ちであったことも間違いないのである。

体罰教師の逮捕報道を受け、「昔はこんなの普通だった」となぜか自慢げに語るおっさんと、体罰が絶滅しない深いワケ_2