夏は熱中症警戒アラートなどで、熱中症の危険性について広く知らせていましたが、冬は「低体温症」に注意が必要です。
厚生労働省の人口動態統計を見ても、2020年の熱中症での死亡者数1528人に対して、低体温症による凍死(※)は1054人とこちらも1000人を超えています。
他の年でも2019年は1086人、2018年は1278人、2017年は1371人とここ毎年1000人以上の人が亡くなっています。
「低体温症」や「凍死」と聞くと、雪山での遭難などを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、実は屋内でも多く発生しています。
まず、知識として押さえておいてほしいのが「冷え性」と「低体温症」の違いです。
「冷え性」はただ手足や下半身が冷えて指先や足先が冷たさを感じることで、体温は下がりませんが、「低体温症」とは体の深部温度が35度以下に下がってしまう状態をいいます。
32~35度で軽症、28~32度で中等症、20~28度は重症となります。
低体温症の主な症状は、激しい震え、筋肉の硬直、意識障害など。症状が進み、重症となると呼吸や心臓に影響し、死に至る場合があります。
※自然の過度の低温への曝露
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)
毎年1000人以上の死者数は熱中症レベル。まさかの屋内での凍死を招く“低体温症”を防ぐには
今季の冬はすでに何度か日本列島に強烈な寒波がやってきていて、厳しい寒さが体に堪える。この時期、気をつけないといけないのが、低体温症からのまさかの凍死だ。夏の熱中症と同様に、冬の低体温症も命の危険に至ることがある。低体温症の症状、対策についてウチカラクリニック代表の森勇磨医師に解説いただいた。
毎年、1000人以上亡くなっている低体温症
高齢者に多い低体温症
低体温の最大のリスクは、自分でなかなか気がつきにくい点です。
例えば手を洗うときでも、最初は水が冷たいと感じますが、次第に感覚が慣れてくるということは経験があるかと思います。
冷たさは暑さより慣れやすいため、寒い屋外での作業などは低体温になりやすい環境といえるのです。
特に高齢者は身体能力や、認知症などによって認知機能が衰えていたりするため、感覚が鈍くなってしまい屋内でも低体温になりやすい傾向があります。
また、高齢者が住んでいることの多い昔ながらの家屋の構造によって、外気の温度が家の中に入りやすい、寒い部屋や場所があるなども屋内で高齢者が低体温になりやすい原因の一つです。
低体温になると筋肉が硬直するため、血液や栄養を体に十分に行き渡らせることができなくなるので、血管障害や糖尿病など、持病の多い高齢者は症状が悪化しやすく、体にさまざまな不調がでてしまうこともあります。
さらに高齢者は、ほかの世代に比べて運動量が少ないということも原因に挙げられます。体を動かすことによって、血行がよくなり、体温は上がりますが、健康問題を抱える高齢者にとって運動する機会は少ないので、低体温に注意が必要なのです。

ただし低体温症は、低い気温、体が濡れた状態のままでいる、風が強いなどの条件でなりやすいので、酔っぱらって外で寝てしまうといった状態では若い人でも低体温になり、場合によっては凍死に至ることもあるので、気をつけましょう。
室温が20℃以下にならないようにする
低体温の予防で、大切なのが環境づくりです。屋内で低体温にならないようにするためには、室温が20℃以下にならないように気を配りましょう。
特に高齢者は、若い世代に比べて筋肉量が少ないため、熱となるエネルギーを十分生み出せないので、室内でもしっかりと防寒対策を。
暖房器具はもちろん、首元や足首が冷えないように、ネックウォーマーや暑手の靴下を活用したり、汗をかいても冷えないように吸湿速乾性のあるインナーを身につけたりするなど工夫しましょう。寝るときも湯たんぽなどを活用して、温かくして布団に入るように。
祖父母や高齢の親と離れて住んでいる場合は、家の構造によって寒くなる場所のチェックや暖房器具の設置に気を配るようにしてください。

食事ももちろん大切です。食べることで体の熱になるので、体を温める食材やメニューを積極的に摂るようにしましょう。
よくアルコール(お酒)で体を温める人がいます。確かにお酒を飲んだ後は一時的に血管が拡張し体温が上がりますが、同時に熱を放出しやすくするので、逆に体を冷えやすくすることに。
飲んだ後、体が温かいからといって薄着で寝落ちしたり、路上で寝たりしてしまうと低体温になるので、体が冷えないように防寒対策をしましょう。
また、運動して体を動かせば、体温が上がり、血行もよくなります。
屋内でもできるスクワットやストレッチなどがおすすめです。
これからまだまだ寒い時期が続くので、屋内でもしっかり防寒対策して低体温にならないように気をつけて過ごしましょう。
取材/百田なつき
『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74』
(ダイヤモンド社)
著者 森 勇磨

2021年9月29日
1,650円(税込)
328ページ
4478113459
人生100年時代を生き抜く「最強の基礎教養」。血液・尿検査の絶対見逃してはいけないポイントから、エビデンスのあるがんの予防・早期発見法、健康寿命を1日でも延ばす食事術と生活習慣、太く長く生きるためのメンタルケアの方法、そして、大病になったときの再発予防・リハビリまで、正しい健康知識の超集大成!
関連記事

「体温が上がると風邪を引かない」はウソ? 免疫力の都市伝説7選


どうする、インフルエンザと新型コロナの同時流行。医師が教える今からできる「4つの備え」

コロナ後遺症も老化も原因は「炎症」にあった! 名医が教える「炎症ゼロ」5つの習慣

「風邪をひいたらどうする?」世界の民間療法を調べたら、なんかすごかった

新着記事
「人相が悪くて誰も寄ってこない」…顔面コンプレックスを抱える32歳男性にとろサーモン久保田が助言「自分が人に笑顔を見せないから、無愛想な人生が続く」
とろサーモン久保田の立ち呑み人生相談#7
【漫画】「38歳の男の年収ってほぼ“結果”だもんなぁ」酔った勢いで登録したマッチングアプリでつい見栄を張ってしまうアラフォー独身の憂鬱
#4 やっぱ偶然の出会いに期待してる場合じゃない
〈小泉今日子と中森明菜の“アイドル伝説”〉キョンキョンのお尻のぬくもりに触れて今日まで仕事を続けてこられた! 「おたく」の生みの親・中森明夫が語る
推す力 人生をかけたアイドル論 #3

流行語の発信源だったCMは、なぜその地位を失ったのか? 「新語・流行語大賞」にCMからのノミネートは今年もゼロ…「キャッチコピーよりも商品名」の今
CMが生んだ最後の流行語大賞は2013年の「今でしょ」